完璧な先輩の完璧じゃない部活

ノベルバユーザー235191

先輩が文化祭を楽しんでいる件

練習に練習を重ねついに本番当日。
僕達は全校生徒の前で披露することになっている。明日は一般公開が行われ地域の方やOBの方や様々な方が来られる。
そして今何をしているかというと、体育館で総合開会式を行っているのだ。
今は絶賛生徒会長である先輩が話をしているところだ。
「えー、今回のテーマは○○です。私達1人1人が輝き、素晴らしいものを作り上げて行きましょう!そして、明日の一般公開では、くれぐれもご来校された方々に失礼のないよう………」
うん、すっごい完璧モードだ。いつもの先輩とは大違いだ。はぁ、緊張するなぁー。全校生徒の前でだもんなー。いくら練習したからと言って間違えない自信はないし。
ま、ここでいくら言ったって時間は待ってはくれないし、なるようになるかな。頑張ろ。
「これで私からの話を終わります。」
あ、先輩の話終わった。はいはいとても素晴らしいお話でした。
それから各先生方の話や他の生徒会役員の先輩方の話があって、僕達の番が来た。
「天霧ー…これめちゃくちゃ緊張するな…。」
「やめてくださいよ…なんか僕もまた緊張して来たじゃないですか!」
先輩が変なこと言うからさっき越えたと思っていた緊張が戻ってきたじゃないか。
「さ、グズグズしてても変わりません。行きますよ!先輩、生きて帰って来れたら、焼肉食べに行きましょ…。」
「おい!天霧!それ死亡フラっ…。」
先輩が言い終わる前に僕は先輩の手を引っ張ってステージへと出た。



「……天霧、私がこの文芸部に入った時にはもう部員は1人もいなかった。1年の時から1人で寂しかったんだ。でも、2年の時に、お前が入ってきてくれた。私がどれだけ嬉しかったことかお前には分からないだろうな。去年何もしなかったのは、お前と仲良くなるためだったんだ。お前に嫌われてまた1人になるのが嫌だった。だから私は!今年は、今回は!最高の思い出を作りたい!お前と!…私は今年卒業する。最後の思い出作りなんだ。頼む。一緒に文化祭で何かしてくれないか!」




先輩はあの時涙を流しながらこう言った。
僕は先輩の気持ちを考えてあげられなかった。この1年間何をどう見てきたというのだろう。悔しさで胸がいっぱいだった。だからこそ僕はこの文化祭を、先輩との思い出を最高のものにするんだ!



「ふぅー…良かったですね。ミス無しでしたし、皆からの声も悪くなかったんじゃないですか?」
「……あぁ」
先輩は頭を下げそう僕に言った。
「え、どうしたんです?大丈夫ですか?」
「天霧ーー!!」
先輩は叫んで僕に抱きついてきた。
「ありがとう!ありがとう!こんな私のわがままを聞いてくれて!ありがとう!一緒に思い出作ってくれて!ありがとう!グスッ…グスッ…。」
先輩は涙を流しながら僕にひたすらに感謝の気持ちを伝えてきた。
「いえ、わがままはいつもですし、僕もいつも否定してばっかりですから。先輩とこうして最高の思い出を作れて良かったです。ありがとうございます。」
僕にとっても先輩にとってもこの文化祭は忘れられないものになったと思う。
良かった。本当に良かった。
本当にありがとうございました。先輩。


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