女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜
第22話 竜人
「竜人って聞いた事あるかい?」
エルランスの問いかけに、少し考える。
『竜人』という単語そのものは日本のゲームか何かで見ているから知っているには知っている。だが、俺の知っているその『竜人』とこいつの言う『竜人』が同一なのかが判断つかない。
「聞いた事だけはある。どんなのかは知らないが」
その返答を聞いたエルランスはふぅん、と頷いた。
「見た目はほとんど人と変わらない。君と同じで、大抵の人には人にしか見えない。だけど、その身に竜の力を宿してるんだ。怪力に信じられないほど硬い皮膚、高い魔法適正、使える人は限られるけど強力な咆哮も放つ」
「人型のドラゴンってとこか」
「まぁ、そう思ってくれて良いよ」
ヒュドラを思い出す。
あれが小さいとなると、単純に的が小さくなってやりづらそうなイメージしか湧かないな。人の形で頭が10個もある姿を想像するのはぞっとするが。
ろくろ首の首が10個ある感じ。
正直きもい。
「ドラゴンとの戦闘経験は?」
「つい最近。首が10個あるやつとな」
「……本当みたいだね。凄まじいやつと戦ってるじゃないか。頼もしいよ」
「真実の魔眼使わないと気が済まないのかお前は」
「いや、常に発動してるんだ。お陰で魔力は吸われっぱなしだよ。これを《祝福》と称す人もいるけど、僕にとっては《呪い》の反面もあるんだ」
嘘は絶対にバレるって事か。
嫌だなぁ。
友達になりたくない。
「報酬は10億。これを山分けするんじゃなくて、君に10億だ」
「……は?」
俺に真実の魔眼があったら良いのに。
信じられない事を言い出してきた。
何言ってんのこいつ。
……いや、それだけその竜人が強いのか?
あのヒュドラよりも。
だとしたら軽々にこの任務、協力しない方が良いんじゃないか?
「ちなみにお前がその任務の依頼主から貰える金額は幾らなんだ」
「……10億だよ。信じて貰えないかもしれないけど、僕の眼にかけて真実だと誓おう」
……そんな事言われてもなぁ。
その言葉にどれだけの意味があるかなんて分かんねぇし。
でも一つ言えるのは、多分こいつはどこかで嘘をついている。
それがどこかまでは判断がつかないが。
ただ……多分、俺に10億払うというところは本当だ。
確証はないが。
「良いぜ分かった。ビジネスライクに行こう。俺には二人仲間がいるんだけど、連れてきて良いよな?」
「あ、いやそれはちょっと困る」
「はぁ?」
何でだよ。
うちのセレンさんに何か問題があるってのかこのキザイケメン。
「あー、なんというかあまり人に知られたくないんだ。だからこうして個室の店に来てる訳だし……っと、そろそろ何か頼まないと怪しまれるかも。そこのボタンを押すと店員を呼べるんだ。最近できた技術なんだよ」
「俺の地元にも似たようなのがあったよ」
と言うか見た目はほぼ一緒だ。
押してみるとぴんぽーんと音まで一緒で鳴り響く。
暫くすると、猫耳のウェイトレスさんが来た。やはり美人だった。
「おすすめのメニューを頼む。こちらの方と僕で二人前だ」
かしこまりました、と猫耳ウェイトレスは去っていった。
……猫耳いいなぁ。
猫耳美少女とかその辺に落ちてないかな。
「さて。改めてなんだけど、引き受けてくれるかな」
「…………」
10億か。
目標の30億にぐっと近付く。
……と、言うより。
こいつ自身が魔神と戦う時の戦力になる可能性がある。
人の好さそうな奴だし、ここで恩を売っておけば無償で働いてくれるかもしれない。金を貰う上働いて貰うのは流石に心苦しいからその場合は金は受け取らない事になるが、そっちの方が都合が良いだろう。
こいつに10億以上の価値があるなら、だが。
どっちにしろ俺一人で決められる案件ではない。
いやでもなるべく秘密にしたいとか言ってたしセレンさんに相談するのも駄目なのか?
くそ、厄介だな。
……よし。
「分かった。お前に協力しよう。ただ、少し時間をくれ。内容までは伝えなくとも、少しの間いなくなる事くらいは伝えたって良いだろう?」
「ありがとう! 君ならきっと引き受けてくれると思った! あぁ、もちろん仲間にも伝えてくれ。内容まではなるべく言わないで欲しいけど君の仲間なら周りに言いふらす事もないだろうしね」
え。
言って良かったのかよ……
でも手伝うって言った手前、やっぱちょっとタンマとか言いづらいしなぁ。
まぁいっか。
とりあえずセレンさん達に報告だな。
◆
「その方、知ってますよ。エルランスさんですよね。元々目を付けてた人でしたが、まさか優斗さんが先に接触する事になるとは」
との事だった。
事情もどうやら俺より把握しているらしい。
とある任務の助力を求められて……とまで話した時点で、あぁ、と納得した様子だった。エルランス。お前が秘密にしたい事、女神様は全部知ってるみたいだぞ。
ミラは話について来れてなかったが。
とりあえず俺がしばらくの間留守にするという事だけは伝えた。
「セレンさんが目を付けてたって事はやっぱあいつ相当強いんですね。そんな奴がこてんぱんにされたっていう竜人相手に、俺なんかが役に立つんですか?」
「と、言うよりは本来エルランスさん一人でやれる任務なんです。優斗さんはきっかけをあげてください」
――よく分からないが。
詳しい事情は本人の口から聞くと良いとの事だった。
何か面倒な事に巻き込まれてるのかな、俺。
でもかなりやばい案件ならセレンさんも止めるだろうし、とりあえずは大丈夫なのか?
うーん。
やっぱまだ何か話がふわふわしてるんだよな。
エルランスのついている『嘘』はセレンさんに聞けば分かるのだろうけど、それを聞いてしまうのは何かずるをした気分だ。
あいつはあいつなりの考えで俺を騙そうとしている。
それに気づくか気付かないかは別として、何か意図がある事は間違いないのだ。
それに乗らなければ計画が狂ってしまう可能性もある。
……なんで俺があいつを慮っている感じになってるんだ。
こっちは一方的に巻き込まれた形なのに。
調子が狂うなぁ。
◆
「早かったじゃないか、ユウト。もう挨拶は済ませたのかい?」
「物分かりの良い人たちなんでね。すぐに事情を把握してくれたよ」
と言うよりは最初から事情を把握している人と特別興味のなさそうな奴の二人だけだったから早かっただけなのだが。
今の言葉がこいつにとっての嘘と認識されるのかは知らないが、とりあえず俺は嘘をついているつもりはない。
「なるほど。いや、深くは詮索しないよ。それくらいには既に君を信頼している」
「身に余る光栄だな」
「ぞっとするような嘘はよしてくれ」
そうかよ。
こいつ本当に嘘のつけない奴だな。
「さて、今回の任務について詳しく話していこうか」
「そういやほとんど聞いてないんだよな。竜人って奴をぶっ飛ばせば終わりなのか? 捕まえるのか? 殺すのか?」
「……出来れば捕まえたい。捕縛したい……が、正直それは難しいだろう。留めは僕が刺す事になると思うが、基本的に――殺すつもりで動いてくれ」
殺すつもりで、ときたか。
「相手は大量殺人者だ。100人以上は殺している。僕が知らないだけでそれ以上殺している可能性もある。捕まえたところで死罪は免れないだろうしな」
「多少は気が楽になる情報をどうも」
「これは彼が平気で100人以上を殺すことが出来るという事の証明であって、気が楽になるような情報ではないんだけど」
「思いっきりやれるだけの理由がある方が楽なんだよ。気が楽なんだよ」
「……ふぅん。変わった考えを持ってるな。やっぱり、君は自分の強さに相当な自信があるらしい」
……そういう事になるのか。
そういう事になるのか?
発想が飛躍している気もするが、まぁこいつがそう思いたいならそう思わせとけば良いだろう。実際俺はほとんど死なないから、多少の無茶は出来るしな。
よっぽど相手と自分の実力に差が無い限り、死ぬことはない。
ヒュドラより強い奴とかそうそういないだろ。
あいつ相手に生き残ったんだから、大抵生き残れる。はずだ。
「君の場合それが慢心じゃないと言うのが凄いんだ。まぁ僕は君の実力をまだ見てない訳だけど、自身の眼は信頼してるし君は信用してる。頼りにするよ、ユウト」
エルランスの問いかけに、少し考える。
『竜人』という単語そのものは日本のゲームか何かで見ているから知っているには知っている。だが、俺の知っているその『竜人』とこいつの言う『竜人』が同一なのかが判断つかない。
「聞いた事だけはある。どんなのかは知らないが」
その返答を聞いたエルランスはふぅん、と頷いた。
「見た目はほとんど人と変わらない。君と同じで、大抵の人には人にしか見えない。だけど、その身に竜の力を宿してるんだ。怪力に信じられないほど硬い皮膚、高い魔法適正、使える人は限られるけど強力な咆哮も放つ」
「人型のドラゴンってとこか」
「まぁ、そう思ってくれて良いよ」
ヒュドラを思い出す。
あれが小さいとなると、単純に的が小さくなってやりづらそうなイメージしか湧かないな。人の形で頭が10個もある姿を想像するのはぞっとするが。
ろくろ首の首が10個ある感じ。
正直きもい。
「ドラゴンとの戦闘経験は?」
「つい最近。首が10個あるやつとな」
「……本当みたいだね。凄まじいやつと戦ってるじゃないか。頼もしいよ」
「真実の魔眼使わないと気が済まないのかお前は」
「いや、常に発動してるんだ。お陰で魔力は吸われっぱなしだよ。これを《祝福》と称す人もいるけど、僕にとっては《呪い》の反面もあるんだ」
嘘は絶対にバレるって事か。
嫌だなぁ。
友達になりたくない。
「報酬は10億。これを山分けするんじゃなくて、君に10億だ」
「……は?」
俺に真実の魔眼があったら良いのに。
信じられない事を言い出してきた。
何言ってんのこいつ。
……いや、それだけその竜人が強いのか?
あのヒュドラよりも。
だとしたら軽々にこの任務、協力しない方が良いんじゃないか?
「ちなみにお前がその任務の依頼主から貰える金額は幾らなんだ」
「……10億だよ。信じて貰えないかもしれないけど、僕の眼にかけて真実だと誓おう」
……そんな事言われてもなぁ。
その言葉にどれだけの意味があるかなんて分かんねぇし。
でも一つ言えるのは、多分こいつはどこかで嘘をついている。
それがどこかまでは判断がつかないが。
ただ……多分、俺に10億払うというところは本当だ。
確証はないが。
「良いぜ分かった。ビジネスライクに行こう。俺には二人仲間がいるんだけど、連れてきて良いよな?」
「あ、いやそれはちょっと困る」
「はぁ?」
何でだよ。
うちのセレンさんに何か問題があるってのかこのキザイケメン。
「あー、なんというかあまり人に知られたくないんだ。だからこうして個室の店に来てる訳だし……っと、そろそろ何か頼まないと怪しまれるかも。そこのボタンを押すと店員を呼べるんだ。最近できた技術なんだよ」
「俺の地元にも似たようなのがあったよ」
と言うか見た目はほぼ一緒だ。
押してみるとぴんぽーんと音まで一緒で鳴り響く。
暫くすると、猫耳のウェイトレスさんが来た。やはり美人だった。
「おすすめのメニューを頼む。こちらの方と僕で二人前だ」
かしこまりました、と猫耳ウェイトレスは去っていった。
……猫耳いいなぁ。
猫耳美少女とかその辺に落ちてないかな。
「さて。改めてなんだけど、引き受けてくれるかな」
「…………」
10億か。
目標の30億にぐっと近付く。
……と、言うより。
こいつ自身が魔神と戦う時の戦力になる可能性がある。
人の好さそうな奴だし、ここで恩を売っておけば無償で働いてくれるかもしれない。金を貰う上働いて貰うのは流石に心苦しいからその場合は金は受け取らない事になるが、そっちの方が都合が良いだろう。
こいつに10億以上の価値があるなら、だが。
どっちにしろ俺一人で決められる案件ではない。
いやでもなるべく秘密にしたいとか言ってたしセレンさんに相談するのも駄目なのか?
くそ、厄介だな。
……よし。
「分かった。お前に協力しよう。ただ、少し時間をくれ。内容までは伝えなくとも、少しの間いなくなる事くらいは伝えたって良いだろう?」
「ありがとう! 君ならきっと引き受けてくれると思った! あぁ、もちろん仲間にも伝えてくれ。内容まではなるべく言わないで欲しいけど君の仲間なら周りに言いふらす事もないだろうしね」
え。
言って良かったのかよ……
でも手伝うって言った手前、やっぱちょっとタンマとか言いづらいしなぁ。
まぁいっか。
とりあえずセレンさん達に報告だな。
◆
「その方、知ってますよ。エルランスさんですよね。元々目を付けてた人でしたが、まさか優斗さんが先に接触する事になるとは」
との事だった。
事情もどうやら俺より把握しているらしい。
とある任務の助力を求められて……とまで話した時点で、あぁ、と納得した様子だった。エルランス。お前が秘密にしたい事、女神様は全部知ってるみたいだぞ。
ミラは話について来れてなかったが。
とりあえず俺がしばらくの間留守にするという事だけは伝えた。
「セレンさんが目を付けてたって事はやっぱあいつ相当強いんですね。そんな奴がこてんぱんにされたっていう竜人相手に、俺なんかが役に立つんですか?」
「と、言うよりは本来エルランスさん一人でやれる任務なんです。優斗さんはきっかけをあげてください」
――よく分からないが。
詳しい事情は本人の口から聞くと良いとの事だった。
何か面倒な事に巻き込まれてるのかな、俺。
でもかなりやばい案件ならセレンさんも止めるだろうし、とりあえずは大丈夫なのか?
うーん。
やっぱまだ何か話がふわふわしてるんだよな。
エルランスのついている『嘘』はセレンさんに聞けば分かるのだろうけど、それを聞いてしまうのは何かずるをした気分だ。
あいつはあいつなりの考えで俺を騙そうとしている。
それに気づくか気付かないかは別として、何か意図がある事は間違いないのだ。
それに乗らなければ計画が狂ってしまう可能性もある。
……なんで俺があいつを慮っている感じになってるんだ。
こっちは一方的に巻き込まれた形なのに。
調子が狂うなぁ。
◆
「早かったじゃないか、ユウト。もう挨拶は済ませたのかい?」
「物分かりの良い人たちなんでね。すぐに事情を把握してくれたよ」
と言うよりは最初から事情を把握している人と特別興味のなさそうな奴の二人だけだったから早かっただけなのだが。
今の言葉がこいつにとっての嘘と認識されるのかは知らないが、とりあえず俺は嘘をついているつもりはない。
「なるほど。いや、深くは詮索しないよ。それくらいには既に君を信頼している」
「身に余る光栄だな」
「ぞっとするような嘘はよしてくれ」
そうかよ。
こいつ本当に嘘のつけない奴だな。
「さて、今回の任務について詳しく話していこうか」
「そういやほとんど聞いてないんだよな。竜人って奴をぶっ飛ばせば終わりなのか? 捕まえるのか? 殺すのか?」
「……出来れば捕まえたい。捕縛したい……が、正直それは難しいだろう。留めは僕が刺す事になると思うが、基本的に――殺すつもりで動いてくれ」
殺すつもりで、ときたか。
「相手は大量殺人者だ。100人以上は殺している。僕が知らないだけでそれ以上殺している可能性もある。捕まえたところで死罪は免れないだろうしな」
「多少は気が楽になる情報をどうも」
「これは彼が平気で100人以上を殺すことが出来るという事の証明であって、気が楽になるような情報ではないんだけど」
「思いっきりやれるだけの理由がある方が楽なんだよ。気が楽なんだよ」
「……ふぅん。変わった考えを持ってるな。やっぱり、君は自分の強さに相当な自信があるらしい」
……そういう事になるのか。
そういう事になるのか?
発想が飛躍している気もするが、まぁこいつがそう思いたいならそう思わせとけば良いだろう。実際俺はほとんど死なないから、多少の無茶は出来るしな。
よっぽど相手と自分の実力に差が無い限り、死ぬことはない。
ヒュドラより強い奴とかそうそういないだろ。
あいつ相手に生き残ったんだから、大抵生き残れる。はずだ。
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