女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第37話 回復手段

 途中で森が元に戻り、そこから歩きに歩いて四日。
 ようやく森が終わった。


 かと思えば、すぐに海だった。
 勘弁してくれよ。


 ここでもミラが石をぽいっと投げ入れてみると、大量の魚っぽい魔物たちがこぞって食いちぎっていった。石を食いちぎるって。


 ピラニアも真っ青な人食い魚だ。
 どうやってここ渡るんだろう。


「ここもセレンさんがバリア貼るんですか?」
「まさか。流石に水圧を押しのけ続けるバリアを貼るのは無理です。バリア自体結構消費が重いですし」


 そうなのか。
 そういえば先日の森でもあの巨大ロボを動かせないようにするほどの魔力は残ってないって言ってたな。確かに高性能な魔法だし、魔力の消費は見た目の派手さとはあまり関係ないようだ。


 見た目だけで言うなら、ツィード海峡で見せた雷弾連発の方が遥かに消費魔力多そうだもんな。マシンガンもかくやという速度で打ち出してたし。


「飛んで行けば良いのでは? わたしとユウト様でミラ様とセレン様を担いで」
「俺でも飛んでいける距離なのかな、これ」


 少なくとも水平線まで何も見えないが。


「成田空港からハワイくらいの距離ですね」


 と、セレンさん。
 あー、行けるような行けないような距離だな。


 セレンさんを担いでとなるとギリギリだろう。


「……自分で言いたくはないですが、私よりミラちゃんの方が軽いでしょうしミラちゃんを担げば良いのでは……」
「いいえそれでも俺はセレンさんをお姫様抱っこして飛びます。そう決めたんです」


 実際のところ、俺自身の力が強くなりすぎているから、セレンさんとミラの体重差程度ならあってないようなものなんだよな。


 セレンさんに限らず、ミラでも有ると無いでは多少変化があるが。
 単純にそれは翼の動かしやすさの問題だからな。


 と、いうことで。




 俺がセレンさんをお姫様抱っこし、マリアさんがミラをそうする事に落ち着いた。
 ばさ、と俺とマリアさんがそれぞれ蝙蝠のような――悪魔のような翼を広げ、飛翔する。


 これも結局はイメージの問題だった。
 実際にこのような羽で人間の体を浮かせるのはかなりの速度で羽ばたかないと無理なのだろうが、やってみれば翼は生えているだけで基本は武空術みたいな感じで浮いている。


 勿論たまに翼は動かさないと墜落してしまうが。
 やっぱり人間にない部分の説明をするのは難しいな。


 速度もそれなりに出る。
 時速100㎞くらいか。
 俺は今の時点ではこれくらいが限界だが、マリアさん辺りはもっとスピードを出せるのだろう。速度を上げるのも慣れである。


 時折ちょっかいをかけてくる水棲の魔物は、セレンさんが雷弾で打ち落としていった。
 うちのパーティのレベルが高すぎて障害が障害になってない。


「そういえばセレンさん」
「なんですか?」
「今回はマリアさんがいるから人を抱えて飛べてますけど、当初の予定通り三人で行く事になってたらここはどうしてたんですか?」
「あー……。歩く部分を凍らせながら歩いていくつもりでしたが、今考えるとかなり時間かかりますよね」


 海を凍らせるという発想が凄いと思う。
 氷の道を歩くのも楽しそうと言えば楽しそうだけどな。


 確かにその方法だと歩く以上のスピードは出ないから、今よりも随分遅くなる。


 そういえば当初の予定より早いということは、ここのヌシに遭遇するのも予定より早まる訳で――


 既に、俺の目は遠くの方で鎌首をもたげている巨大な海蛇らしき影が見えていた。ツィード海峡のものより大きいが、俺が一撃で吹き飛ばせるくらいの大きさだ。


 ……あ。


「マリアさん、ストップ!」
「……どうかしましたか?」
「あの海蛇を俺が吹き飛ばすと、俺飛べなくなる」
「調節とか出来ないの?」
「無理。全力でぶっ放す事しか出来ないんだよな、あれ」


 ミラが露骨に駄目な奴を見る目をした。
 やめてくれ。
 威力調節とか考えなかった訳じゃないけど……


 何度か試みたが無理だ。
 下手に抑えようとすると力だけ持ってかれて不発とかもあり得る。


「セレンさん、50メートルくらいある海蛇凍らせたりできます?」
「本当に50メートルしかないなら凍らせられますけど、見えている部分だけでそれだけあるなら絶対もっと大きいですよね」
「でしょうね」


 多分全長はかのヒュドラよりでかい。
 俺が全力で攻撃すれば倒せる自信はあるが、それをやると飛べなくなるレベルまで消耗してしまう。


 迂回してくか……?
 いやでもあっちもこっちに気付いてるっぽいし、多分追いかけて来るよな。
 俺が出せるスピードの限界をあっちが超えていたら、無駄に体力を消耗するだけだ。


「……分かりました。優斗さんはヌシを全力で倒してください。後で私が優斗さんの体力を回復させます」


 セレンさんが何故か若干頬を染めながら言った。
 何か特殊な方法なのだろうか。体力の回復って。


 まぁやれと言われればやるけどさ。


「すみませんマリアさん、ちょっとの間セレンさんをお願いします」
「はい」


 マリアさんにセレンさんを受け渡し、腰に提げてあった聖剣を手に取る。
 影に収納しといたら取り出すとき海面に近付かないといけないじゃん。危ないじゃん。


 ……最近、聖剣から得られる力が加速度的に増えていっている気がするんだよな。
 気のせいだろうか。


 ともかく、聖剣から得た力と吸血鬼として持っている力を聖剣に込め直す。


 振りかぶり、振り下ろす。
 動作としてはただそれだけだ。


 だが、その動作が生み出す結果は絶大である。
 海を割り、巨大海蛇を割る。
 今回は巨大海蛇の抵抗力が強かったのか、水平線までエネルギーが飛んで行くなんてことはなく、その場で消滅した。


 死の森に入る前には遥か遠くに見えていた壁も、近付くにつれてどんどんその存在感を増していた。あそこを目標に技を撃ったんだけどな。
 あわよくば穴開けるくらいのつもりで。


 ……おっと。
 力がもう入らないな。


 自分一人でも浮いているのがギリギリだ。


 と思っていると、マリアさんに捕まっていたセレンさんが俺の元へダイブしてきた。いやちょっと、受け止めるけど受け止められませんよ。


 ばふ、と受け止め、高度が下がって行く。
 海に落ちたら一瞬で人食い魚たちにミンチにされるだろう。


 俺は大丈夫だとしてもセレンさんはそれではまずい。


 そういえば回復手段がどうとか言ってたような――


「――――」


 唇が重ねられた。
 前にもこんな事があったなぁと思い出す。
 潮風に晒されていたというのに、あの時と同じような瑞々しさだ。


 ……ってそうじゃなくて。


 力が流れ込んできた。
 いや、キスされたからやる気が出たとかそういう問題じゃなくて、本当に力そのものが流れ込んできた。なんだこれ。


「……ぷはっ。どうですか?」
「……なんとか。飛べるくらいには」


 なんと答えれば良いのか分からず、とりあえずそう答える。
 セレンさんをお姫様抱っこし、マリアさんたちの元まで高度を戻す。


 ……心なしか、ミラの俺を見る目が冷たい気がする。
 無表情なのだが。
 目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。


「そんな事しなくても、ユウト様は吸血鬼なのですから吸血すれば良かったんですけどね」


 さらりとマリアさんがそんな事を言い、俺とセレンさんは赤面したのだった。

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