冷酷無比な殺し屋が一人の高校生となって異世界転生するとこうなる
鉱山の街ベリック
途中、魔物の襲撃に会ったが何とか無事で街に到着した。
移動に使った馬車からは、俺に言われた事をもう忘れたのか、スキップしながら鼻歌を歌う瑠璃川と、霧咲の事を心配そうに見つめ、肩を貸す神月と足を引きずる霧咲が出てくる。
鉱山の街ベリックは、巨大な円型に地面をくり抜いた所に、無数の坑道が開き、その付近で多量の鉱石を乗せたトロッコや体の大きい男達が、懸命に採掘したり、宿、武具屋、雑貨屋などが開かれてる街だ。
街に入ると、土や錆びた鉄の匂いが鼻を刺激する。流石鉱山の街と言われている事はある。
葛城「武器屋から頼まれた武器の箱は全部で六箱。丁度一人一箱だ。全員で持っていくぞ」
天野「此処もすっげぇ!」
神月「ちょっと!私は持つけど、勇人も持たなくちゃ行けないの?」
葛城「甘えるな。言っただろう?足手まといになるなら置いていくと」
霧咲「クソッ……良いんだ麗奈。持って行くさ」
神月「勇人……本当に大丈夫?」
俺は二人を黙って無視し、錆びた武器を買ってくれる工具店へ向かう。
工具店に付くと、辺りを見回すと、殆ど店が壁に埋め込まれる様な作り方をされている事が分かった。
正確には、壁をくり抜いた所に店を作り、入り口の扉を設けたのだろう。
工具店に入ると、中には小型から大型の鶴嘴やハンマーが壁に掛けられ、鉱石を掘る道具以外にも木工に必要な凡ゆる工具が揃っていた。
工具店の店員であろう男は入り口カウンターから横を向き、火花を散らしながら何を作っている様子だった。
天野「あの〜……」
天野は試しに声を掛けてみるが、集中しているのか一切声が届いていない。
葛城「おい。そこの老人!お届け物だ」
瑠璃川「うわストレート……」
すると俺の言葉に反応する様に、俺を鋭い目で睨みつけながらこちらを向いた。
老人の頭髪は茶色で薄く、眉毛、顎髭、髭という髭が全て剛毛で、顔がほぼ隠れている為、この時点でははっきり老人とは言えない。
しかし、腰の曲がり方と良い、皺々になった手足を見れば、かなり年老いているだろうと推測出来る。
工具の老人「んあ?……誰じゃ今儂の事ジジイ言ったのは……」
葛城「そんな事はどうでも良い。武器屋の男からこれを売ってくる様に言われてな」
俺は老人の前の机に錆武器の入った箱を乗せると、老人はため息を吐いて承諾する。
工具の老人「はぁ〜。またアイツから……どれ?全部見せてみ。買い取れる物かどうか調べなくちゃならん。こういう事こそ、事前に選別して欲しいんじゃがのぉ……」
葛城「あぁ、頼む。売られた金は全て俺達の物となる約束だ。頑張ってくれ」
工具の老人「はっは……じゃから、今日は見知らぬ客が来たという訳か……」
瑠璃川「えと、あの……何か手伝える事はありませんか!?」
瑠璃川は、カウンターに身を乗り出して、工具の老人に手伝いは無いかと聞く。
工具の老人「はっは……元気な若者じゃのぉ……済まぬが、錆武器の選別は素人が出来るものでは無い。況してや人に教えても出来る物でも無い。だからといって、他の手伝いは若者には、キツすぎるだろう」
工具の老人は、若者に出来る仕事は無いと気遣って瑠璃川を突き放そうとするが、瑠璃川は首を横に振る。
瑠璃川「いやいや、お年寄りの方がため息を吐く程、仕事をされているなんて、見過ごせないです!」
工具の老人「じゃから儂はジジイじゃ無いわい!」
瑠璃川「じゃあ、お爺さん!」
工具の老人「一緒じゃ!儂の事はローグと呼べ!全く、ため息は疲れのため息じゃあ無いんじゃがのぉ……お前さんの元気にため息が出てきてしまいそうじゃあ……。そこまで言うなら、お前さんにどれだけの体力があるか知らんが、言葉に甘えて手伝ってもらうとするかの」
ローグは瑠璃川の押しに負け、手伝いを頼む様だ。ならば俺は武器の選別中、この街の観光でもするか。
葛城「ローグ。それにはどれだけ時間が掛かる?」
ローグ「今日に限って多いからのぉ……まぁ、早くて一時間と言った所か……」
葛城「分かった。瑠璃川は、此処にいろ。この街は無数の坑道が繋がっている上に、深く広い。はぐれたら面倒だ」
瑠璃川「足手まといは置いて行くんじゃ無いの?」
葛城「自分がそう思うならいつでも離れてくれても良い。ただ、行方不明と役立たずは話が別だ」
瑠璃川「そ、そう……分かった……」
俺は工具店を後にし、後から足を引きずりながら来る神月と霧咲を横目に、天野と仁道に自由行動して良いと報告する。
天野「やっと自由時間だぁー!」
仁道「遠足気分かお前は……」
葛城「集合はこの工具店だ。自由時間は一時間。問題は起こすな」
天野「あったりめぇよ!流石に常識くらいは分かるっつーの」
葛城「なら良いが、俺らの常識はこの世界では伝わらない事もある事を注意しておけ」
天野「おう!」
さて、観光と言って自由時間を与えてしまったが、これと言ってやる事は無い。軽くでも歩き回るか……。
なにも目的もなく街を歩いていると、顔や体が煤で汚れ、破れた服をきた子供が、俺の服を掴み珍しそうに見つめる。
子供「わぁ……何これ……」
葛城「どうした?只の服だが?」
子供「こんな服見た事無いよ……僕の服だって薄い綿で出来ているのに、この服は綿でも無く、革でも無い……」
この子供の親は仕立て屋なのだろうか?確かに俺が元いた世界で殺し屋をやっていた時に来ていたこの服は特殊な素材で作られている。だからと言って、防弾や防炎といった効果は無いんだがな……。
葛城「よく分かったな……お前は仕立て屋か何かなのか?」
子供「したてや?僕のお父さんはね、服を作ってるんだ!良かったらお家に来る?」
葛城「……。知らない人間を容易に家に入れるのは良く無いぞ?」
子供「じゃあお兄さんは悪い人なの?でもね、僕のお父さんは強いぞぉ〜」
確かに言われて見ればそうだろう。この子供を除けば、どこを見ても、大人は皆、筋肉がしっかりついており、平均身長は、二百センチを越えているだろう。
流石の俺でも、あれ程の体を持つ者に殴られでもすれば厳しいだろう。
葛城「そうか……なら連れてって貰おうか」
子供「うん!」
鉱山の街ベリックは、地面をそのままくり抜かれた様な風景で俺が入ってきた地上から、壁を沿う様に螺旋状に下へ下へと道が伸びている。
地面は然程綺麗に舗装されている訳では無いが、子供は器用に高めの段差を降りて行き、俺をこっちだよと手招きしながら案内する。
俺は、凸凹した道を歩き慣れていない訳でも無いが、螺旋状に続く道の中央は、最深部の地面までガードも無くガラ空きの為、足を滑らせれば命は無いだろう。
親の家に着くと子供はここだよと、家を指差す。
子供の指差す先は、土の壁に埋め込まれた一枚の扉だ。
葛城「ここか?どれも見分けがつかないのに、よく分かるな……」
子供「えへへ……でも間違えて迷子になる事は何度もあるよ……。だからお父さん言われたんだ。此処から斜め上に見えるアレクの武器店を線で真っ直ぐ結んだ場所だって」
なるほど……この街の住民の家は、特に名札が掛けられている事もなく、ただ壁に扉が貼り付けられており、他の家の扉とも違いが分からない。
そこで自分の家を分かりやすくする唯一の方法は、自分の家の対角線上に何があるかと言う方法で覚えている様だ。これは、円柱状に掘られたこの街の特有の文化に近い物がある。
子供「じゃあ入ろっ」
葛城「あぁ」
子供は扉のドアノブを背を伸ばし両手で引っ張り、中に入ると同時に大きな声でただいまと叫ぶ」
俺も続いて中へ入ると、年齢は五十くらいだろうか?子供と同じ様なはち切れた茶色の服をきて、顎に髭を生やした大男が、おかえりと言いながら、子供を高く持ち上げる。
男「おかえり!サム!」
葛城「その子供に誘われてな。邪魔する」
男「サム、また新しいお客さんを連れて来たな?」
サム「うん!だってこの人珍しい服着てるんだよ!」
サムは抱っこされながら俺に指を指す。
男「へぇ……?」
葛城「動きやすい素材なだけだ。特にこれと言って防護性は無い」
俺の着る服は、防護性は無いと言っても、若干の防護性はある。それも意味があるのか分からない程度で、破れにくい、燃えにくい、擦り傷程度なら衝撃を吸収してくれる。と言った感じだ。
男「サム。お前は良い目をしているな……!君の服は改良の必要も無い程素晴らしいものじゃ無いか……」
葛城「は……?」
男「はっはっは!済まないな。君の言った通り、防護性は無いに等しいと見えるが、それ以上に要らぬ要素が無く、まるで本当のピクニック用の服だな!」
葛城「あ、あぁ……」
男「さて、サム。この人は大事な話があるようだから、自分の部屋へ行っていなさい」
サム「はーい!」
サムの親であろう男は、わざとサムを部屋へ連れて行き、俺の考えを読もうとする。
男「はは……特に話す事もないが、今、話題を思いついた顔をしているな?」
葛城「なんだその無理矢理な推測は……。まぁ、答えられるなら、聞かせて貰おうか」
別に脅迫している訳では無い。俺の聞きたい事は至って単純。この街の事が知りたいだけだ。
葛城「あー先ずお前の名前から聞こうか」
パルト「ん?あ、あぁ。俺の名前はパルトだ。この街ベリックで仕立て屋を親子二人営んでいる。小さな店だ」
無意味な真剣な表情で顔を強張らせパルトを和らげる為、俺は正直な質問を投げる。
葛城「俺は葛城。質問はただのこの街の観光目的だ。
パルト「何だよ……たったそんな事か……」
葛城「俺は、勇者霧咲って男を連れて、旅をしていてな。何か役立てそうな情報があれば、小さな事でも教え欲しい」
パルト「へぇ〜勇者ねぇ……。そうだな……いきなり観光とは外れちまうが、アンタが腕に自信があるというなら、話しても良いかもな」
俺が勇者の味方だと分かったパルトは目を細める。
葛城「早速助けが欲しいという事か?お前らだけでも腕っぷしは相当あると思うが……」
パルト「いや、そういう問題じゃねぇんだが……単刀直入にいうと、ここ最深部の坑道を訳ありで封鎖していてな。その訳ありってのが、魔物何だよ……アンタが何処を目指しているのか知らねえが、俺たちにとって彼処の坑道は命綱と言っても過言じゃねぇんだ。その坑道の先は、大型採掘場があり、金属加工が盛んな街ギアリッグって街に直結してんだ」
葛城「つまりそれを解放して欲しいと?」
パルト「話が速ぇのは助かるが、一度その坑道から溢れ出る魔物に俺たちでさえも、壊滅状態まで追いやられたもんでな。ははは……」
良いだろう。まだ魔王を倒すのに圧倒的にレベルが足りない俺達にとっては、良い特訓になりそうだ。
だが俺は一つパルトに条件を付ける。
葛城「良いだろう。だが一つ条件がある。それは……報酬だ。俺は勇者一行と言えど、個人でこんな事はやろうとはしない。この街の最も偉い奴と話がしたい」
パルトは俺の条件を聞くと、ニヤリと笑って、ベリックの責任者の場所を俺に教えた。
移動に使った馬車からは、俺に言われた事をもう忘れたのか、スキップしながら鼻歌を歌う瑠璃川と、霧咲の事を心配そうに見つめ、肩を貸す神月と足を引きずる霧咲が出てくる。
鉱山の街ベリックは、巨大な円型に地面をくり抜いた所に、無数の坑道が開き、その付近で多量の鉱石を乗せたトロッコや体の大きい男達が、懸命に採掘したり、宿、武具屋、雑貨屋などが開かれてる街だ。
街に入ると、土や錆びた鉄の匂いが鼻を刺激する。流石鉱山の街と言われている事はある。
葛城「武器屋から頼まれた武器の箱は全部で六箱。丁度一人一箱だ。全員で持っていくぞ」
天野「此処もすっげぇ!」
神月「ちょっと!私は持つけど、勇人も持たなくちゃ行けないの?」
葛城「甘えるな。言っただろう?足手まといになるなら置いていくと」
霧咲「クソッ……良いんだ麗奈。持って行くさ」
神月「勇人……本当に大丈夫?」
俺は二人を黙って無視し、錆びた武器を買ってくれる工具店へ向かう。
工具店に付くと、辺りを見回すと、殆ど店が壁に埋め込まれる様な作り方をされている事が分かった。
正確には、壁をくり抜いた所に店を作り、入り口の扉を設けたのだろう。
工具店に入ると、中には小型から大型の鶴嘴やハンマーが壁に掛けられ、鉱石を掘る道具以外にも木工に必要な凡ゆる工具が揃っていた。
工具店の店員であろう男は入り口カウンターから横を向き、火花を散らしながら何を作っている様子だった。
天野「あの〜……」
天野は試しに声を掛けてみるが、集中しているのか一切声が届いていない。
葛城「おい。そこの老人!お届け物だ」
瑠璃川「うわストレート……」
すると俺の言葉に反応する様に、俺を鋭い目で睨みつけながらこちらを向いた。
老人の頭髪は茶色で薄く、眉毛、顎髭、髭という髭が全て剛毛で、顔がほぼ隠れている為、この時点でははっきり老人とは言えない。
しかし、腰の曲がり方と良い、皺々になった手足を見れば、かなり年老いているだろうと推測出来る。
工具の老人「んあ?……誰じゃ今儂の事ジジイ言ったのは……」
葛城「そんな事はどうでも良い。武器屋の男からこれを売ってくる様に言われてな」
俺は老人の前の机に錆武器の入った箱を乗せると、老人はため息を吐いて承諾する。
工具の老人「はぁ〜。またアイツから……どれ?全部見せてみ。買い取れる物かどうか調べなくちゃならん。こういう事こそ、事前に選別して欲しいんじゃがのぉ……」
葛城「あぁ、頼む。売られた金は全て俺達の物となる約束だ。頑張ってくれ」
工具の老人「はっは……じゃから、今日は見知らぬ客が来たという訳か……」
瑠璃川「えと、あの……何か手伝える事はありませんか!?」
瑠璃川は、カウンターに身を乗り出して、工具の老人に手伝いは無いかと聞く。
工具の老人「はっは……元気な若者じゃのぉ……済まぬが、錆武器の選別は素人が出来るものでは無い。況してや人に教えても出来る物でも無い。だからといって、他の手伝いは若者には、キツすぎるだろう」
工具の老人は、若者に出来る仕事は無いと気遣って瑠璃川を突き放そうとするが、瑠璃川は首を横に振る。
瑠璃川「いやいや、お年寄りの方がため息を吐く程、仕事をされているなんて、見過ごせないです!」
工具の老人「じゃから儂はジジイじゃ無いわい!」
瑠璃川「じゃあ、お爺さん!」
工具の老人「一緒じゃ!儂の事はローグと呼べ!全く、ため息は疲れのため息じゃあ無いんじゃがのぉ……お前さんの元気にため息が出てきてしまいそうじゃあ……。そこまで言うなら、お前さんにどれだけの体力があるか知らんが、言葉に甘えて手伝ってもらうとするかの」
ローグは瑠璃川の押しに負け、手伝いを頼む様だ。ならば俺は武器の選別中、この街の観光でもするか。
葛城「ローグ。それにはどれだけ時間が掛かる?」
ローグ「今日に限って多いからのぉ……まぁ、早くて一時間と言った所か……」
葛城「分かった。瑠璃川は、此処にいろ。この街は無数の坑道が繋がっている上に、深く広い。はぐれたら面倒だ」
瑠璃川「足手まといは置いて行くんじゃ無いの?」
葛城「自分がそう思うならいつでも離れてくれても良い。ただ、行方不明と役立たずは話が別だ」
瑠璃川「そ、そう……分かった……」
俺は工具店を後にし、後から足を引きずりながら来る神月と霧咲を横目に、天野と仁道に自由行動して良いと報告する。
天野「やっと自由時間だぁー!」
仁道「遠足気分かお前は……」
葛城「集合はこの工具店だ。自由時間は一時間。問題は起こすな」
天野「あったりめぇよ!流石に常識くらいは分かるっつーの」
葛城「なら良いが、俺らの常識はこの世界では伝わらない事もある事を注意しておけ」
天野「おう!」
さて、観光と言って自由時間を与えてしまったが、これと言ってやる事は無い。軽くでも歩き回るか……。
なにも目的もなく街を歩いていると、顔や体が煤で汚れ、破れた服をきた子供が、俺の服を掴み珍しそうに見つめる。
子供「わぁ……何これ……」
葛城「どうした?只の服だが?」
子供「こんな服見た事無いよ……僕の服だって薄い綿で出来ているのに、この服は綿でも無く、革でも無い……」
この子供の親は仕立て屋なのだろうか?確かに俺が元いた世界で殺し屋をやっていた時に来ていたこの服は特殊な素材で作られている。だからと言って、防弾や防炎といった効果は無いんだがな……。
葛城「よく分かったな……お前は仕立て屋か何かなのか?」
子供「したてや?僕のお父さんはね、服を作ってるんだ!良かったらお家に来る?」
葛城「……。知らない人間を容易に家に入れるのは良く無いぞ?」
子供「じゃあお兄さんは悪い人なの?でもね、僕のお父さんは強いぞぉ〜」
確かに言われて見ればそうだろう。この子供を除けば、どこを見ても、大人は皆、筋肉がしっかりついており、平均身長は、二百センチを越えているだろう。
流石の俺でも、あれ程の体を持つ者に殴られでもすれば厳しいだろう。
葛城「そうか……なら連れてって貰おうか」
子供「うん!」
鉱山の街ベリックは、地面をそのままくり抜かれた様な風景で俺が入ってきた地上から、壁を沿う様に螺旋状に下へ下へと道が伸びている。
地面は然程綺麗に舗装されている訳では無いが、子供は器用に高めの段差を降りて行き、俺をこっちだよと手招きしながら案内する。
俺は、凸凹した道を歩き慣れていない訳でも無いが、螺旋状に続く道の中央は、最深部の地面までガードも無くガラ空きの為、足を滑らせれば命は無いだろう。
親の家に着くと子供はここだよと、家を指差す。
子供の指差す先は、土の壁に埋め込まれた一枚の扉だ。
葛城「ここか?どれも見分けがつかないのに、よく分かるな……」
子供「えへへ……でも間違えて迷子になる事は何度もあるよ……。だからお父さん言われたんだ。此処から斜め上に見えるアレクの武器店を線で真っ直ぐ結んだ場所だって」
なるほど……この街の住民の家は、特に名札が掛けられている事もなく、ただ壁に扉が貼り付けられており、他の家の扉とも違いが分からない。
そこで自分の家を分かりやすくする唯一の方法は、自分の家の対角線上に何があるかと言う方法で覚えている様だ。これは、円柱状に掘られたこの街の特有の文化に近い物がある。
子供「じゃあ入ろっ」
葛城「あぁ」
子供は扉のドアノブを背を伸ばし両手で引っ張り、中に入ると同時に大きな声でただいまと叫ぶ」
俺も続いて中へ入ると、年齢は五十くらいだろうか?子供と同じ様なはち切れた茶色の服をきて、顎に髭を生やした大男が、おかえりと言いながら、子供を高く持ち上げる。
男「おかえり!サム!」
葛城「その子供に誘われてな。邪魔する」
男「サム、また新しいお客さんを連れて来たな?」
サム「うん!だってこの人珍しい服着てるんだよ!」
サムは抱っこされながら俺に指を指す。
男「へぇ……?」
葛城「動きやすい素材なだけだ。特にこれと言って防護性は無い」
俺の着る服は、防護性は無いと言っても、若干の防護性はある。それも意味があるのか分からない程度で、破れにくい、燃えにくい、擦り傷程度なら衝撃を吸収してくれる。と言った感じだ。
男「サム。お前は良い目をしているな……!君の服は改良の必要も無い程素晴らしいものじゃ無いか……」
葛城「は……?」
男「はっはっは!済まないな。君の言った通り、防護性は無いに等しいと見えるが、それ以上に要らぬ要素が無く、まるで本当のピクニック用の服だな!」
葛城「あ、あぁ……」
男「さて、サム。この人は大事な話があるようだから、自分の部屋へ行っていなさい」
サム「はーい!」
サムの親であろう男は、わざとサムを部屋へ連れて行き、俺の考えを読もうとする。
男「はは……特に話す事もないが、今、話題を思いついた顔をしているな?」
葛城「なんだその無理矢理な推測は……。まぁ、答えられるなら、聞かせて貰おうか」
別に脅迫している訳では無い。俺の聞きたい事は至って単純。この街の事が知りたいだけだ。
葛城「あー先ずお前の名前から聞こうか」
パルト「ん?あ、あぁ。俺の名前はパルトだ。この街ベリックで仕立て屋を親子二人営んでいる。小さな店だ」
無意味な真剣な表情で顔を強張らせパルトを和らげる為、俺は正直な質問を投げる。
葛城「俺は葛城。質問はただのこの街の観光目的だ。
パルト「何だよ……たったそんな事か……」
葛城「俺は、勇者霧咲って男を連れて、旅をしていてな。何か役立てそうな情報があれば、小さな事でも教え欲しい」
パルト「へぇ〜勇者ねぇ……。そうだな……いきなり観光とは外れちまうが、アンタが腕に自信があるというなら、話しても良いかもな」
俺が勇者の味方だと分かったパルトは目を細める。
葛城「早速助けが欲しいという事か?お前らだけでも腕っぷしは相当あると思うが……」
パルト「いや、そういう問題じゃねぇんだが……単刀直入にいうと、ここ最深部の坑道を訳ありで封鎖していてな。その訳ありってのが、魔物何だよ……アンタが何処を目指しているのか知らねえが、俺たちにとって彼処の坑道は命綱と言っても過言じゃねぇんだ。その坑道の先は、大型採掘場があり、金属加工が盛んな街ギアリッグって街に直結してんだ」
葛城「つまりそれを解放して欲しいと?」
パルト「話が速ぇのは助かるが、一度その坑道から溢れ出る魔物に俺たちでさえも、壊滅状態まで追いやられたもんでな。ははは……」
良いだろう。まだ魔王を倒すのに圧倒的にレベルが足りない俺達にとっては、良い特訓になりそうだ。
だが俺は一つパルトに条件を付ける。
葛城「良いだろう。だが一つ条件がある。それは……報酬だ。俺は勇者一行と言えど、個人でこんな事はやろうとはしない。この街の最も偉い奴と話がしたい」
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