女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第4.5話 夜伽戯

 心臓が爆発しそうだった。
 こんなに頑張れるのか心臓。
 凄いなお前。


 口から飛び出そうとかいう表現があるが、あれよりも上を見つけた。
 肋骨ぶち破りそう。


 ごめん、適当こいた。
 本当は口から出そうなんだ。
 本当に出てきそう。
 ここまで緊張すると本当に口から出てきそうになるんだな。


 油断するとボロンって感じで出てきて死んじゃいそう。


 俺は今ベッドに横たわっている。
 その隣にセレンさんがいる。


 俺は今ベッドに横たわっている。
 その隣にセレンさんがいる。


 誤植じゃないから安心してくれ。
 大事な事だから二回言ったんだ。
 何なら三回目も言っていい。


 俺の隣にセレンさんがいる。
 俺は横たわっている。
 セレンさんも横たわっている。


 クドいわ。
 濃厚とは別の意味でクドいわ。
 食べる前に躊躇する感じ。


 ……置いといて。


 眠れない。
 いや、眠らない。
 眠る気なんてさらさらないし、寝かせる気もない。


 でもどうすればいいんだ。
 どどどどうすればいいんだ。


 何から始めれば良いのかが分からない。
 何をして始めれば良いのかが分からない。


 よし、じゃあやるか! って言って始めるの?
 じゃ結婚すっか! みたいなノリで。
 無理だよ。あの人だからこそ出来るノリだよ。俺とはレベルが違う。


 衝撃だったなぁあれ。俺はコミックスで読むしかなかった年齢だったけど。あれ週刊で追えてた人はほんと羨ましい。


 そういえば二度と読めないんだよな。
 530000に衝撃を受ける事は二度とないのか……


 ……置いといて。
 逃げるなよ。
 あらゆることから。


 真面目な話、本当にどうすればいいの?
 どうやって始めてるのみんな。
 偉大な先人たちは何も残してくれてない。何なのお前ら。好き勝手しやがって。初めてやる人の事も考えてくれよ。


 そもそもだ。
 そもそもだぜ。


 今日会ったばかりの人と致すのはあまりに早いんじゃないか?
 もうちょっと階段を昇ってからの方がいいんじゃないか?


 ステップを踏んでからの方が。
 こう、デートしてキスしてホテル行って流れで……みたいな。


 古臭い考え方なのだろうか。
 俺って古い人間なのだろうか。


 文化は変わりゆくのだ。


 どうしよう。
 あぁ、とりあえずすべき事があるんだ。


「せ、セレンさんお、おお起きてますか?」
「…………起きてます」


 凄く小さい声で返事が返ってきた。
 起きてるのか。


 寝てたら……寝てたらあれなのに。
 こう、良い口実が見つかったなと思うのに。


 起きてるのか……
 セレンさんも実は期待してるとかないだろうか。


 ……ないだろう。
 今日あったばかりだ。
 なんでもいう事を聞くと言ってしまったばかりに、こんな事を強要されて迷惑がっている可能性だってあるんだ。そうの方が可能性は高い。


 と思う。


 わかんないよだって俺彼女とかいた事ないもん。


 本来どういうプロセスを経てここまで至るのかも分かってないのにここからどうしろと神は仰るのだ。あ、神は隣にいるんだ。
 どうしろと言うんですかね。


 直接聞けばいいのかな。
 駄目だろう。
 普通に考えれば、普通に考えなくても駄目だろう。


 こう、自然な流れを作るんだ。


 考えろ緑崎 優斗。
 お前なら出来る。
 お前ならやれる。
 いつだってそうだ。お前はなんだかんだ何とかしてきたじゃないか。


 テスト前とか。
 夏休み終了目前とか。


 アホか。
 レベルが違うわ。
 アホか。


 俺得意の口八丁でなんとかならないのか。初めてあの白い空間であった時はぺらぺらと口説いてたじゃないか。その度胸はどこへ行ったんだ。
 HDDと一緒に庭にでも埋めたのか。


 それともエロ本と一緒に中学生に拾われたのか。
 返せ。そのエロ本は俺のだ。違う。度胸の方を返せ。


 なんて罪のない中学生を恨みつつ、俺は本当にここからどうすべきかを考えなければならない。
 いや、恨みつつはいらないわ。


 冷静になれ。
 頭を冷やせ。


 おっぱいだ。
 まずはおっぱいから行くべきだ。


 何故か閃いた。


「セレンさん」
「……なんでしょう」
「…………なんでもないです」
「…………」


 あああああああ!!


 なんでだよ!
 なんでもあるわ!!


 なんでもありすぎて逆になんでもないわ!
 逆になんねぇよ普通。
 無理だよ。


 おっぱい触っていいですか? とか聞ける訳ないじゃん。
 馬鹿なの俺。


 なんでいけると思ったのかが理解できない。


 別の手を考えろ緑崎 優斗。
 お前なら出来るだろ。
 なんでこういう時に限って何も出てこないんだ。


 くっ。
 自然な流れって何なんだ。
 自然ってそもそもなんだっけ。


 大地。海。スカイハイ。
 東京タワー。通天閣。


 違う。
 絶対違うのが最後三つくらいある。


 混乱している。この上なく混乱している。


 ちらりとセレンさんの方を向いてみた。
 目が合った。


 うっ。
 まじで心臓飛び出る。
 やばい。


 なんでこの人こんな可愛いんだ意味分からん。
 セレンさんは髪をほどいていた。
 寝るときだから当たり前だろう。


 だが、それがまたやばかった。 
 語彙力が無いのが問題だな。
 やばいんだよ。


 やば可愛い。
 新たな単語を生み出してしまった。


 やば可愛い。
 活用できる機会があったら活用していこうと思う。


 もう一度セレンさんを見る。
 目が合った。
 ジト目だった。


 どうしようどうしろと言うんだ。


 正直もうかなりやばい。
 色々と消耗してる。
 心臓動きすぎてて寿命が2年くらい縮まってそう。


 がばっと行ってしまおう。
 行動すれば多分なるようになるさ。


 なすがままになってくれるかは別として、なるようになるさ。
 多分。


 がばっ。


「っ……」
「――……」


 セレンさんの顔の横に手をついて、上へ覆い被さった。
 と言っても体は全然密着してないが。


 セレンさんの顔が強張っている。
 やはり嫌なのだろうか。


 嫌なら吹き飛ばすなり何なりしてるだろうし、そうでもないのかもしれない。


 若干顔が赤くなっているような気がする。
 暗くてよく分からない。


 近くで見るとやっぱりとんでもない美人だ。
 偏差値で言ったら300くらい。
 偏差値をどうやって計算するのか実は知らないけど。


 平均が50とすれば本当にそんな感じだ。
 いやそれでも足りない。
 100点満点中1000点みたいな中学生っぽい感想しか出てこない。


「おっぱいを触ります」
「えっ?」
「おっぱいを触ります」
「…………」


 もうやけくそだった。
 どうとでもなれ。
 どうにでもなれ。


「おっぱいを触ります」


 言うだけだった。
 触れない……
 なんという弱さ。
 弱腰さ。
 これはもう罪なレベルだ。


 裁かれる。
 閻魔様に地獄行きを言い渡される。


 と、セレンさんが俺の右腕を握った。
 え?


 何すんの、と思ったらそのまま自分の胸へ持っていった。


「えええええええええ」


 やべえええええええ!
 何がやべぇってやべぇしか出てこないやばさがやばくてまじヤバみを醸し出してる感じでやばい。


「……で、どうするんですか?」


 と、セレンさん。
 顔が真っ赤になってる。


 どうしましょう。
 どうするのが正解なんですか。


 あああああああ!!


「すみませんごめんなさい完全に調子こいてました許してください」


 俺は土下座していた。
 無理だった。


 無理でした。
 ごめんみんな。
 許してくれ。
 色々と。


 無理なんだよ……
 俺普通の高校生だもん。
 無理だよ。


 我慢出来ただけでも褒めてくれよ……


「……寝ましょう」


 セレンさんが言った。
 若干声が冷たい気がした。


 ……明日が怖い。

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