女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第31話 幸運を運ぶ船

「そんな事があったんですか……」
「えぇ。俺は首を切られても死なないという事が証明されただけのエピソードな気もしますけどね」


 合流したセレンさん達に事の顛末を話した。


 ていうかマリアさん躊躇なく切ったけど俺がそれでも再生することを知っていたのだろうか。と思って聞いてみると、


「ユウトさんの再生力は王をも凌ぎますよ。首どころか微塵切りにされても再生すると思います」


 微塵切りにされる体験なんてしたくない。
 魔人ブウ並みの再生力があると思って良いのだろうか。元気玉じゃないと俺は倒せないのだろうか。


 それにしても再生力だけは王より上なのか。
 でもあいつ、防御力がアホみたいに高いしなぁ。
 攻撃力も勿論俺より高い。


 血を吸いきってしまえば勝てるのかもしれないが、そこまで持っていけるイメージが全く湧かないんだよなぁ。


「そういえばユウトは力も強いし再生力は高いけど防御力というか硬さは並だよね。なんで?」
「なんでと言われても」


 ミラが多分、特に深い意味もなく聞いてくる。
 知らんよそんなの。
 俺が聞きたいよ。


 俺も硬ければ痛い思いしなくて済むのに。


「あれ? 姉から血術けつじゅつは教わってないんですか?」
「血術……? 教わるどころか初耳だなぁ」


 血を操るとかそんな感じだろうか。
 字面から中身を連想すると。


「血術なしであのパワーだったんですか……。わたしで良ければ、道中お教えしますよ」
「それって俺にも使える力? 術なのか? 一応元人間で……ってあぁ、マリアさんも元人間なんだっけ」
「そういう事です。しかし、血術なしであの力という事はユウト様は人間だった頃から怪力だったんですか?」
「あー……」


 セレンさんの方をちらりと見ると、頷かれた。
 説明して良いって事だよね?


「実は俺、聖剣っての持ってるんだ。それで力とか色々上がってる。吸血鬼に成る前から怪力だし、不死身でもあったよ」
「なんと……」


 絶句、といった感じだった。
 まぁ普通の人間は怪力なんて持ってないし不死身でもないからなぁ。


 俺の場合、吸血鬼になることによって更にそれがブーストされただけだし。今考えれば元から吸血鬼みたいな設定じゃないか。


「もしかしたら再生力だけでなく力や防御力も王を超えるかも……いや流石に……」


 ぶつぶつと呟き始めるマリアさん。
 なんか怖いなぁ絵面が。眼鏡美人が顎に手を当ててぶつぶつやってるのって。
 どうでも良いけど、そろそろあのドワーフのおっさんとの約束の時間だ。


 吸血鬼の王パワーは強く、今日中に出発する事となったのだ。
 まぁあのおっさん暇そうだったし。















「ようやく来たか。他人を待たせるなと親に教わらなかったのか? 吸血鬼に親がいるのか知らんがな」


 待ち合わせ場所に着くなりの言葉だった。
 こいつぶっ飛ばしてやろーかとも思ったが、確かに待たせていたのは事実だ。集合時間の30分くらい前なんだけどな、今。


「申し訳ありません。お待たせ致しました」


 俺たちから先に話を聞いていたセレンさんが、先手を打って謝罪した。
 俺たちもそれに合わせて頭を下げる。


「……はん、仲間がもう二人もいたのか。そいつらも死なんのなら文句はないが」


 いやぁセレンさんとミラは吸血鬼でもなければ不死身でもないし普通に死ぬと思うよ。俺が死んでも守るけど。


 そういう意味じゃあセレンさんよりもミラの方が心配なんだよな。
 ミラも当然強いが、人間の枠は超えていない。速度こそ俺より上だが火力は下だし。
 ……ミラも吸血鬼化させてしまえば良いじゃんと今一瞬思いかけたが、ぽんぽん吸血鬼にするのも駄目だろう。


 デメリットは無いようでちゃんとあるからな。
 寿命とか日光に若干弱くなるとか。女の子にとっちゃあ太陽が天敵になってしまう。
 ……日光の方はまぁまぁどうでも良いな。


 だが、俺を吸血鬼にしたあの女は『個人差』があると言っていた。
 やはり軽々に吸血鬼化はさせるべきではないだろう。




 ともかく。
 ドワーフのおっさんはやたらと感じが悪いが、船には乗せて貰えた。
 なかなかどうして立派な船だ。


 乗せる隙間なんてないと言っていた割りに、普通に客室もある。しかも10部屋くらい。一人一部屋でも余るくらいだ。


 セレンさん達が各々割り当てられた部屋でくつろいでいる中、俺は操舵室へと向かう。
 やはりと言うか当たり前というか、ドワーフのおっさんがそこにいた。


「おっさん。この船なんて言うんだ?」
「気安く話しかけるな吸血鬼の坊主。儂はお前らが大嫌いなんだ。……だが、名くらいは答えてやる。サンタレ号だ」
「へぇ。なんか意味があるのか?」
「……幸運を届ける船なんだ。こいつはな」


 ……幸運ねぇ。
 これだけの規模の船だ。客室もある。
 それなりのものを運んでいるのだろうが、俺には皆目見当もつかない。セレンさんやマリアさん辺りに聞けば分かるのだろうか。


 次の航海は本来半年後なんだっけか?
 頻繁に運ぶものでなくて価値のあるものか。


 ……うんやっぱ分かんないわ。


「おっさん。サンタナ号は何を運ぶ船なんだ? 幸運って言われても俺には分かんねぇよ」
「お前らには無縁のものだ」


 それ以降、ドワーフのおっさんは話さなくなってしまった。
 ……そういやこの船の名前は知れたがこのおっさんの名前は知らないんだよな。


 今更聞ける雰囲気じゃないからとりあえず退散するが。
 船の名前聞くより先におっさんの名前から聞いとくべきだったか。


 ……まぁ良いや。
 ほとぼりが冷めた頃にまた向かうか。


 とりあえずセレンさんのところにでも行こうかな。

















「セレンさん今大丈夫ですかーお着換え中ですかー」
「あ、今着替えてま……ちょっと何開けようとしてるんですか! 鍵かかってますよ!」


 くそう。
 鍵がかかってなかったら突撃隣の晩御飯が出来たのに。
 鍵ぶっ壊してても入ろうかと考えていると、セレンさんが自ら開けてくれた。


 部屋に備え付けられている椅子に座る。


 セレンさんは既に着替え終わっていた。
 神は無情だ。もう何も信じない。


 ちなみにセレンさんは薄桃色のパジャマを着ていた。
 もう寝る気だったのだろうか。
 言われてみればもう薄暗いし、やる事ないしパジャマになるのも自然な話だ。


 生地が薄いのか体のラインが微妙に浮かび上がっている。


 これはこれでありだな。
 大ありだな。


「……何の用で来たんですか?」


 俺の視線に気付いたのだろうセレンさんがジト目で尋ねてくる。
 何の用と言われれば特にないのだが。


「セレンさんとイチャイチャにしに来ました」
「なんですかそれ、もう」
「いやぁ、俺も暇なんですよ。マリアさんに血術けつじゅつとか言うの教わるまでは」
「それならマリアさんの部屋を訪ねれば良いんじゃないですか?」
「女性の部屋に男が突撃していくのはちょっと」
「私も女性なんですが……」
「セレンさんは女神なのでノーカンです」
「なんですかその理論」


 なんだろうこの理論。


「ともかく俺はセレンさんと話したくて来たんですよ」
「……なら、何か話題を振ってくださいよ」


 それもそうだ。
 だが、こうして冷静に考えてみるとこれと言った話題も無いんだよな。うーむ。


 俺の対人スキルの低さが露見してしまう。
 これがミラ辺りだったら勝手に俺をなじってくれるのでツッコミつつボケつつで会話が展開していくのだが、セレンさんと話す時は基本的に俺がボケだ。


 つまりは俺が何かボケないといけない。
 強いられているのだ。


「別に強いてはいませんが……」
「じゃあ……古代エジプト人がどうやってピラミッドを作ったかの議論でもしましょうか」
「あれは宇宙人が来て技術を教えていったんですよ」
「マジで!?」
「冗談です」


 くす、と笑いながらセレンさんは言った。


 今のが冗談でも、セレンさんは本当の事を知っているかもしれないんだよな。
 そう考えると無意味な議論だ。
 なんかもっとこう……


「何故女性の胸は男性を惹きつけるのでしょうか」
「それは男性同士で話すような内容なのでは……」


 その通りである。


 修学旅行とかで好きな子トークの次くらいに来る話題だ。
 大体巨乳派と貧乳派、最近では巨乳は巨乳でも二次元限定とか貧乳は貧乳でも以下略とかの派閥も生まれているから、話し合いが楽しそうだ。


 しかし、まずいな。
 このままでは俺の引き出しが少なく浅い事が露見してしまう。
 こういう時こそ閃けよ俺。


「あ。そういえばこの船が何を運ぶものか知ってます?」
「……えーと、確か医療関係のものでしたよ。薬とか包帯とか」


 あー。
 だから俺たちには無縁のものなのか。
 幸運を運ぶ、ねぇ。


 確かにそうとも言える……か?


「幸運を運ぶ船ってあのおっさんは言ってましたけど、ああ見えてロマンチストなんですね。怪我を治すから幸運……地獄に仏って感じだと俺は思いますけど」
「幸運を……そう言ったんですか?」
「はい。何か知ってるんですか?」
「……いえ、私は何も」


 ふるふるとセレンさんが首を横に振る。


「……ま、セレンさんも何もかも知っている訳じゃないですからね」


 だが。
 今ので何かがある事は分かった。
 高給取りだと言っていた割りにあんなスラム街に住んでいるし、俺たちが吸血鬼だと分かった途端に態度も急変した。


 何かがあるのだろうが、それを俺は知らない。
 セレンさんは知っているのかもしれないが、知らないと言った以上、恐らく知る必要がない事なのだろう。

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