冷酷無比な殺し屋が一人の高校生となって異世界転生するとこうなる

Leiren Storathijs

殺し屋の精神

霧咲「ふぅ……漸く街に着きましたね。普段はピクニックとかやらず、勉強に没頭していたので、すぐに疲れてしまいます……」

葛城「ならもっと体力をつけた方が良いな」

霧咲「さて、街には着いたけど……」

葛城「まずは武具を整えよう。王国から支給された装備では心許ないだろう。この袋には100万入ってる十分だろう。これで全員の装備を買い換えろ」

この世界においてレベルの概念がある以上、レベルを上げて自身を強化する事も大事だが、それ故に急げば、死ぬのが早くなるだけだ。常に万全な体制でいる事は、生存率を高める方法として最も最適だ。

霧咲「100万……なんて重たいんだ……」

霧咲は、俺の金袋を受け取ると、急に目の前を走り去る者に、金袋を盗まれた。

霧咲「お、おい!お前!」

葛城「不注意だな……」

霧咲「それより追いかけるぞ!」

霧咲は必死に盗人を追いかけるが、先程勉強以外に運動した事が無い所為か、全く距離を詰められず、逃げられしまった。

霧咲「くっ……くそ……体力が……無さすぎる」

そう息切れしていると、天野が物凄い勢いで、霧咲を通り過ぎ、盗人を引き続き追いかける。

天野「待てやこん畜生があああ!!勉強は出来ねえけど、運動部なんめじゃねぇぞコラァあああ!」

霧咲「はは……そういや天野君は運動部だったね……確か学年で一番では無いが、そこそこ早かった筈だ……ふーっ」

葛城「さて、後を追うぞ……彼奴の性格上、捕まえられても返り討ちにされれば、逃げてくる事は間違いない」

俺は後を追うと、路地裏の角で身を隠す。

霧咲「おい、葛城君?何しているんだい?」

葛城「あれを見ろ」

俺の身を隠す路地裏の先に見えるのは、盗人のボスらしき者とその部下集団と、ボコボコにされる天野の姿だった。

盗人A「へへっ、自分から罠にかかるとか馬鹿じゃねぇの?」

盗人ボス「ふん!釣れたのは男か!まぁ良い、締め上げて、俺達に逆らえない様にしろ!」

盗人B「へい!」

天野「お、俺は……剣士何だぞ……」

盗人ボス「だからどうした?この数相手じゃ何も出来ねえだろうがクソ野郎」

天野「へっ……クソはどっちだか……」

盗人ボス「そんな減らず口、今すぐ叩けねえ様にしてやるから、今は黙ってろ!」

盗人ボスは、縛り上げられた天野の腹を思いっきり、何度も殴る。

霧咲「葛城君!何をぼーっとしているんだ!早く助けないと!」

葛城「あぁ、そうだな……俺が全部片付けるお前は見てろ」

霧咲「な、何を言ってるんだ!僕も行かないと!」

葛城「邪魔だ。行くぞ」

俺は徐ろに銃を取り出し、路地裏の先に行くと、すぐに盗人の部下集団を全員一瞬で一人ずつ頭を確実に撃ち抜く。

盗人A「ぎゃあああ!」

盗人ボス「何事だ!」

俺はボスに銃を向けると、脅しを始める。

葛城「よう。俺の仲間がお世話になったな?俺は個人で殺し屋をやってる葛城だ。殺し屋の金を盗むとはいい度胸だ」

盗人ボス「ガハハ!それで脅しになっているつもりか?」

そう言うと、俺が入って来た路地からぞろぞろと下っ端の増援が入って来るのに気付く。

葛城「残念ながらお前も今の状況から増援を呼ぶのは間違っている。今お前は、額に銃を向けられているんだぞ?つまりこの次に起こる事は?こう言う事だ」

俺は何の躊躇いも無く、盗人のボスの頭を撃ち抜くと、倒れる天野の腰から剣を抜き、ボスの首を切断する。

霧咲「ちょ、葛城君!?何を……ゔっ……」

後ろから見つめる霧咲は吐きそうになりながら口を押さえるが、俺は切断した首を増援の下っ端に見せる。

葛城「全員コレを良くみろ。お前らのボスの首だ。もしこれ以上の反抗を続けるなら、全員の頭も撃ち抜き撥ねてやろう。どうした?来ないのか?」

盗人B「う、嘘だろ?コイツ、イかれてるッ!逃げろ、逃げろおおお」

増援は悲鳴を上げて全員バラバラに逃げて行った。

全く以っての想像通りだ。ボスは銃を向けられても恐れないとはなかなかの度胸だった。しかし増援は、所詮下っ端。ボスに忠誠を成し、ボスの命令で働く者達。だがそのボスが居なくなれば、ボスの下っ端という肩書きは消え、普通の人間と同じになる。

俺は何故増援が下っ端と分かったか?それは、このような状況において例えナンバー2が居たとしても、増援で呼ぶ意味が無いからだ。

ボスが危機的状況の時、ナンバー2が増援で来たとしても、その場合、ボスとナンバー2順番に殺されて終わる。つまり、ボスが死ぬ前に数と言う物で、相手を圧制しようと考える訳だ。

ここまでは間違ってはいない。しかし、その先を想定せずまで勝ち確定だと相手は思っていたようだ。

予測という物はあくまでも想像であり、予知では無い。なので答え合わせする行動力が必要となる。

では何がアイツらは間違っていのか。それは増援を呼ぶタイミングだ。ボスが殺されても強い忠誠心を持つ彼らは俺に怒り、一斉に攻めてくるだろう。しかし状況が状況だ。

盗賊の奴らは、強盗、殺害を生業としているが、殺すと言っても首を斬り落とす程残酷な事はしない。いや実行出来ない。それは殺し屋でも兵士でも無い、一般人が盗みの為に集まった単なる弱小組織だからだ。

つまり、首を斬り落とされた死体をどう見るか?それだけで無残な死体を見慣れぬ盗賊達は恐怖し、逃げるのだ。

葛城「終わったな……」

天野「うっはぁ……俺の剣が血でベトベトだよ……」

霧咲「ゔっ……駄目だ!耐えられない!」

霧咲は、首なし死体を見て、皆んなの見えない路地に入ると、呻き声と共に、大量の水音を路地の中に響き渡らせる。

後から追いついた神月と瑠璃川共は、その光景を見て神月は心配そうに霧咲の方へ駆けつけ、瑠璃川は圧巻される。

神月「勇人大丈夫!?」

瑠璃川「うわぁ……これ何があったの……?」

霧咲が落ち着いた後に、俺は後から来た神月と瑠璃川に状況を説明した。そこで霧咲は、俺に一つ質問をする。

霧咲「葛城君……君がボスの首を斬り落とした瞬間、度肝を抜かれたよ……一体なぜそんなに度胸があるんだい?例え殺しに慣れてる殺し屋である君でさえも、流石にそこまでは少しは抵抗があるだろうに」

葛城「いいか霧咲。殺しにおいて手段を選んでいる時間は無い。躊躇いや悩む事で、もし手遅れになれば形成逆転、返り討ちに合う可能性だってある。俺に抵抗や躊躇いは無い」

殺し屋は殆ど者が依頼を受けてやっているが、俺は依頼を自分で探してやっている。金を事前に受け取るのでは無く、金は後から貰う。

自分の身勝手な判断で相手に制裁を下し、依頼人から感謝の意として報酬を貰う。そのような契約を決めている以上、自分が死んでしまっては、勝手に喧嘩を売られた依頼人にとっては最悪でしか無い結果しか招かない。そうならない様にするには、躊躇無く実行しなければならない。

霧咲「た、確かに言われてみればそうだが……じゃあ何故、君の顔はいつも無表情で、まさか殺しに対して何とも思わないなんて言わないだろうね?」

俺は霧咲の当たり前の返答を待つかの様な質問に冷たく言い放つ。

葛城「……無い……。お前は俺がどれだけ人を殺めているのか知らないのか?俺は殺し屋を始めてからもう20年は経つ。既に100人は余裕に超える。それだけ人を殺めて、まだ人を殺す事に関して、無駄な感情を抱く必要があるのか?」

霧咲「20年って……君は何歳なんだ?僕達と同じ高校生では無いのか?」

葛城「俺は28歳だ。お前らの高校へは10歳若くなって、転入生となって入った事になっている。その時お前らにとっての俺は単なる18歳の高校生だか、本来は28の大人だ。俺は8歳の頃に殺し屋を始めた」

霧咲は俺の話を理解すると、哀れみの目で俺を見つめる。

霧咲「8歳ってそんな……君はもう感情が無いんだね……8歳の頃の記憶が薄れる程に感情を押し殺しには押し殺し。今には、感情を必要としない精神に……」

俺は同情は嫌いだ。俺の感情を勝手読み、勘違いするなど言語道断。俺は静かに霧咲へ銃を向ける。

葛城「そろそろその口を閉じろ。頭を吹っ飛ばされたくなければな」

霧咲「っ……す、済まない。少し踏み込み過ぎた様だ……」

俺と霧咲の間に沈黙が生まれ、空気が重くなる。そこで天野が間に入り込み、場を和らげる。

天野「はいはいはーいそこまで!こんな空気俺には耐えられねえ!取り敢えず、葛城。助けてくれてありがとな!それに比べ霧咲はあの程度で吐いてんじゃねぇーよ……」

霧咲「あの程度って……君はゲームのやり過ぎだ。とうとう現実との見分けも付かなくなったのか?」

瑠璃川「あはは……まぁ、これで一件落着だねっ。お金も取り返した事だし。あたし達の武具を整えるんでしょ?葛城先生っ?」

葛城「いつから俺はお前らの教師になった?」

神月「色んな事知ってるし、それに私達より遥かに歳上。もう先生でいいんじゃないかしら?」

葛城「良いだろう。ならばこれからお前らが俺を教師と見るなら、もう何も教える事は無い。自分の頭で考えろ。最初そう言ったよな?」

瑠璃川「すすすいません……今後とも協力お願いします。葛城さん」

葛城「それで良い。俺は貴様らがいつ死んでも俺には関係無い。魔王を倒す為には、霧咲が必要不可欠だからな。死んでも担ぎながら魔王の元へ行くつもりだ」

霧咲「僕は死んでも死に切れないと……これは素直に葛城君とはいつも通り接した方が良いね……」

こうして一件落着後、武具屋行く為に、路地を出ようとすると、仁道がやけに整った装備を着て、入ってくる。

仁道「ようお前ら。騒ぎは終わったか?俺様は葛城が逃した野郎共を全員嬲り殺してやったぜ。あいつら一般の強盗の割にいい装備持っててなぁ。身ぐるみ剥いでやったぜ」

葛城「そうか……殺した部下達は何処へ?」

仁道「奥の路地裏に死体の山があるぜ」

葛城「それで良い。じゃあ、武具屋に行くぞ……」

「「「「りょーかーい!」」」」

そうして、全員無事に金を取り戻した。

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