女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第49話 過去の

 色々調べた。
 色々調べた結果、数百年前どころじゃないという事が判明した。


 数千年前だ。
 途中で元号が変わっているらしく詳しい年数は分からないとの事だが、貨幣が統一されていないどころの騒ぎじゃない事が分かった。


 俺とセレンさんが死の森で見つけた遺跡に。
 水晶の中に閉じ込められてた剣があって。


 その剣が女の子で。


 その女の子が目覚まさないから夢の中に入ってみたら。
 その夢の中はずっと昔の事でした。


 という訳なんだが。


 ……いやまぁ確かに、セレンさんが知らないくらい昔の事かもと思った記憶はある。数千年前のものだとしても納得はいく……かな?


 問題はこの夢の中からどうやって出るかだが、それにはまず夢の中にいるであろう白い少女を探すのが一番だろうという事になったのだ。


 で、その白い少女なのだが……一向に現れない。


 ちなみに金は現地(過去)のものを用意してなんとかミラの武器を買う事が出来た。流石に魔具という訳にはいかなく、ただのナイフだが。
 どうやって用意したかと言えば、単純に現代(未来)から持ってきた硬貨を売っただけだ。金貨もあったので、かねとしての価値はなくともきんとしては売れる。


 相場とか全然分からないから安く買いたたかれている可能性も……いや、恐らく安く買われているのだろうが気にしない事にした。
 変なところで揉めて時間を喰いたくなかったのだ。


 とにかく。
 白い少女が野菜を買っていくという八百屋に張り付くこと二時間程度。


 ようやくその少女が現れた。


 ……服装は違うが、間違いない。
 ちなみに茶色っぽい服を着ている。


「あの子だよね?」
「あぁ。あれだけ目立つ白髪はそういないだろ」


 ……そういえば。
 刀についた精霊とか言ってた気がするんだが、『お使い』で野菜を買うのか? 親がいるという事だろうか。或いはそれに準ずる保護者。……そもそも刀って飯食うの?


「捕獲?」
「そう、捕獲だ」


 八百屋から離れ、ほんの少しだけ人気がない場所に入ったところで俺たちは動いた。


 俺が前でミラが後ろ。
 挟み込むようにして、近付いて行く。


「やぁお嬢ちゃん。飴いるかい?」
「……知らないおじさんに物を貰っちゃいけませんって両親に言われてるので。では」


 わーしっかりしてる子だ。
 おじさん……『知らないおじさんに物を貰っちゃいけません』っていう台詞を復唱しただけだよな? 俺がおじさんに見えた訳じゃないよな?


 白い女の子は(今は茶色の服だが)、俺の誘いをにべもなく断ってすたすたと歩いていこうとする。


 ミラえもん助けて。
 僕じゃ駄目だったよ。


「……ボク達は君のお父さんとお母さんの知り合いなんだ。家まで案内してくれないかな」


 と、ミラ。
 なんで知り合い設定にしたんだ。
 この子のお父さんとお母さんに会っても事態が好転するとは思えないのだが。


「……別に構わないですけど、わたしのお母さんもお父さんも物凄く強いですから、何か泥棒とかしようとしても出来ませんからね」


 しないしない。
 それにしても年齢の割にしっかりしている子だ。


 とりあえず、白い少女とのコンタクトは取る事が出来た。
 夢が覚める気配はないし、この子自身にもその自覚は無さそうだが。


 とりあえず成り行きに身を任せよう。
 そのうち何か思いつくだろう。頑張れ明日の俺。















「お父さんお母さん、あの人たち知ってる?」


 と一軒家の玄関で紹介された俺たち。
 現れた両親は。


 白髪巨乳のお姉さんと、黒髪黒目のお兄さんだった。


 驚きどころが二つあってどちらからリアクションすれば良いのか分からないからとりあえず順番に行こうか。


 お母さんの方は、魔神に似ている・・・・・・・似すぎている・・・・・・。瓜二つだ。だが、違う人だ。
 姉妹か何かかと思うくらいにそっくりである。


 そしてお父さんの方。


 そちらは――


「あんた、もしかして日本人か?」


 と、あちらから話しかけてきた。


「…………よっこらしょーいち」
「何故今そのネタを。だが、やっぱり日本人なんだな。うわ、マジかよ。この世界でまさか俺以外の日本人がいるなんて思いもしなかった。いやぁ、凄い偶然ってあるもんなんだな。お前もあれか? トラックに轢かれたクチか?」
「いや俺はそうじゃなくて……ちょっと待ってくれ。色々聞きたい事がありすぎて整理できない。ちょっと時間をくれ」
「あぁ幾らでも待つとも。上がってけ上がってけ。なーに心配するなセレナ。こいつらは悪い奴らじゃないよ。父さんが保証する」


 あれよあれよといううちに家の中まで通された。
 ミラはいきなり考え込んだ俺に困惑してるし、お父ちゃんの方はフレンドリーだがお母ちゃんの方も何やら考え込んでいる。


 情報が一気に入ってきていて何から考えれば良いか、何から話せば良いかが分からない。


 何がどうなってんだ一体。


 頭の中でひっかかるワードが幾つかある。


 数千年前。
 日本人。
 魔神にそっくり。


 ――先代の女神。


 この世界。


 …………もしかして。


 俺は白髪のお母さんの方を向いて言った。


「あなた、元女神だったりします?」


 ぴり、と空気が張り詰めた。
 まずい――と思った時には、自然と聖剣が影から飛び出してきていた。


「……!! お前、その剣どこで手に入れた?」


 お父ちゃんの方は――俺と同じ日本人の方は、明らかに臨戦態勢に入っていた。
 武器は持っていない。
 無手だ。


 ……だが、戦うとなれば手強い。
 そんな雰囲気を感じる。


 ここから先、一言一句でも取り違えれば即戦闘に繋がる。
 そう感じた。


「……セレンという女神から貰った」
「セレン……!?」


 案の定、反応したのはお母さんの方だった。


「それは本当なのですか?」
「本当です。天地神明に誓って。女神に、誓って」
「……おさむさん。この人は多分、敵じゃないです。大丈夫です」


 ふ、と緊張感が緩んだ。


「……事情を聞かせて貰おうか。あんた、名前は?」
「緑崎 優斗だ。18歳」


 とりあえず切り抜けたみたいだ。
 ここから頭の痛くなるような問答が始まるんだろうけどな。















「俺は武智たけち おさむだ。今年で22歳になる。こっちの世界に来てから四年目。お前と……優斗と同じ歳ん時だ。
 トラックに轢かれかけてるガキを助けて自分が死んだ。だが、この人が……女神だったメロネさんが助けてくれて、この世界に来た。色々あって世界を救ったりしたが、もう二年くらい前の話だ」
「私はメロネと言います。あなたの言う通り、元女神です。今は後輩のセレンが役目を継いでくれてますが。色々あってこの人と、この地で結婚して暮らしてます」


 色々あっての部分が知りたいような、別にどうでも良いような。
 多分今は関係ない話だから聞かないが。


「……俺は緑崎 優斗です。世界を救う為に、セレンさんと一緒にこの世界に来ました」
「ボクはその付き添いみたいなもの。事情は一応、一通り聞いてる。あなた達の感性に合わせて言えば、『現地人』という事になると思う」


 俺たちの自己紹介を聞いて、修さんはうぅむと唸った。


「さっき優斗が持ってたのって聖剣だよな? 見た目は普通の剣っぽいが、俺が見間違えるはずもない」
「はい」
「……ちょっと待っててくれ」


 というと、修さんはどこかへ行ってしまった。
 ……その間にメロネさんに聞きたい事を聞くか。


「メロネさん。あなたってお姉さんか妹さんいません? そっくりな」
「……いますよ。双子の妹がいます。双子、と言っても私たちに親はいないのですが。……えぇと、同じタイミングで存在を始めた、と言えば良いのでしょうか」
「……なるほど」


 そっくりな訳だ。
 双子だったとは。


 だが……
 姉がこの世界で暮らしている(いた?)のに、何故あいつはこの世界を破滅に導こうとしているんだ?


「仲悪かったりとかします?」
「妹をご存知なんですか?」
「……えぇ、まぁ」


 知っているというか。
 一方的に知られてるというか。


 一応俺もあいつの姿は見たことがあるから、知っているで正しいか。


「……妹は不思議な子でした。時折、何か考え込んでいるようでいて、それを隠しているような――」
「待たせたな」


 と、このタイミングで修さんが戻ってきた。
 案の定、というかやはりというか、聖剣を手に持って。


「優斗が知っている事、全て話してくれないか。世界に――二つの世界を合わせても一本しかないはずの聖剣を、何故お前が持っているのか。何故俺たちの娘を通して俺たちに会いに来たのか」
「……良いですけど、ちょっと長くなりますよ」
「構わない。話してくれ」
「分かりました」


 俺は語った。
 セレンさんとの出会いから、今に至るまでの経緯を。


 ――彼らの娘が、刀となって水晶に封印されていた、というところまで。

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