完璧な先輩の完璧じゃない部活

ノベルバユーザー235191

先輩が何故か張り切っている件

バン!
「天霧!文化祭だぁぁ!」
いつもの様に部室で短歌を書いていると、凄い勢いでドアを開けた先輩がそう叫んだ。
「いやいや、まだあと数ヶ月ありますよ?去年も何もしてなかったじゃないっすか。ていうかドア早く閉めてください。あと叫ばないで下さい。他の部活に迷惑がかかります。」
一体どうしたのだろう。去年は、文化祭など陽キャどもの自己満足だ!私達は何もしないぞ!…なんて言ってたのに。
そもそも文芸部には僕と先輩しかいないからするって言っても何も出来ないのだが。
まぁ先輩は何かをするって言ったわけではない。きっと今年も何もしないのだろう。
「天霧!文化祭だぞ!もっと盛り上がれよ!今年は私達も何かするぞ!あ!あれとかどうだ?メイドカフェ!どうだ!あ!それかバンドやろう!私ギターする!天霧ドラムやれ!」
うん…知ってた…先輩がそういう人って知ってた一瞬でも何もしないと思った自分を殴るどころか同情して慰めてあげたい。ドア開いたままだし、声でかいし、人の話聞いてないでしょ…。まぁ、それは置いといて…。
「あのですね!2人しかいない部活でどうやってメイドカフェやらバンドやらするんです!?普通に考えて無理でしょ!?メイドカフェってなんですか!?僕1人で厨房に立てと!?ていうか部室に厨房なんてありませんよ!?僕料理できませんよ!?
バンドは…出来ないことはないですけど無理です!僕楽器弾けないし、音痴だし!
ドラムとか叩いたことないし!そもそも先輩弾けるんですか!?楽器だけ弾いても面白みに欠けますよ!?」
ハァ、ハァ、ハァ、……はぁ…疲れた。
先輩は考えが甘過ぎる。どうしてこうも考えられないかな…。完璧はどこいったんですか。生徒会長。
「むむむ、私だって何も考えずに言っているわけではないぞ!!」
「……ほう、じゃ聞かせて頂きましょうか、先輩の考えを。」
どうせたいしたことは言ってこないだろう。僕はそう思っていた。
先輩に大したことは考えられないと。
先輩を馬鹿にしていたのだ。
この後僕を僕は本気で殴りたいと思ったのだった。
この頭ごなしに先輩の意見を否定した自分を。先輩が完璧な人だと忘れていた自分を。
そして先輩が僕と変わらないただ1人の人間であるということを分かっていたはずなのに、知っていたはずなのに、先輩をちゃんと見てあげれていなかった自分を。
僕は今後この出来事を忘れないだろう。いや、忘れることは出来ないだろう。

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