女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第38話 竜王

 死の森、死の海と大した障害もなく障害を感じずに通り抜けてきた俺たちだったが、流石にこればかりは簡単にいかないだろう。


 高度三万メートル。
 竜の海を囲むようにそびえたつ山。


 ……遠くからでも壁として見えていたが、近くまでくるとまた『壁』とは違った印象を受ける。


 ――領域、とでも言えば良いのだろうか。


 明確にここで区切られている。
 結界と言っても良いかもしれない。


 拒絶するように、そびえたっていた。


 というか、山じゃないよこれ。
 だってほぼ垂直に立っている岩だもん。
 崖って言うんだよこういうのは。


「これ、登れるんですか?」
「無理でしょうね」


 セレンさんがさらりと言い、きょろきょろと何かを探すように辺りを見渡し始める。


「何探してるの?」


 というミラの問いに対し、セレンさんは


「どこかに抜け道があるはずなんです。確かこの辺りだったはずなんですが……」
「あそこ」


 ミラが指さす方向を見てみると、二人。
 なんか男が立ってる。


 ……よく見ると、その二人が立っている辺りだけ岩の色がちょっと違うな。


 頭に『右近』と『左近』と書いてある鉢巻をそれぞれ巻いている。右近さんと左近さんなのだろうか。あの人たちに事情を説明すれば抜け道を使わせて貰えるのか?


「説得は難しいと思います。彼らは竜人しか通さないので。そう竜王から言われているんです」
「へぇ」


 じゃあどうするんだろう。
 倒していくのか?
 別にそれでも構わないけど、あの人たちはきっと竜人だ。エルランスの父親ほど強くはなくとも、普通の人間よりは確実に強いはず。


 それも竜人専用の抜け道を守っている人たちなら強くて当たり前だ。


「ボクが倒してくる」


 と、今まであんまり役に立ててない事をしきりに気にしていたミラが言い出し、止める前に飛び出していってしまった。


「……倒すって方向で良かったんですか?」
「……本当は話し合いが良いんですけど、多分説得は出来なかったので結果オーライに……なるんじゃないかと思います」


 微妙な言い方だなー。
 まぁ良いや。


 恐らくそれなりに強いであろう竜人たちは、しかしミラに瞬殺され(殺してはいない)気を失った。やっぱこういう早業はこいつに敵わないんだよな。
 俺には無理だ。


 もっと派手になってしまう。


 倒れた竜人をずるずる引きずって二人まとめているミラの元へと俺たちが行くと、


「なんでこの人たちはわざわざ隠してある抜け道の前に立ってたんだろう」


 と、至極当然な疑問をミラが口にしていた。
 ……確かにそうだよな。


 よく見ないと分からない程度の岩の色の違い。
 明らかにカモフラージュしてあるのに、わざわざその前に立っちゃうのはどうかと思う。


 これがもしかしたら囮で本当の抜け道は別の場所にあるという可能性もないではないが、セレンさんがここと言ったのならここなのだろう。


 女神時代(?)に確認済みなはずだ。


「どうやってあけるんですか?」
「あけるというか、これただの幻影ですよ」


 と、セレンさんが少し色の違う岩に向かって手を突き出すと、腕が岩をすり抜けた。
 ホログラフィックみたいな感じなのか。近代的だなあおい。
 どこにもそれらしき機械は見当たらないから、魔法でやってるんだろうけど。


 岩を抜ければ、そこは洞窟だった。
 ……なんかえらい岩肌とか剥き出しだけど、舗装とかしないのかな。


「これ、初代竜王が手で掘ったあとなんですよ。恐れ多いからという理由で舗装されてないんです」
「へー」
「へー」


 俺とミラのへーが重なる。
 マリアさんは特に反応しなかったが、知っていたのだろうか。


 というか岩を手で掘るってなんだよ。
 今の俺でもそんな事出来ないぞ。たぶん。


 ……やれば出来るのかな。


 腕をスコップ的な何かに変化させれば掘れるかもしれない。


「ちなに、この山も初代竜王が作ったものなんですよ」
「……流石にそれは嘘でしょう」
「嘘みたいな話ですけど、本当なんです。今の竜王も十分飛び抜けてますが、初代はそれこそ神に匹敵するような次元でしたから。山一個作るくらいなら大した労力にもならなかったと思います」


 神であるセレンさんが言うとまた重みが違ってくるな。
 化け物じゃないか初代竜王。


 ……今の竜王にも会うのが怖くなってきたんだが。
 予定よりだいぶ早く着いたけど、大丈夫かなその辺。


 しばらく歩いていくと、町に出た。


 ……人の町と大差ないな。
 ていうか、ここが竜の海であってるのか?


 島って聞いてたんだが。


「島ですよ。ここは元々海で、土を初代竜王が――」
「なんとなく分かったんでもう良いです」


 神そのものじゃないか。
 強すぎるだろう、初代竜王。


 そんなのが警戒してわざわざ死の森やら死の海やら、死の山やら設置したということは当時の吸血鬼の王や光のハイエルフも相当やばい奴らだったのだろうか。
 そう考えると今の奴らはむしろ弱い方なのか?


「そういう訳でもないんですけどね。『強さ』のベクトルが違うだけで」


 そういうものなのか。
 よく分からないな。


 強さのベクトルねぇ。















 竜人のみで構成されているというだけで、勝手はほとんど人が作った町と変わらなかった。竜王がどこにいるのかを聞けば懇切丁寧に説明してくれる。
 何故知らないのか怪訝に思われたが、王からの招待客だと言えばそれはもう柔らかな物腰で案内してくれた。


 そうして辿り着いた竜王のいる城なのだが、竜王が俺の想像と随分違った。


 厳ついおっさんだと思っていたのだが、まさかの女だったのだ。
 竜女王じゃん。


「よく来たな! えーと……お前ら何だっけ?」


 よーし、こいつも馬鹿だ。
 吸血鬼の王とはベクトルの違う馬鹿だ。


 あいつは勉強の出来そうな馬鹿だったが、こいつは勉強も出来ない馬鹿だ。


 今の一挙手一投足で確信した。


 紅い髪に紅い瞳。
 エルランスは赤でこいつは紅だ。どう違うのかと言われれば……なんというか艶? が違う。それにしても、竜人の血が入っていると髪は赤くなるのだろうか。


 さっき山の抜け道守ってた二人組も言われてみれば赤かったような……いやあの人たちは坊主だったな。特に描写してないけど。


 露出度の高い服を着ているが、何故か全然興奮しない。
 女っぽくない。 
 おっぱいも結構大きいのに……
 もしかするとセレンさんクラスかもしれない。
 でも興奮しない。


 不思議すぎる。


「先日お話されていたセレン様御一行かと」


 側に控えていた、マリアさんと同じようなタイプの秘書さんがぼそっと竜王の耳元で囁いた。吸血鬼って耳も良くなるんだな。
 ちなみに秘書さんの髪の色は赤だ。マリアさんと色違い。


「あぁ、そうだそうだ思い出した。いや、今思えばずっと覚えていたよ。お前らを心待ちにしまくってたぜ。ようこそ竜の海へ。良いところだろう! ……ところでお前ら、何の用でここに来たんだっけ?」


 なんで興奮しないか分かった。
 こいつ馬鹿過ぎるからだ
 幼稚園児に興奮する奴はいないだろう。


 いや、いるかもしれないけど少なくとも俺はそうじゃない。
 幼稚園児並みの知能なのだ、要するに。


 セレンさんたちと顔を見合わせ、とりあえず俺が代表で話す事にする。


「竜王さま。私たちは――」
「敬語はよせ。好かん」
「……俺たちはあんたに力を貸してほしくてここに来たんだ。魔神と戦うために、竜人の力を貸して欲しい」
「……魔神? なんだそいつは。強いのか?」


 ……強いのかな。
 強いんだろう。
 強いということにしておけ。


「強い。もしかしたらあんたよりも強いかもしれない」
「ほう! そいつは面白い。力を貸してやろう!!」
「……え、良いの?」
「あたしより強いかもしれない奴と戦えるんだろう! 断る理由がないな!!」


 そうですか。
 そりゃ良かった。


 ……なんで四人で来させられたんだっけ。


「竜王様。四天王が控えているのですが……」
「あーそうだったそうだった。お前らちょうど四人だな。よし、四天王と戦え。勝ったら力を貸してやろう」


 さっきと言ってる事が違う。
 と言おうと思ったが、言ってもどうせどうともならないからやめておく。


 ……四天王か。
 なんとなく予想はしてた事だが、まさか本当にそうだとは。


 違っていてほしかった。

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