君が見たものを僕は知っている
第20話 告白
ゆっくりと登っていったと思ったら急下降。そのまま高速で右や左に曲がる。ゴールに近づくとさらにハードになり一回転する。遠心力で体が放り投げされそうになりながらコースターは進む。時々、内臓が持ち上がる俗に言うふわっとした感覚が襲う。
こうしてコースターは最初の位置にゆっくりと戻ってきた。
「面白かったねー!もう!サイコー!また、後でもう一回乗ろう!」
鈴佳はとても興奮している。コースターから降りて僕達は何の違和感もなく手を繋いでいた。
「次はどこにいくの?」
「うーん。こっちも面白そうだな。あ、こっちもいいかも!」
鈴佳はパンフレットを見ながらあちこち指を指している。
「じゃあ、ここから順番に行こうか」
僕は近くにあるコースターを指す。
「うん!そうしよう!時間もたっぷりあるしね!」
鈴佳はまた僕の手を握ったまま元気よく走っていく。僕もされるがままついていく。
僕達はその後、コースターやコーヒーカップ、メリーゴーランドなどいろんなアトラクションに乗った。楽しい時間はあっという間だ。もう時刻は13時を指していた。
「そろそろ、ご飯にしようか?」
僕はお腹も空いてきたのでそう提案する。
「うん!そうしよう!じゃあ、あそこにしようよ!」
鈴佳は目の前に見えるレストランを指さして、僕の手を引いて走る。
僕達はスタッフの方の誘導で席についた。
「何を食べようかな?」
鈴佳はうーんと悩んでいる。
このレストランはエルフの森をイメージしているらしく、スタッフの方もエルフになりきっている。メニューもフェアリーリングという名前のチャーハンなど、名前と料理が関係ないものがたくさんある。
僕はカルボナーラを注文して、鈴佳はカレーライスを注文した。
料理がくるまでの間、僕達はこの後の予定を話し合った。
「じゃあ、次はここにいって、そしたら次はここらへんで、そしてまたこのコースターに乗って、最後は観覧車でいいよね」
僕達は18時のバスで帰る予定だ。それまでの時間を目一杯楽しむための計画を二人で経てた。
計画が決まったと同時に料理も運ばれてきた。とても美味しいそうだ。
「わぁー!美味しいそう!じゃあいただきまーす!」
鈴佳はカレーを一口食べる。
「う~ん!すごく美味しい!」
鈴佳は目を瞑って体を少し震わせる。昔から美味しいものを食べると鈴佳はこの仕草をする。
「じゃあ、僕もいただきます」
僕もカルボナーラをフォークで巻いて一口。美味しい。ベーコンとパスタの塩気に、まろやかなソースがよく合う。
「蓮くんのパスタ美味しいそうだね!」
鈴佳はそう言うとあーと口を開く。え?これってそういうことだよね?
僕は慣れない手つきでパスタを鈴佳の口に運ぶ。
「う~ん!これも美味しいね!」
鈴佳はさっきと同じ仕草をする。今のあれだよね、ドラマとかでカップルがよくやるやつだよね!?
僕は鈴佳が口をつけたフォークを見つめる。
「あ、私だけじゃダメだね!じゃあ、蓮くんもはい!あーん」
鈴佳はそう言ってカレーの乗ったスプーンを僕に近づける。
僕は言われるがまま口を開いてカレーを一口食べる。
「どう?美味しいでしょ?」
鈴佳はニコニコしながら僕の目を見つめる。
「え?あ、うん。美味しい」
言葉でそうは言ったけど、正直味が分からなかった。味わってる余裕がなかった。もう、このシチュエーションでお腹が一杯になってきた。その後、なんとか僕はカルボナーラを食べ尽くした。
僕達はさっきの計画の通りに行動していた。まだ、乗っていなかったアトラクションに乗ったり。一度乗ったけど、気に入ってもう一度乗ったり、パレードを見たり、スイーツを食べたりととにかく楽しい時間が過ぎていく。
空もだんだんと暗くなってきたころ。僕達は最後のアトラクション観覧車の列に並んでいた。
僕は列に並びながら今日1日を思い出していた。お化け屋敷から始まって、美味しいものも食べたし、いろんなアトラクションに乗ったし、何よりも鈴佳の笑顔が多く見れた。それが一番の思い出だった。
観覧車はゆっくりと回り。いよいよ僕達の番になった。僕達は観覧車が通り過ぎないうちに急いで乗り込む。
観覧車の扉がしまり、僕達二人だけの時間になった。密室で二人きりそのシチュエーションが僕の鼓動を速くさせた。
しばらく沈黙が続いた。観覧車はそんな僕達をゆっくりと運んでいる。観覧車が頂上付近に近づいた時だった。
「楽しかったね。今日」
鈴佳が口を開いた。その声はどこか寂しそうだった。
「え?うん。楽しかったね」
「そういえば、今日誕生日だもんね!それで来たのに忘れて楽しんじゃった」
鈴佳はえへへっと笑う。笑顔が見れて少しホッとする。
「うん。でも良かった。二人で遊園地にこれて、本当に楽しかった。最高の誕生日プレゼントになったよ」
「いえいえ、それにまだプレゼント、残ってるんだけどな」
そう言って鈴佳はゴソゴソと鞄をあさりはじめる。
まさか、プレゼントを用意してくれてるとは。このお返しはちゃんとやらないとな。
「よし!じゃあ目を瞑って!」
僕はプレゼントが何なのかワクワクしながら目を閉じた。
僕が目を閉じて数秒。急に僕の唇に柔らかいものが当たった。この感触は覚えがある。そう結婚式の時。誓いのキス。
数秒、僕達はこのままだった。僕は目を閉じたまま鈴佳の唇の感触と温もりを感じていた。
鈴佳はゆっくりと離れていく。僕はそれに合わせてゆっくりと目を開ける。鈴佳は恥ずかしそうに頬を染めながら、僕に微笑んでいる。
「鈴?」
「プレゼント。誕生日おめでとう蓮くん」
観覧車は頂上に達していた。園内の輝き絶景には見とれることはなかった。もう、目の前の光景に、鈴佳に見とれてしまっていたのだから。
それから僕達は観覧車を降りて出口へと向かっていた。その間、さっきのキスは無かったかのように鈴佳は笑っている。そんな姿を見ていると、さっきのことが夢だったのかと誤解してしまいそうだ。
僕達は出口を出るとバスにのりこんだ。二人で空いている席に隣同士に座る。
「いやぁ~終わるの早いね!あっという間だったな」
そう言って笑う鈴佳に僕はまだ伝えていないことがある。勝負はこの後だ。バスを降りて家までの道中。
僕達はバスを降りて歩きなれた道を歩いていた。
その道中は今日の話で持ちきりだった。あのコースターがどうだったとか、お化け屋敷がどうだったとか。
鈴佳の話は今の僕に届いてはいなかった。僕はタイミングを探していた。口数も減っている。
その異変に気づいたのだろう鈴佳は心配そうな顔をする。
「どうしたの?蓮くん何かあった?」
鈴佳は僕の顔を覗きこむ。
もうここしかない。チャンスはもうない。
「鈴。聞いてほしいことがあるんだ」
「何?どうしたの?真剣な顔して?」
「鈴、僕は………」
僕は前日に練習していた言葉を思いだそうとしていたでも思い出せない。なんだっけ?もうこんか時に!
「蓮くん?大丈夫?」
僕は大きく深呼吸をする。そうだ。練習なんて意味がない。練習をして必死に絞り出した言葉なんて届かない。今、思ったことをそのまま言葉にするんだ。それが本当の気持ち。僕の本当の本気の気持ちをぶつけるんだ!
「ぼ、僕は。僕は鈴のことが好きだ」
ついに僕は言った。ずっとこころに秘めていた想いを。
心臓がバクバクと脈をうっている。おでこから汗が噴き出す。そんな僕を夏の涼しい風が撫でていった。
鈴佳は僕の言葉を聞いて俯いたまま固まってしまった。それから永遠とも思える沈黙が流れる。今まで味わったことのない重さだ。とにかく早くこの場からいなくなりたかった。でも、ちゃんと返事を聞かないで帰るわけにはいかない。
体感ではもう10分以上たっただろう。鈴佳はゆっくりと顔を上げて沈黙を破いた。
こうしてコースターは最初の位置にゆっくりと戻ってきた。
「面白かったねー!もう!サイコー!また、後でもう一回乗ろう!」
鈴佳はとても興奮している。コースターから降りて僕達は何の違和感もなく手を繋いでいた。
「次はどこにいくの?」
「うーん。こっちも面白そうだな。あ、こっちもいいかも!」
鈴佳はパンフレットを見ながらあちこち指を指している。
「じゃあ、ここから順番に行こうか」
僕は近くにあるコースターを指す。
「うん!そうしよう!時間もたっぷりあるしね!」
鈴佳はまた僕の手を握ったまま元気よく走っていく。僕もされるがままついていく。
僕達はその後、コースターやコーヒーカップ、メリーゴーランドなどいろんなアトラクションに乗った。楽しい時間はあっという間だ。もう時刻は13時を指していた。
「そろそろ、ご飯にしようか?」
僕はお腹も空いてきたのでそう提案する。
「うん!そうしよう!じゃあ、あそこにしようよ!」
鈴佳は目の前に見えるレストランを指さして、僕の手を引いて走る。
僕達はスタッフの方の誘導で席についた。
「何を食べようかな?」
鈴佳はうーんと悩んでいる。
このレストランはエルフの森をイメージしているらしく、スタッフの方もエルフになりきっている。メニューもフェアリーリングという名前のチャーハンなど、名前と料理が関係ないものがたくさんある。
僕はカルボナーラを注文して、鈴佳はカレーライスを注文した。
料理がくるまでの間、僕達はこの後の予定を話し合った。
「じゃあ、次はここにいって、そしたら次はここらへんで、そしてまたこのコースターに乗って、最後は観覧車でいいよね」
僕達は18時のバスで帰る予定だ。それまでの時間を目一杯楽しむための計画を二人で経てた。
計画が決まったと同時に料理も運ばれてきた。とても美味しいそうだ。
「わぁー!美味しいそう!じゃあいただきまーす!」
鈴佳はカレーを一口食べる。
「う~ん!すごく美味しい!」
鈴佳は目を瞑って体を少し震わせる。昔から美味しいものを食べると鈴佳はこの仕草をする。
「じゃあ、僕もいただきます」
僕もカルボナーラをフォークで巻いて一口。美味しい。ベーコンとパスタの塩気に、まろやかなソースがよく合う。
「蓮くんのパスタ美味しいそうだね!」
鈴佳はそう言うとあーと口を開く。え?これってそういうことだよね?
僕は慣れない手つきでパスタを鈴佳の口に運ぶ。
「う~ん!これも美味しいね!」
鈴佳はさっきと同じ仕草をする。今のあれだよね、ドラマとかでカップルがよくやるやつだよね!?
僕は鈴佳が口をつけたフォークを見つめる。
「あ、私だけじゃダメだね!じゃあ、蓮くんもはい!あーん」
鈴佳はそう言ってカレーの乗ったスプーンを僕に近づける。
僕は言われるがまま口を開いてカレーを一口食べる。
「どう?美味しいでしょ?」
鈴佳はニコニコしながら僕の目を見つめる。
「え?あ、うん。美味しい」
言葉でそうは言ったけど、正直味が分からなかった。味わってる余裕がなかった。もう、このシチュエーションでお腹が一杯になってきた。その後、なんとか僕はカルボナーラを食べ尽くした。
僕達はさっきの計画の通りに行動していた。まだ、乗っていなかったアトラクションに乗ったり。一度乗ったけど、気に入ってもう一度乗ったり、パレードを見たり、スイーツを食べたりととにかく楽しい時間が過ぎていく。
空もだんだんと暗くなってきたころ。僕達は最後のアトラクション観覧車の列に並んでいた。
僕は列に並びながら今日1日を思い出していた。お化け屋敷から始まって、美味しいものも食べたし、いろんなアトラクションに乗ったし、何よりも鈴佳の笑顔が多く見れた。それが一番の思い出だった。
観覧車はゆっくりと回り。いよいよ僕達の番になった。僕達は観覧車が通り過ぎないうちに急いで乗り込む。
観覧車の扉がしまり、僕達二人だけの時間になった。密室で二人きりそのシチュエーションが僕の鼓動を速くさせた。
しばらく沈黙が続いた。観覧車はそんな僕達をゆっくりと運んでいる。観覧車が頂上付近に近づいた時だった。
「楽しかったね。今日」
鈴佳が口を開いた。その声はどこか寂しそうだった。
「え?うん。楽しかったね」
「そういえば、今日誕生日だもんね!それで来たのに忘れて楽しんじゃった」
鈴佳はえへへっと笑う。笑顔が見れて少しホッとする。
「うん。でも良かった。二人で遊園地にこれて、本当に楽しかった。最高の誕生日プレゼントになったよ」
「いえいえ、それにまだプレゼント、残ってるんだけどな」
そう言って鈴佳はゴソゴソと鞄をあさりはじめる。
まさか、プレゼントを用意してくれてるとは。このお返しはちゃんとやらないとな。
「よし!じゃあ目を瞑って!」
僕はプレゼントが何なのかワクワクしながら目を閉じた。
僕が目を閉じて数秒。急に僕の唇に柔らかいものが当たった。この感触は覚えがある。そう結婚式の時。誓いのキス。
数秒、僕達はこのままだった。僕は目を閉じたまま鈴佳の唇の感触と温もりを感じていた。
鈴佳はゆっくりと離れていく。僕はそれに合わせてゆっくりと目を開ける。鈴佳は恥ずかしそうに頬を染めながら、僕に微笑んでいる。
「鈴?」
「プレゼント。誕生日おめでとう蓮くん」
観覧車は頂上に達していた。園内の輝き絶景には見とれることはなかった。もう、目の前の光景に、鈴佳に見とれてしまっていたのだから。
それから僕達は観覧車を降りて出口へと向かっていた。その間、さっきのキスは無かったかのように鈴佳は笑っている。そんな姿を見ていると、さっきのことが夢だったのかと誤解してしまいそうだ。
僕達は出口を出るとバスにのりこんだ。二人で空いている席に隣同士に座る。
「いやぁ~終わるの早いね!あっという間だったな」
そう言って笑う鈴佳に僕はまだ伝えていないことがある。勝負はこの後だ。バスを降りて家までの道中。
僕達はバスを降りて歩きなれた道を歩いていた。
その道中は今日の話で持ちきりだった。あのコースターがどうだったとか、お化け屋敷がどうだったとか。
鈴佳の話は今の僕に届いてはいなかった。僕はタイミングを探していた。口数も減っている。
その異変に気づいたのだろう鈴佳は心配そうな顔をする。
「どうしたの?蓮くん何かあった?」
鈴佳は僕の顔を覗きこむ。
もうここしかない。チャンスはもうない。
「鈴。聞いてほしいことがあるんだ」
「何?どうしたの?真剣な顔して?」
「鈴、僕は………」
僕は前日に練習していた言葉を思いだそうとしていたでも思い出せない。なんだっけ?もうこんか時に!
「蓮くん?大丈夫?」
僕は大きく深呼吸をする。そうだ。練習なんて意味がない。練習をして必死に絞り出した言葉なんて届かない。今、思ったことをそのまま言葉にするんだ。それが本当の気持ち。僕の本当の本気の気持ちをぶつけるんだ!
「ぼ、僕は。僕は鈴のことが好きだ」
ついに僕は言った。ずっとこころに秘めていた想いを。
心臓がバクバクと脈をうっている。おでこから汗が噴き出す。そんな僕を夏の涼しい風が撫でていった。
鈴佳は僕の言葉を聞いて俯いたまま固まってしまった。それから永遠とも思える沈黙が流れる。今まで味わったことのない重さだ。とにかく早くこの場からいなくなりたかった。でも、ちゃんと返事を聞かないで帰るわけにはいかない。
体感ではもう10分以上たっただろう。鈴佳はゆっくりと顔を上げて沈黙を破いた。
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