女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第47話 積極性

「は?」


 いや、触れた瞬間に弾き飛ばされるとか、逆に何か吸い寄せられてその刀の記憶とか見るとかそういうのは警戒してたんだけど、まさか刀が女の子になるとは思わないじゃないか。


 思わず間抜けな声を発してしまった俺を責めないで欲しい。誰だってそうなるよ。


「え、なんですかこれ。何のイベントですか」
「……この刀に宿る精霊だと思います。刀そのものと言っても良いかもしれません」


 女の子、と言ったが、流石にそれだけじゃあ描写不足か。
 白い長い髪の、見た目小学生くらいの少女だ。
 白いワンピースを着ている。


 意識を失っているのか寝ているのか、その目は開く事なく俺の腕にぐったりともたれかかっている。


 ……色味はどことなく、というかその白さはあの魔神と思い起こさせるようなものだが、この子からそう言った雰囲気は感じられない。


 偶然の一致なのか必然なのか。
 セレンさんがこの子――この刀の存在を知らなかった事と何か関係があるのか。


 色々訳分からない事ばかりだが、何から処理していったら良いのだろう。


「……とにかく、その子を連れて一旦ここを出ましょう。私も全てを知っている訳じゃないですから。吸血鬼の王や竜王……パルメさんに聞けば何かわかるかもしれません」















「あたしは知らないな。死の森にあったのか? うーん……初耳だなぁ」


 パルメは知らないようだった。
 知ってても覚えてないかもしれないと言い、また後程連絡すると。


 ところが、まだ竜王の城に滞在している(居心地が良いのだろうか)吸血鬼の王に聞いてみると、意外な答えが返ってきた。


「細かいところまでは分からんが、においから察するにそいつは人間だぞ。余の鼻は誤魔化せん」


 との事だった。
 セレンさんの見解では刀に宿る精霊……つまり非人間だったのだが、ここに来て覆されたのだ。


「だが、この子は確かに直前まで刀だったんだ。人間が刀に化けてたって事か?」
「いや……微かに魔法の痕跡を感じるな。元々は人間で今は刀になっているのかもしれん」


 元々人間で今は刀。
 字面だけ聞くと悲惨な人生を送ってそうだな。……実際どうかは分からないが。
 それにしても起きないな、この子。


 最初はお姫様抱っこで運んでいたのだが、余りにも起きないのでおんぶに移行したのだが、やはり起きない。


「余が起こしてやろうか」
「いや、いい。お前絶対何か乱暴な方法を取ろうとしてるだろ」
「なに、夢の中に入って少し驚かせてやるだけだ」
「……夢の中に入る事なんて出来るのか?」
「余に出来ん事はない」


 嘘くさいが、本当にこいつならやりかねない。


「無理やり起こしていいものなのかも分からないんだから、起きるまで待つよ」
「そうか。……ところでユウトよ」
「なんだ」
「そいつは刀には戻らんのか?」
「とりあえず俺が触れてからは戻ってないな」
「ふむ……」
「何か思い当たる事でもあるのか?」
「いや。何か思い出せそうで思い出せん。こういう時は大抵最後まで思い出せんのだ。もう良いぞ」
「そうか……。何か思い出したら言ってくれ」
「うむ」


 パルメもレオルも知らなかったか。
 ……あと知ってそうなのは誰がいるかな。


 長生きしてて物知りそうな奴。


 ……ラリアを呼ぶのは流石にまずいか。
 何か呼ぶタイミングを悉く逃している気がするが。
 今、ここには王もいるし呼んでキレられたら面倒だ。


 いい加減背負ってるのも疲れたし、部屋のベッドにでも寝かせとくか。いや、体力的にはどうという事はないのだが、少女を背負っているという事自体が精神的に疲れる。
 周りの目とかのせいで。


 部屋に戻り、ベッドの上に少女を横たえる。


 ……どことなく顔立ちもあの魔神に似ている気がするな。
 違う点と言えば、胸が無いという事くらいか。
 ミラよりも無い。


 まぁ年齢の差なのだろうが。
 10歳くらいの少女に胸で負けてたらそれは貧じゃなくて無だ。




「絵面は凄まじい犯罪臭がするね」
「うるせー」


 何故ミラを引き合いに出したかというと、こいつがこっそりと扉から入ってきたのが気配で感じられたからだ。


 何故こっそり入る。


「後ろからわっとやって驚かそうと思って」
「小学生かお前は」
「それはともかく、なんでボクにはこの子の事聞きに来ないの」
「お前が知ってるとは思えなかったからな。……知ってるのか?」
「いや、知らない」
「…………」
「少しはボクの事も構ってよね。旦那様」
「吸血鬼の王に対する誤魔化し程度の要素だろう、それは」
「ちなみにボクが二番目という事になっているらしい」
「そうかよ……」


 どうでも良い情報だった。


「一番目の座を狙いつつ二番目に甘んじている」
「それを俺の前で言ってお前は何も感じないのか?」
「という設定になっている」
「設定の話かよ」
「嘘の嘘は真かも」
「嘘つきが嘘ついたらそれはただの嘘だ」
「でも、なんか最近セレンとうまく行ってないよね」
「…………」


 急に核心をついてくるなこいつは。
 うまく行ってないと言うか、聞くべき事を俺が聞けてなくて、セレンさんは言うべき事を言えてないというだけの話なのだが。


 二人で腹の探り合いをしているのは、正直言って気分はあまりよくない。


 これもそれもどれもあの魔神のせいだと思うと腹が立つが。


「その子も、その魔神の関係者だったりして」
「……どうだろうな。無関係ではないと思うが」


 無関係と言うには。
 あまりに似すぎている。


 関係あると断ずるには。
 共通点が薄い気もする。


 つまりは何も分からない。


「起きる気配はないの?」
「ないな。揺すっても叩いても起きない」
「えぇ……叩いたの?」
「軽く頬をぺちぺちとやっただけだ」
「幼気ない少女を叩いたの?」
「やめろ。誤解を招く言い方をするな」
「事実だよね」
「事実だが」
「ボクは嘘をついた事はないんだ」
「それは嘘つきの台詞だ」


 と、何を思ったかミラが俺の膝の上にちょこんと座った。
 何を思ったんだよ。


「ボクは嘘をついた事はないんだ」
「…………」
「セレンとユウトの二人。夜。こっそり」
「それ以上は良くないぜ」
「ちょくちょく」
「黙ろうか」


 こいつを自由に喋らせておくと年齢指定がかかりそうで怖い。
 視界にはミラの青い髪しか入ってないから、今どんな表情してるかも分からないんだよな。……いや、ミラの事だから無表情か。


「ボクは嘘をついた事はないんだ」
「三回目ともなるとツッコミもおざなりになるぞ」
「二回目の時点で無言だったくせに」
「心の中でツッコミをしたんだよ。それが読めるようになるまではお前は一番にはなれない」
「本当にそう?」


 つい、とミラが顔をこちらに向けた。
 もう少しで顎先にヒットするところだった。危ない。


 ……心なしかちょっとミラの頬が赤くなっている気がする。
 なんか既視感のある雰囲気だ。


「ボクは嘘をついた事はないんだ」
「故障したパソコンかお前は」


 パソコンを知らないであろうミラに通じないツッコミをする。
 それくらいちょっと今テンパってる。
 そういえばテンパるって麻雀の用語から来てるらしいな。麻雀やった事ないから詳しくは知らないけど。国土無双だかなんとかって言うかっこいい単語がある事は知ってる。


「例えば」
「……例えば?」
「一番を狙ってる、とか」


 と、ミラが体勢を変える。
 俺と向き合うように。
 俺の膝の上で。


「やめろ。俺には心に決めた人がいるんだ」
「もう少し押せば落とせるとボクは踏んでるんだけど」
「どどどどうだろう」


 舌がもつれてしまった。
 古典的な噛み方をしてしまった。


「ボクが今何考えてるか分かる?」
「知るかよ。俺が知りたいくらいだ」
「近くに知らない幼女が寝てる中でもありかなって」
「いや、なしだろう。落ち着け。ステイハウス」
「でも、起きそうにないんでしょ?」
「確かにそうだけど……」
「卑怯な事言っていい?」
「良くない」


 わざわざ確認をとるな。
 俺が許可するとでも思ったのか。


「これで押し切れなかったらユウトの事は諦めようと思う」


 言って。
 ミラは、俺の頭を抱えて唇に唇を押しつけてきた。


 うわ、舌までうわわわわわ。


 うわー!

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