冷酷無比な殺し屋が一人の高校生となって異世界転生するとこうなる

Leiren Storathijs

魔物の能力

鉱山の街ベリックに向けて出発する前に、トラブルがあったが漸く馬車を出発させた。

全員、相手は化け物と言えど俺以外戦闘未経験の為、使えない仲間が3人。護衛は俺と天野と仁道の3人でやる事にした。但し、遠距離魔法と能力上昇魔法を持つ二人が馬車の中で休んでいる為、勿体ないとは思っている。しかし力より俺は、命を優先する。

葛城「馬車の者よ、ベリックまではどれだけ時間が掛かるんだ?」

馬車の男「あぁ、今君達の歩く速さに合わせてるからね。馬車に掴まってくれれば全力で走って、2時間程かな?途中、鉱山抜けるからもっとかかるかも知れないけど……」

葛城「そうか……なら全力で頼む。天野と仁道、追いつけないのなら馬車に掴まれ。走るぞ」

天野「んー、長距離走も苦手では無いけれど2時間全力疾走は流石に無理……掴まるわ」

仁道「俺様は体の鍛え方が違うからな!全然飛ばせ!」

葛城「だそうだ」

馬車の男「あいよ!ちゃんと付いて来いよ!」

馬車は、俺と仁道の返事を聞くと、鞭で馬を精一杯強く叩き、一気にスピードを上げる。因みに、全力に走る事に特に理由は無い。せっかく馬車で走っているのだから、通常ペースでより馬車のペースの方が良いだろうと思っただけの事だ。

馬車は思いの外早く、辛うじて追いついている。俺は走りながら遠距離でも、若干精度は落ちるが、クロスボウで援護が可能だ。しかし、鍛えていると言っていたのにも拘らず、余裕の表情で俺の後ろを走る仁道がいる。

流石に大鉈のリーチでは、クロスボウのリーチには勝てないだろう。もう少し前に出て欲しいと俺は指示する。

葛城「仁道!そんな余裕があるなら前を走れ!その距離じゃ前衛になっていないぞ!」

仁道「あぁ?俺は後衛のつもりなんだが?この大鉈での広範囲攻撃は、後衛に最高だと思うぜ?」

仕方がない。遠距離こそ後衛が最適だと俺は思うが、大人数相手の喧嘩でも余裕に叩き潰すほどの戦力の持ち主だ。前の村で逃げた盗賊を滅多に殺しにした事がそれを証明している。前衛も後衛も適応していると言えるのだろう。それで後衛に行くと言うなら、俺は前衛に行こう。

この世界の魔物に物理が効くか分からないが、最低限の独自の護身術は心得ている。独自と言って、何故学んだものでは無いかと言うと、使い物にならないからだ。

大体の武術から学ぶ護身術は、特定の人数、条件が合わなくては真価を発揮出来ない。それも相手は人間では無く化け物だ。どんな武術においても、化け物相手は想定して居ないだろう。人型や犬型なら何とか対抗出来るかもしれないが、最初の方に出会ったスライムという粘液物に関しては、対処法が無い。

況してや飛行型の化け物もいる可能性だってある。サバイバルではコウモリの対処法などはあるが大きさ故に、サバイバル術では限界があるだろう。

だから独自なのだ。俺の独自護身術とは、単なる『想定』だ。凡ゆる場面を想定し、どの様な行動を取るべきか事前に考える。しかしそれでも予期せぬ事態と言うものは必ず起こる。マンモスの大群や超巨大の化け物が来たらどうするべきか?そんなもの想定も出来ないし、会って見なくては、絶対分からない。そう言う時こそ臨機応変に対応するのだ。まぁ、死ぬ事も想定に置いてな……。

そんな事を考えていると、遂に魔物の襲撃が来る。

仁道「葛城ッ!前を見ろ!」

葛城「分かっている!」

目の前から襲ってくる魔物は2匹。コウモリの様な大きな翼を背中から左右に2枚生やす飛行型の魔物と、馬と人間の体が同化したケンタウロスの様な魔物だ。

飛行型は今にも突進する姿勢をとり足を前に突き出している。ケンタウロスは、弓と剣を自在に操り、今は剣を構えている。

作戦はこうだ。

葛城「仁道!後衛は頼む!俺は飛行型を突進の勢いでクロスボウで貫く!天野は出来ればでいい。突っ込んでくる馬の足を斬れ!失敗したら俺が殴るかして体制を崩すから後ろに流れてきたら仁道はぶん殴れ!」

天野、仁道「「分かった!」」

俺は指示するとすぐ様クロスボウを飛行型の魔物に向け矢を発射する。これが外れれば即作戦失敗となり、馬車は吹き飛ばされるだろう。

放たれた矢は飛行型の魔物は回避行動を取ろうと体を捻り傾けるが、ギリギリ片方の羽を貫通し、穴を開ける。飛行型の魔物は空中で蹌踉めき、穴の空いた羽の所為で、体制を立て直すのに時間が掛かる。

俺がクロスボウを発射したと同時に、ケンタウロスが馬車に向かって加速する。

葛城「今だ天野!」

天野「うおおおりゃああ!」

天野は突進してくるケンタウロスに向かい合い、走りながらケンタウロスの足元にスライディング中に剣を振る。

しかし、ケンタウロスは華麗にジャンプで避ける。ならばもう一つの方法だ。

攻撃に失敗する天野を見ると続いて、俺は高くジャンプし、ケンタウロス顔面目掛けて跳び蹴りをする。しかし、それもまた体を横に傾ける事ですんなりと避けられる。

ここで俺は、この世界の化け物は、人間や動物よりも遥かに反射神経と身体能力が高い事を確信する。

突進の姿勢を取っていた飛行型の魔物には、咄嗟に飛んでくる矢に対し緊急回避行動を取られ、馬車に向かって猛スピードで走ってくるケンタウロスも2連続ともなる攻撃を華麗に避ける。

人間の様な知能は持っていないものの、俺たちに出会うまでは過酷な世界で生きていたと言う事になる。人間との喧嘩では無く、いつ死んでもおかしくないと言う状況を生きて来たから、ここまでの身体能力が発揮出来るのだろう。

俺は跳び蹴りから着地後仁道に叫ぶ。がもう遅い様に見えた。

葛城「仁道ッ!」

ケンタウロスは今馬車の真横を通り過ぎる瞬間で、剣で馬車を薙ぎ払う瞬間だった。

その剣が馬車に当たる瞬間、仁道はゴルフクラブの如く両手で大鉈をフルスイングし、ケンタウロスの馬と人間の体の丁度真ん中辺りを目掛けて、半身を一気に切断する。

仁道「させるかああぁああ!!!」 

半身真っ二つに切断され、勢い余った馬の胴体は、仁道に向かってぶつかりそうになっていた。

馬の足による蹴りはどんな耐久力を持つ人間でも一撃で吹き飛ぶ程の力を持つとされる。これを食らえば仁道でさえも致命傷となるだろう。

そう仁道は無理かと思うと、ぶつかる瞬間にもう一度大鉈を上に振り上げ、仁道は自慢の大鉈で、馬の胴体を一刀両断。更に真っ二つに斬り裂き、勢いを受け流す。

仁道「どおおりやぁあ!!」

葛城「流石だな」

仁道「この俺様にタイマンで戦おうなんざ2年早え!」

天野「2年って微妙な数字だなぁ……」

最後に体制を立て直した飛行型の魔物は、穴のいた羽で辛うじて滞空するも再度突進の姿勢を取る。

俺は、直ぐに様また、クロスボウを飛行型の魔物に向け、矢を発射する。

飛行型の魔物は又しても、回避行動を取ろうとするが、上手く体を動かせず、矢は回避行動を取ろうと体を捻った飛行型の魔物の脇腹を貫通する。

矢を貫通された魔物は、奇声をあげながら、機動力を完全に失い、垂直に落下、地面と激突する。

このお陰で馬車は勢いを落とさず、走り続ける事が出来た。その後ろを直ぐに追いかけ、天野は息を切らしながら馬車に飛び掴まる。

俺は馬車の真横まで追い付くと、馬車の中を確認する為に、耳を澄ます。

馬車の中では、俺に両足を撃たれた霧咲の呻き声と、神月の心配する声が聞こえた。

相変わらずの2人だな……。霧咲に関しては、両足の脛を撃っただけなので、応急処置で包帯でも巻いて置けば、松葉杖を突くだけで充分だろう。と言うより、街に着いたら早めに直って貰わなければ困る。勇者なる物が、両足の怪我で歩行不能など笑えぬ話だ。

変わって瑠璃川は、仁道の活躍を見て、感動の声を上げる。

瑠璃川「仁道君凄ーい!!」

馬車の後ろから顔を出し、仁道を称えるわ馬車の中で拍手する音が聞こえる。

仁道「へへっ!こんなの普通だぜ!」

仁道は満更でもない様だ。男に向かってはブチ切れる癖に、女には弱いと言う事か。例え脳筋バカであろうが、単純さは変わらない様だ。

魔物の襲撃をやり過ごし、暫く経つと、漸く鉱山の街ベリックに到着した。

馬車の男「着いたぜ!ほいこれ護衛の報酬」

葛城「ありがとう。確かに受け取った」

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