女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第45話 前触れなんて

「こんにちは。或いはこんばんはかな。おはようでも良い。いや、最初に初めましてかな。私は君の事を知っているし、君も私の事を知っているだろうけど、最初に初めましては礼儀だからね」


 白い女だった。
 真っ白な女だ。


 髪も白、纏っている服も白、背景も白。


 ここは。
 セレンさんと最初に会った場所に、似ている。


「似ているんじゃなくてそれそのものだ。同じ空間だよ。管轄が私かセレンかの違いだけが異なる点だ。異なると言っても言葉の通り一つの点くらいしか変わりはないんだけれどね。私がこうなったように、彼女にもこうなる可能性はあった。否。まだあると言った方がより正しく伝わるのかな」


 雰囲気がセレンさんに似ている。
 似ているが、違う。


 こいつの言ったように、恐らくたった一つの点が、違う。


「お前が魔神か」


「ご名答。まぁ、この状況でここまでヒントを与えれば誰でもその答えに辿り着くと思うけどね。思うけれど、残念ながら君しか回答者がいないから仕方なくご名答、だ。
 さて、緑崎 優斗くん。もう一つのクエスチョンだ。お人好しの人が大好きな緑崎 優斗くん。なんで私が今このタイミングで、君にこうして話しかけたか分かるかい?」


「エルフ達をけしかけたのもお前か」
「そうだよ。でも違うとも言える。竜王――いや、この場合は元竜王、かな。パルメちゃんも言っていただろう?
 遅かれ早かれ起きていた戦争だ。遅くても早くても、私はエルフ族を勝たせるつもりでいたんだけどね」


 やれやれ、と魔神は肩を竦めた。
 それにしても、こいつもおっぱいでかいな。神ってのはみんなそうなのだろうか。


「……あのね緑崎 優斗くん。私は今、君の考えている事のおおよそは読めてしまうんだけど、君は敵の胸にも関心を示すのかい? 節操が無いなぁ。だから今みたいに三人も妻を娶る事になってしまうんだ」


「自意識過剰な奴だな。お前なんてセレンさんの足元にも及ばないぜ」


「それは重畳。万が一にも君が私側に寝返るなんて事はあってはならないからね。君は常に私の敵であるべきだし、セレンの味方でいてあげるべきだ。
 そんな事言わなくても君はセレンの傍にいるんだろうけどね。一応、釘をさす意味でも言っておいてあげよう。
 心がけろよ少年。心して聞けよ少年。私は魔神で、あの世界を滅ぼした上で占領しようとしている。占有しようとしている。
 元々あの世界はセレンの先輩が治めていた世界なんだがね。つまりは私の同僚に当たる訳だが、神にも色々事情がある。
 私はあの世界を消さなければならないし、セレンはそれを守らなければならない。止めなければならない。私たちは私たち同士で敵対しているのでなく、目的が相反するから敵になっているんだ」


「よく分からないな。お前はどうしたいんだ」


 こいつの言っている事は要領を得ない。
 何か大事な情報を隠しているように感じる。


「その通り。まだ君には知られたくない――知らせる事の出来ない、知っても意味のない情報がある。だがやはりそれを今君に言うのは無意味だ。意味が無い。
 だからこうして釘を刺しに来たのさ。貴重なリソースを割いて、私自身があの世界に顕現するのを遅らせてまでこうして釘を刺しに来たんだ。
 最も、来たと言っても私が君を呼んだというのが正しい表現なのだが。まぁそれは良いだろう。どうでも良い事だし、どっちでも大差ない。
 君は君の意志でここに来ることは出来ないが、私はいつでも君をここに呼ぶ事が出来る。
 そういう意味じゃあ超えられない差はあるかもしれないが、それも大した差じゃないんだよ」


「もう一度聞くぞ。お前はどうしたいんだ」


「セレンと君が死んだら私の勝ちだ。吸血鬼の王や元竜王は強力だが、君たちの厄介さに比べたらどうって事ない。障害にはならない。
 逆に君たちは私を殺せば勝ちとなる。簡単な事だろう。殺すか殺されるか、だ。やらねばやられる。
 私たちの目的は、相手を殺す事でしか成り立たない。話し合いでは決して解決しない。セレンはそれでも話し合おうとするかもしれないが、私はそれに応じない。決してね。
 死ぬまで止まらない。殺しても止まらない。その先に私の目的がある。君たちは私を殺したらそれで終わりだ」


 何を言いたいんだ、こいつは。


 何を俺に伝えようとしている。


「何も。君に伝えるべき事なんて何もない。知っておくべきは、識っておくべきは私という敵の存在だ。私は敵で、セレンは味方。君の嫁、かい? 運命というものは数奇なものだね。
 いや、こっちの話だ。そうなる事がまるで最初から定められていたようだ。幾ら私たちでも、個人個人の運命まで司っていない。
 斎藤君は運良く・・・手頃に人殺しが出来そうな村に転移して、運悪く・・・君に見つかってしまったけれど、それは私が何かをしたからそうなったという訳ではないんだよ。
 ちょっと唆して狂わせる事は出来るがね。
 君も狂わされただろう。セレンに。異世界で大量の人間を殺すことなく、日本で良い嫁に巡り合い、良い子どもに恵まれ、可愛い孫に囲まれながら死ぬ。
 そういう人生だってあったはずなんだよ。
 私とセレンのやっている事は同じ事だ。鏡合わせだがね。だから決して嚙み合わない。私はこれからも唆して君たちを邪魔する。
 君たちは私の妨害をどうにかして乗り越えるだろうが、私を殺すまでそれは終わらない。
 そういう世界に君は来たんだ。唆されて、狂わされて。君の意志で来たんだ」


「じゃあお前は俺を唆しに来たのか? 唆すために呼んだのか?」


「いいや。ごめんごめん。違うんだよ。実は、斎藤くんから伝言を預かっていてね。斎藤くん。知っているだろう? 君が握りつぶした、握って殺した彼だよ。
 『オレ達は紛れもなく同類だ』だってさ。私はこれについて何もコメントしないよ。伝えるべき事は伝えた。君に伝えたい事というのは、斎藤くんの伝言だったという訳だ。
 じゃあね。またどこかで会うかもしれないが、その時はさようならだ。その時までさようなら」

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