女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第24話 三つの極致

「その会話の内容は聞かなかったの?」
「流石にそこまで野暮じゃねぇよ。あの野郎、帰りの馬車じゃ何も言わなかったくせに別れ際には『今回はありがとう。何か困ったことがあればいつでも呼んでくれ』なんて言って消えるしよ」


 後日。
 俺はセレンさんとミラに、今回の事の顛末を話した。
 エルランスのついていた嘘。
 それはこれが任務だったという事である。


 任務で国に命令される前に、彼は父親を自らの手で殺した。


 竜車が来るまでの間、彼から聞いた話によれば


・エルランスの父親は元・護廷騎士団団長で、歴代最強とまで謳われていた
・引退後も息子の修行をしたり近所の子どもに剣術を教えたりと慕われる存在だった
・ある日を境に、人が変わったかのように暴れ始めた
・住んでいた村を壊滅させた。たったの一夜で、たったの一人で


 との事だった。


 そしてその『人が変わったかのように』の部分の理由を、セレンさんは知っていた。


「実は、エルランスさんのお父様――バンレンスさんは、魔神の仲間に誘われています。ですが、彼はそれを断りました。にべもなく、簡単に。逆恨みした魔神が呪いをかけて人が変わったかのように暴れ始めたのです」


 そしてそれが、セレンさんがエルランスに目を付けていた理由なんだとか。
 バンレンスという竜人は、歴代最強の護廷騎士団。通常通りの強さであれば、一人で村どころか国を壊滅させるような傑物だったと言う。
 呪いに抵抗する事によって力自体は落ちていたのだとか。


 魔神、ね。
 実物を見た事がないから何とも言えないが、今までそいつの手先とか見てきた感じ絶対ロクな奴じゃねぇ。会った瞬間にぶん殴ってやろう。
 エルランスの奴の分も、ついでにな。


 ちなみに。
 エルランスを仲間にスカウトするのはやめた。
 魔神に対して因縁もあるし、強さも恐らく申し分ない。
 やめた理由は至って簡単で、奴は田舎に戻って婚約者と静かに暮らしたいんだそうだ。そんな奴を生きるか死ぬかの戦いに引き込む訳にはいかない。


 いや、世界が滅ぶか滅ばないかの瀬戸際だってのに何言ってんだってなるだろうけどさ。


 別にあいつ以外にも強い奴なんてたくさんいるさ。
 強くて暇そうな奴をスカウトすれば良い。
 いるだろそういう燻ってる奴。
 一応、セレンさんにも断りを入れてある。


 というかさ。
 この中にあんなイケメン入ってきてセレンさんが惚れてしまったらどうするんだよ。
 なんていうのも思ったり思わなかったり。
 要するに俺の意志だよ。


 あぁ、ちなみに10億はちゃんと口座に振り込まれていた。
 律儀な奴だ、あいつも。
 魔法的な契約は一切交わしていないと言うのに。
 そもそも俺も不用心な事をしたものだ。


 どこかであいつをそこまで信用してたのだろうか。いろいろ気を張っているつもりだったが、まだまだ甘いんだな俺。


 結婚資金用に10億は返してやろうかとまで思ってたんだからな。
 いや返さないけど。返さないよ? だってあいつまだまだ金持ってそうだし。貧乏人がひねり出した金ならまだしも、話を聞けば聞くほどあいつ良いとこの坊ちゃんじゃないか。


 ともかく。
 ともかく、だ。
 あいつの事ばかり話してても面白くもなんともない。


 セレンさんとミラが俺がいなかった間に何をしたか尋ねてみると、


「普通に依頼を受けて普通に稼いでましたよ。優斗さんがいない分、少し難易度の低いものを受けてましたが」


 まぁ、心配するまでもない事だった。
 自分の実力で倒せない相手を見極める能力に関しては俺が今更何かを言うまでもない。ミラもどうやら俺が思っている以上に強いみたいだしな。


「予定よりかなり早く資金は集まりそうですね。今回ので一気に+10億ですし、集まり切ったらすぐに仲間集めですか?」
「いえ」


 あれ? 違うのか?


「予定より早く集まり過ぎているので、しばらくは情報集めになると思います。並行して仲間も探せればと思いますが……あちらの戦力の集まり方も、正直予定外です。特に、吸血鬼の王を引き入れてたのは私たちにとってあまりにも痛手すぎる」


 吸血鬼の王か。 
 単語そのものはずっと聞いているんだが、いまいちその強さが分からないんだよな。


「優斗さんにも分かりやすいように強さを表すなら、全盛期のバンレンスさん――つまりは竜人が三人いてようやく互角に戦える可能性があるのが、吸血鬼の王です」


 …………。
 分かりやすいようで分かりにくいような。
 ともかく、俺が知っている竜人より強い奴が三人いても倒せるかもねくらいにしか善戦できないって事か?
 そんなの次元が違いすぎて逆に想像がつかない。


 というか、竜人と吸血鬼でそんなに地力が違うの?
 となると、俺は吸血鬼の中でも弱い方に入るのか?
 俺を吸血鬼にしたあの女は最弱候補って感じなのか?


「竜人と吸血鬼、そしてエルフはほとんど同じくらいの強さです。竜王、吸血鬼の王、光のハイエルフというそれぞれのトップがうまくバランスを保ちながら存在している感じですね。普通の人間でも彼らに肉薄する程強い人は稀に現れますが……」
「なるほど」


 竜人のトップが竜王で、吸血鬼のトップが吸血鬼の王で、エルフのトップが光のハイエルフか。
 字面だけ見ると仲間になってくれそうなのは光のハイエルフって人だけか?


「吸血鬼の王もそうだけど、竜王と光のハイエルフって伝説上だけでの存在だと思ってた。違うの?」
「伝説に残っている彼らと現吸血鬼の王、竜王、光のハイエルフは別人ですが受け継がれていってますよ。皆、先代にも初代にも引けを取らない程の豪傑です。
 ……優斗さんには、神話に出ているような人たちが今生きていると言った方が正しく伝わるかもしれません」


 神に匹敵するような強さって事か?
 冗談じゃない、そんな奴らとドンパチなんかやってられるか。
 直接相対せずに最後まで行きたいものだ。多分無理なんだろうけど。吸血鬼の王とやらは既に敵になってるしな。


 となると、竜王か光のハイエルフかを仲間に入れたいものだが……


 やっぱりエルフかなぁ。


「エルフ族に助力を求めるのは正直言って難しいです。彼らは人より遥かに優れた知能と魔力を持っていて、人間の味方をする理由がないので……」
「相応の見返りを用意しなければならない、と」
「恐らくですが、お金でも動いてくれません。基本的に自給自足で暮らしていて、それに満足しているのがエルフ族です。稀にそこに属さないエルフもいますが、はぐれものとして扱われるので……」


 その辺にいるエルフに仲人を依頼しても無駄、という事か。
 難しいもんだ。
 確かに元いた世界のゲームやアニメに出てくるエルフは内向的で気難しい性格の奴ばっかだったな。金で動いてくれないなら他の見返りを用意するべきなのだろうが、その案がセレンさんから出ないという事はそれもまた難しいという事だろう。


「光のハイエルフは難しいですが、今の優斗さんなら、竜王を味方に引き入れる事は可能かもしれません」
「ボクの知っている伝説上の竜王は強い者が好きだったけど、今の人もそうなの?」
「その通りです。竜王は同じ竜人の中でも群を抜いて強く、それこそ匹敵し得るのが吸血鬼の王か光のハイエルフしかいないので常に強者に飢えているんです。……優斗さんならそのお眼鏡に適う可能性もあります」


 なんとなくそれだけでもどんな奴かは想像がつくけど、例えば竜王とタイマン勝負になったとして、俺一瞬で殺されたりしないだろうか。
 この間、竜王じゃない竜人と戦ってほぼ互角どころかちょっと押され気味だったんだけど……


「じゃあ無理だね。無理無理だね」


 ミラがすぱんと言い放った。
 いや事実だけどさ。
 はっきり言いやがって。


「となるとやっぱり地道に金貯めて凄腕の傭兵を雇うくらいしかないですね。金で雇った奴は金で寝返るかもしれないし、主戦力としては俺とセレンさん、それにミラくらいか……」
「伝説上の生き物との闘いにボクが役に立つとは思えないけど」
「そんな事ありませんよ。私も優斗さんもミラちゃんほど早く動けませんし、信頼できる人は多ければ多いほど良いに決まってます」
「うぬ……」


 ミラが恥ずかしそうに唸った。
 褒められるし信頼してるとか真正面から言われるしで照れくさいのだろう。ミラはセレンさんに対しては割りと素直は面があるからな。
 俺に対してだけツンケンしている。


 ……俺が嫌われてんのか?
 そんな事はないと思いたいが。
 信じるぞミラ。


「とにかく、今はまだお金集めですね。実は、腕の良い傭兵は既に何人か見繕ってあるんです。その中で信用できそうな方を、三人で決めましょう」

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