女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第48話 夢見心地

 ……俺はなんて事をしでかしてしまったのだろうか。
 セレンさんに向ける顔がない。
 顔向け出来ない。


「ボクだってユウトのお嫁さんなんだから、後ろめたい事なんて無いのに」


 妙につやつやした様子のミラがほくほくしながら言ってくる。
 それにしても、だ。


「いつからだ?」
「なにが?」
「いつから……その、俺の事を好きになってんだ?」
「さぁ。気が付いたら」


 いつの間にか。
 と、ミラは言った。


「ユウトはボクの事、好き?」
「……卑怯な質問だな」
「じゃあ、いつから?」
「さぁな」


 気が付いたら。
 いや、ミラがそうなるように仕向けたのかもしれないし、俺が自然とそうなっていたのかは分からない。その想いの多さは関係なく、存在していたかいなかったかで言えばそれは存在していたと断言する他ないのだ。


 ちなみに二人とも既に服は着ている。
 ピロートークと言うよりは、愚痴みたいな感じだ。


「ちなみにセレンには言ってあったりする」
「なんだと!?」
「今日辺りユウトを襲うかもって」
「それでセレンさんはなんて?」
「それは秘密」


 ぐぬぅ。
 大事なのはそこなのだが。


「自分で聞けば?」
「もっともだ」
「ユウトが思ってるよりセレンっておおらかだよ」
「…………」


 結局助け船を出されてるじゃないか。
 情けないなぁ俺。


 さて。
 そんな事より、だ。
 切り替えてこーぜ。


 白い少女。
 この子はいつになったら目を覚ますのだろうか。


 ベッドに放置してかれこれ数時間は経っているのに。


「あれだけ声を出しても起きないとなると、寝てるんじゃなくて気を失っているんだと思う」
「……そうだな」


 あれだけ声を出してもとか言うな。
 描写していない分部が丸裸にされかねない。


 と口に出したら泥沼な気がするので言いはしないが。


「そもそも俺がおぶって移動している時点で寝てるだけなら起きるだろうからな。状況も特殊だし、気を失っているって事で問題はないだろう。……敢えて言うなら気を失っているという事が分かっても何の問題解決にならないのが問題だな」
「そうだね」


 ……どうしようか。
 手詰まりだ。


「……もう一回、する?」
「黙れ。お前はアホなのか。極度のアホなのか」
「ちょっと物足りなかったかなって」
「嘘だろ! 傷つくわ! 10円玉で愛車に傷つけられた時くらい傷ついてるわ!」
「冗談」


 嘘なのかよ。
 そもそも俺も愛車とか持ってないけど。
 特に愛してないママチャリくらいしかないぜ。


 それも既に処分されてるかもだけど。


「とにかくこの話題からは離れよう。危険すぎる」
「ボクは楽しいんだけど」
「俺は冷や冷やするんだよ」


 色んな意味で。


「思いっきり叩いたりしたら起きないかな」
「それで起きられてもあまりに虚しいんだが」


 それにしても起きない。
 自分の事について話されてる時って妙に感覚が鋭くなったりしないか? 自意識過剰の延長線なのだろうけど。


「王子様のキスで起きたりして」
「その手の話はこの世界にもあるのか……」


 だが万が一そうだとしても俺がやったところで言う話だ。
 ……いや俺があの水晶っぽいやつから解放したから俺がやるのか?


 そもそもキスで目覚めるかどうかも分からないし、目が覚めたら知らない奴にキスされていたなんて普通は警察沙汰だよな。
 俺が女の子側だったら男がイケメンじゃない限りぶん殴るぜ。


 イケメンに限るってやつだ。
 便利な言葉だよな。


「ボクはユウトもなかなかだと思うけど」
「やめろ。そういうのは普通に照れる」


 そして話が脱線する。
 今すべきは白い少女の話だ。


 どうやって目覚めてもらうか。


「……何も思いつかんな。やっぱり叩くか」
「小さな女の子に好きな男の人が暴力を振るう場面をボクは見ないといけないのか」
「…………」


 だからやめろって。
 普通に照れるし話も逸れる。


 ボケた俺も悪いが。


 というかボケた俺が悪いが。


「何かヒントでもあればなぁ……」


 最後の手段としてレオルに起こしてもらうという手があるが。
 いやでもこの子、夢を見ているとは限らないんだよな。


 ……夢の中に入り込むとか、俺にも出来たらなぁ。


「ユウトなら案外やってみたら出来たりして」
「やり方とか全然分かんないしなぁ」


 試しに女の子の額に触れてみたりして、夢の中に入る妄想をしてみたりして。


 
 ぱっと目の前の風景が切り替わった。


 急に草原に出ていた。


「は?」


 は?
 何が起きたんだ一体。


 ……もしかして夢の中に入ったのか?
 マジで?


 成功しちゃったの?
 えー……


「なんでボクも巻き込まれてるんだろう」
「なんでだろう」


 なんでだろう。
 不思議だなぁ。
 不思議な事がいっぱいありすぎて些細な事のようにも思える。


「当事者のボクからしたらこの上ない大きな出来事なんだけど……」
「そういう意味じゃ俺も当事者だ。……さて、どうしようか」
「それをボクに言われても」
「俺に言われても分からんもの」


 さて、どうしようか。



















「街だな」
「街だね」


 俺とミラは、とりあえず歩く事にした。
 なんとなく東側へ。
 そして奇跡的に街へ辿り着く事が出来た。


 ……が、夢の中なのにこんな鮮明に街をイメージできるものなのだろうか。
 これは本当に夢なのか?


 ちなみに知らない街だ。
 少なくとも俺は知らない。


 ミラは……


「ボクも知らない。初めて来た街だ」


 八方塞がりだな。


 道行く人々に夢とか白い少女とかの単語を織り交ぜつつ尋ねていったら、白い少女に心当たりがあるという八百屋のおっさんに行き着いた。


「ちょうど今日じゃないかな。お使いでここの野菜を買ってってくれるんだ。……で、お前さんらは何者なんだ?」
「通りすがりの冒険者です」
「通りすがりの冒険者その2です」


 ミラが乗っかってきた。
 それなら最初からその1ですって言ったのに。


「怪しさしかねぇんだが、お前らに教えちまって大丈夫だったんかなぁ」
「大丈夫な要素しかないですよおやっさん。ありがとうございます」


 ミラを連れてすたこらさっさと退散した。
 怪しまれる前に逃げる、だ。


 既に怪しまれてたが。
 取返しがつかなくなる前には何とかなったはずだ。


「逃げた時点で取返しはつかなくなってる気もするけど」
「良いんだどうせ夢の中だから。気にすんな」


 適当この上ない発言である。
 誰あろう俺がこんな事を言ってしまうのだから世も末だ。
 ここが世なのかも分かってないが。


「逃げたは良いんだけど、どうするの?」
「そりゃ当然、あの白い女の子が本当に現れたら捕獲して事情を聞くんだよ。事情聴取だ」
「誘拐?」
「捕獲だ」


 誘拐とか物騒な言葉使うなよ。
 物騒過ぎるだろ。


 なに、麻袋に詰めてちょっと別の場所へ運ぶだけだ。


「それはやっぱり誘拐だと思う」
「捕獲なんだって」


 どっちでも良かった。
 どっちでも犯罪だもの。


 街の脇道の脇に隠れて様子を伺う様子は犯罪者そのものだが、どうせ夢の中だし気にしたら負けだ。手段を選んでいる場合じゃない。
 あの女の子を叩き起こして俺たちも夢から脱出する。
 ついでに事情も聞く。


 完璧すぎる作戦だ。


「完璧すぎて穴だらけだね」
「うるさいわ」


 そもそもあの女の子が現れないと話にならない。
 出てくるなら出てくるで早くしてくれと願うばかりだ。


 出てこないなら……いや出てきてくれないと困る。
 困りまくる。


「ところでユウト」
「なんだよ」
「ボク、武器持ってないんだけど」
「……なんで?」
「あんな事した後だし、普通持ってないよね」
「……それもそうだ」
「外出時に武器を持ってないの、ボク的には落ち着かないんだよね」
「そうかよ……俺は影に幾らか金入れてるから、武器くらい買えるだろ。この夢の中で使ったら現実世界でも減ってるかどうかとか気になるが、とりあえず買おうぜ」
「ありがとう」


 と、言う訳で。
 武器を買いに来たのだが……




「兄ちゃん。こんな硬貨見た事ないぜ。贋金……って訳じゃあないんだろうが、この国の金に換えてからまた来てくれ」


 との事だった。
 ……金って万国共通になったとセレンさんから聞いたのだが。


 夢の中だから勝手が違うのだろうか。


 ……うーむ。


「……ユウト。ボク、分かったかも」
「何がだ?」
「この世界……夢の中でお金が使えない理由」
「ほう」
「多分この夢、物凄く昔の夢なんだ。何か違和感があると思ってたけど、お金が違うなら間違いない」


 マジか。


「マジ。貨幣が共通化する前の事だから、少なくとも数百年以上前の事」


 夢の中でタイムスリップしたって事か?
 詰め込み過ぎだろう、色々と。

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