君が見たものを僕は知っている
第24話 クリスマスパーティー
月曜日の朝、僕達はいつものように歩いていた。
「そういえば、今日って朝から自習だよね。その後も音楽とか体育とか今日楽チンだね」
凜は嬉しそうだ。勉強が出来る人でもやっぱり勉強は嫌いなようだ。
「あ!そうだ!」
すると急に信也が大きな声を出す。さっきまで一言も喋らずに何か考えていたみたいだけど、何かを思いついたのか?
「よし!クリスマスパーティーをやろう!」
そう言ってどや顔をする信也。珍しく考えこんでいると思ったらその事だとは。信也らしくていいけど。
「クリスマスパーティーって?それはやる予定ではいたけど……」
クリスマスの日は鈴佳はまだ入院中の予定だ。そんな中僕達だけでやるのはどうなんだろう?
「だからやるんだよ!それも今週とかどう?」
まったく言っている意味が分からない。今日は11月9日。今週やるとしたら土曜日の11月14日。確かにクリスマスの日ではなくても、その付近の日だったらクリスマスパーティーとしてやってもいいだろう。でも、幾らなんでも1ヶ月以上前のクリスマスパーティーってどうなんだ?
「ちょっと、何を言ってんの?クリスマスいつだかわかってる?」
凜は呆れたようにため息をついて首を横にふる。
「まぁ、とりあえず学校についたし、この話は帰りにでもするよ!」
僕と凜は顔を見合わせて首を傾げる。とりあえず何を考えているのか話を聞いてみないと分からない。僕と凜はとりあえず放課後を待つことにした。
その日の授業は凜が言っていた通りに楽なものだった。信也なんて基本寝ていた。まったくマイペースというかなんというか。本当に期末テストであの点数を取ったんだよな?そう思いたくなるくらいの怠惰っぷりだ。
帰りのホームルームも終わり僕と凜は自然と集合していた。
「さてと、信也の言っていたクリスマスパーティーとやらが何なのかちゃんと聞かないとね」
同感だ。というよりその事しか今日は考えていなかった。授業中も気になって仕方なかった。まさか、本当にクリスマスの日が分からないわけではないよね。
そんな僕達に信也は欠伸をしながら近づいてくる。
「よーし!帰るか!途中でカフェ寄ってこうぜ!」
そう言って信也は前を歩いていく。僕達はその後についていく。帰りの道中も他愛のない話ばかりで本題はまだ話さない。きっとカフェで話すつもりなのだろう。
そして、僕達はいつものカフェへと入った。席についてそれぞれ注文をして、コーヒーが運ばれてくるのを待って信也は話出した。
「それでさ、クリスマスパーティーのことなんだけどさ。今週の14日とかでどう?」
いや、まず本当にクリスマスパーティーをやるかが先だ。
「いや、クリスマスって来月だよ!それにこんなこと言うのはアレだけど、鈴佳ちゃんが入院してるのに、私達だけでそんなことやってる場合じゃないよ」
凜の言う通りだと僕も思う。しかし、信也はそんな僕達を制して話を続ける。
「だから、病院でやるんだよ!」
予想の遥か上を飛んでくる。
「いや、病院って!?」
僕は静かな店内に響き渡る声を出してしまう。
「おいおい、落ち着けって!だから、鈴佳ちゃんの病室でみんなでクリスマスパーティーをするんだよ!例えば、鈴佳ちゃんが病室にいない間に飾り付けしてさ、サプライズでやるとかさ!」
突拍子のない提案だけど、魅力を感じる自分もいる。
「なるほどね、それ面白いかも!鈴佳ちゃんも喜ぶと思うし、もともとみんなでやるつもりだったしね!」
凜も信也の提案にノリノリのようだ。
「僕も賛成かな。信也もやる時はやるんだね!」
初めてだ。初めて信也が輝いて見える。信也は「だろ!」と胸を張っている。
「でも、病院が許してくれるかな?」
そこで凜が一番の問題点を口にする。そうそれをまず解決しなければ。
「よし!じゃあ、これから頼みに行ってみようよ!」
僕はもうやる気だった。鈴佳の笑顔を見るためならどんなこともやる気だった。僕はコーヒーをゴクゴクと飲み干すと立ちあがった。
そんな僕をキョトンとした顔で二人は見上げる。
「どうしたの?行かないの?」
その僕の言葉に二人も同じようにゴクゴクとコーヒーを飲み干して立ちあがった。
僕達は病院へ向かった。心の中では土下座でも何でもする覚悟でいた。
しかし、その覚悟は必要なかった。僕達が院長に直談判すると、二つ返事で了承してくれた。むしろ大賛成してくれた。なんでも弱気になることが一番体に毒らしい。そういう事をすることで、気持ちも明るく前向きになれるから、是非やってくれということだ。
担当の医師や看護師さんも協力してくれるらしい。僕達は嬉しくなって、子供のように跳び跳ねて喜んだ。
それから僕達は土曜日に向けての準備を始めた。
小さめのクリスマスツリーを買って、病室に飾るイルミネーションライトも準備した。
当日はまず看護師さんが何ならかの理由で鈴佳を病室から連れ出す。そのうちに僕達が病室に飾り付けをする。そして鈴佳が帰ってきたところでライトを点灯させてサプライズという流れだ。
そして金曜日の放課後、僕達はささやかな決起集会をしていた。
場所はいつものカフェだけど。
「いや、でもまさか信也がこんな凄いこと考えてたなんて。期末テストの時よだったけど、やれば出来る子じゃん!」
凜は信也の背中を何度もバシッバシッと叩く。
「痛い!痛いって!」
そう言いながらも信也は嬉しそうだ。
「なんかさ、今年はいろいろあったよね。大袈裟かもしれないけど、人生分の楽しいことを集めた年だったって気がするよ」
僕はコーヒーをズズーっと飲む。
「本当に大袈裟だな。でも、楽しかった。これ以上楽しいことがこの先あんのかなって思っちゃうよな」
信也もしみじみとそんなことを言う。
「いや、信也も蓮くん同じようなこと言ってるから!」
凜の鋭いツッコミは健在だ。
「ってか、違うじゃんか!こんなしみじみとする会じゃないだろう?明日はやってやるぞー!鈴佳ちゃんを驚かすぞー!って会だろ?」
信也は雰囲気を変えるようにパンっと手を叩く。
そうだ。こんなんじゃ、まるで僕達が揃うのが最後みたいじゃないか。僕達はこれからも何も変わらない。これからもこうやってゆっくりとした日常を一緒に歩むんだ。
「あ、大切なことを忘れてました」
信也は口をあっと開いたまま硬直する。
「え?なによ?なんか忘れてたっけ?」
凜にも分かっていないようだ。僕にも分からない。
「え?本当に?二人とも思い出さないの?クリスマスと言えばなんだよ?」
信也は僕達に意見を求める。
「クリスマスツリー?」「イルミネーション?」「サンタさん?」「トナカイ?」「ラストクリスマス?」「アイギブユーマイハート?」
凜と僕は交互に答える。
「いやいや、違うわ!もっと大事なもの!ってか最後の2つはあの素敵な歌だろ!」
信也のツッコミに「おぉー」と僕と凜の声がシンクロする。
「いやいや、フザけてる場合じゃなくて、ケーキだよ!クリスマスケーキ!」
その言葉に僕達はハッとする。すっかり忘れていた。忘れてはいけないことを忘れていた。飾り付けのことで頭が一杯になっていた。
「どうしよう?スーパーで買うのは味気ないよね?」
凜はうーんと悩んでいる。でも、ダメ元で1つだけあてがある。
「じゃあ、あそこに行ってみよう!もしかしたら作ってくれるかもしれない!」
僕の提案で来たのは、信也の誕生日やら期末テストの罰ゲームやら、その後の僕と凜の誕生日でもお世話になっているケーキ屋だ。お店の人とももう仲良しになっている。
僕達がダメ元で必死にお願いすると。これまた二つ返事で了承してくれた。なんでも、いつも買っていってくれるからそのお礼らしい。僕達の周りには心が広い人が多い。僕達は幸せものだ。
僕達はお礼にケーキを買って店を出た。
そして、僕が信也と凜と別れる道。
「じゃあ、明日!病院18時な!」
二人は手を振って歩いていく。いよいよ明日。明日は鈴佳の喜ぶ顔を見れるといいな。僕達はそっと願った。
「そういえば、今日って朝から自習だよね。その後も音楽とか体育とか今日楽チンだね」
凜は嬉しそうだ。勉強が出来る人でもやっぱり勉強は嫌いなようだ。
「あ!そうだ!」
すると急に信也が大きな声を出す。さっきまで一言も喋らずに何か考えていたみたいだけど、何かを思いついたのか?
「よし!クリスマスパーティーをやろう!」
そう言ってどや顔をする信也。珍しく考えこんでいると思ったらその事だとは。信也らしくていいけど。
「クリスマスパーティーって?それはやる予定ではいたけど……」
クリスマスの日は鈴佳はまだ入院中の予定だ。そんな中僕達だけでやるのはどうなんだろう?
「だからやるんだよ!それも今週とかどう?」
まったく言っている意味が分からない。今日は11月9日。今週やるとしたら土曜日の11月14日。確かにクリスマスの日ではなくても、その付近の日だったらクリスマスパーティーとしてやってもいいだろう。でも、幾らなんでも1ヶ月以上前のクリスマスパーティーってどうなんだ?
「ちょっと、何を言ってんの?クリスマスいつだかわかってる?」
凜は呆れたようにため息をついて首を横にふる。
「まぁ、とりあえず学校についたし、この話は帰りにでもするよ!」
僕と凜は顔を見合わせて首を傾げる。とりあえず何を考えているのか話を聞いてみないと分からない。僕と凜はとりあえず放課後を待つことにした。
その日の授業は凜が言っていた通りに楽なものだった。信也なんて基本寝ていた。まったくマイペースというかなんというか。本当に期末テストであの点数を取ったんだよな?そう思いたくなるくらいの怠惰っぷりだ。
帰りのホームルームも終わり僕と凜は自然と集合していた。
「さてと、信也の言っていたクリスマスパーティーとやらが何なのかちゃんと聞かないとね」
同感だ。というよりその事しか今日は考えていなかった。授業中も気になって仕方なかった。まさか、本当にクリスマスの日が分からないわけではないよね。
そんな僕達に信也は欠伸をしながら近づいてくる。
「よーし!帰るか!途中でカフェ寄ってこうぜ!」
そう言って信也は前を歩いていく。僕達はその後についていく。帰りの道中も他愛のない話ばかりで本題はまだ話さない。きっとカフェで話すつもりなのだろう。
そして、僕達はいつものカフェへと入った。席についてそれぞれ注文をして、コーヒーが運ばれてくるのを待って信也は話出した。
「それでさ、クリスマスパーティーのことなんだけどさ。今週の14日とかでどう?」
いや、まず本当にクリスマスパーティーをやるかが先だ。
「いや、クリスマスって来月だよ!それにこんなこと言うのはアレだけど、鈴佳ちゃんが入院してるのに、私達だけでそんなことやってる場合じゃないよ」
凜の言う通りだと僕も思う。しかし、信也はそんな僕達を制して話を続ける。
「だから、病院でやるんだよ!」
予想の遥か上を飛んでくる。
「いや、病院って!?」
僕は静かな店内に響き渡る声を出してしまう。
「おいおい、落ち着けって!だから、鈴佳ちゃんの病室でみんなでクリスマスパーティーをするんだよ!例えば、鈴佳ちゃんが病室にいない間に飾り付けしてさ、サプライズでやるとかさ!」
突拍子のない提案だけど、魅力を感じる自分もいる。
「なるほどね、それ面白いかも!鈴佳ちゃんも喜ぶと思うし、もともとみんなでやるつもりだったしね!」
凜も信也の提案にノリノリのようだ。
「僕も賛成かな。信也もやる時はやるんだね!」
初めてだ。初めて信也が輝いて見える。信也は「だろ!」と胸を張っている。
「でも、病院が許してくれるかな?」
そこで凜が一番の問題点を口にする。そうそれをまず解決しなければ。
「よし!じゃあ、これから頼みに行ってみようよ!」
僕はもうやる気だった。鈴佳の笑顔を見るためならどんなこともやる気だった。僕はコーヒーをゴクゴクと飲み干すと立ちあがった。
そんな僕をキョトンとした顔で二人は見上げる。
「どうしたの?行かないの?」
その僕の言葉に二人も同じようにゴクゴクとコーヒーを飲み干して立ちあがった。
僕達は病院へ向かった。心の中では土下座でも何でもする覚悟でいた。
しかし、その覚悟は必要なかった。僕達が院長に直談判すると、二つ返事で了承してくれた。むしろ大賛成してくれた。なんでも弱気になることが一番体に毒らしい。そういう事をすることで、気持ちも明るく前向きになれるから、是非やってくれということだ。
担当の医師や看護師さんも協力してくれるらしい。僕達は嬉しくなって、子供のように跳び跳ねて喜んだ。
それから僕達は土曜日に向けての準備を始めた。
小さめのクリスマスツリーを買って、病室に飾るイルミネーションライトも準備した。
当日はまず看護師さんが何ならかの理由で鈴佳を病室から連れ出す。そのうちに僕達が病室に飾り付けをする。そして鈴佳が帰ってきたところでライトを点灯させてサプライズという流れだ。
そして金曜日の放課後、僕達はささやかな決起集会をしていた。
場所はいつものカフェだけど。
「いや、でもまさか信也がこんな凄いこと考えてたなんて。期末テストの時よだったけど、やれば出来る子じゃん!」
凜は信也の背中を何度もバシッバシッと叩く。
「痛い!痛いって!」
そう言いながらも信也は嬉しそうだ。
「なんかさ、今年はいろいろあったよね。大袈裟かもしれないけど、人生分の楽しいことを集めた年だったって気がするよ」
僕はコーヒーをズズーっと飲む。
「本当に大袈裟だな。でも、楽しかった。これ以上楽しいことがこの先あんのかなって思っちゃうよな」
信也もしみじみとそんなことを言う。
「いや、信也も蓮くん同じようなこと言ってるから!」
凜の鋭いツッコミは健在だ。
「ってか、違うじゃんか!こんなしみじみとする会じゃないだろう?明日はやってやるぞー!鈴佳ちゃんを驚かすぞー!って会だろ?」
信也は雰囲気を変えるようにパンっと手を叩く。
そうだ。こんなんじゃ、まるで僕達が揃うのが最後みたいじゃないか。僕達はこれからも何も変わらない。これからもこうやってゆっくりとした日常を一緒に歩むんだ。
「あ、大切なことを忘れてました」
信也は口をあっと開いたまま硬直する。
「え?なによ?なんか忘れてたっけ?」
凜にも分かっていないようだ。僕にも分からない。
「え?本当に?二人とも思い出さないの?クリスマスと言えばなんだよ?」
信也は僕達に意見を求める。
「クリスマスツリー?」「イルミネーション?」「サンタさん?」「トナカイ?」「ラストクリスマス?」「アイギブユーマイハート?」
凜と僕は交互に答える。
「いやいや、違うわ!もっと大事なもの!ってか最後の2つはあの素敵な歌だろ!」
信也のツッコミに「おぉー」と僕と凜の声がシンクロする。
「いやいや、フザけてる場合じゃなくて、ケーキだよ!クリスマスケーキ!」
その言葉に僕達はハッとする。すっかり忘れていた。忘れてはいけないことを忘れていた。飾り付けのことで頭が一杯になっていた。
「どうしよう?スーパーで買うのは味気ないよね?」
凜はうーんと悩んでいる。でも、ダメ元で1つだけあてがある。
「じゃあ、あそこに行ってみよう!もしかしたら作ってくれるかもしれない!」
僕の提案で来たのは、信也の誕生日やら期末テストの罰ゲームやら、その後の僕と凜の誕生日でもお世話になっているケーキ屋だ。お店の人とももう仲良しになっている。
僕達がダメ元で必死にお願いすると。これまた二つ返事で了承してくれた。なんでも、いつも買っていってくれるからそのお礼らしい。僕達の周りには心が広い人が多い。僕達は幸せものだ。
僕達はお礼にケーキを買って店を出た。
そして、僕が信也と凜と別れる道。
「じゃあ、明日!病院18時な!」
二人は手を振って歩いていく。いよいよ明日。明日は鈴佳の喜ぶ顔を見れるといいな。僕達はそっと願った。
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