君が見たものを僕は知っている
第3話 春といえば?
僕が外に出るといつものように鈴佳が僕を待っていた。
「おはよう!蓮くん!」
太陽よりもキラキラと輝く笑顔で挨拶をする鈴佳。僕はその笑顔がとても好きだ。
「あ、おはよ。じゃあ行くか」
僕はその笑顔を直視すると顔が赤く染まってしまうので、そっぽを向きながら挨拶を返す。
二人で並んで歩く通学路。本人にはとても言えないが、僕はこの何気ない時間に幸せを感じていた。
僕達が通う学校は歩いて20分ぐらいの場所にある。そんな時間もあっという間に感じてしまうのも鈴佳とだからだろう。
「お!お二人さん!仲がよろしくて何よりです!」
僕は急に背中をポンッと叩かれる。振り返るとそこにいたのは、僕達のクラスメイトの五十嵐 信也と同じくクラスメイトの渋谷 凛だ。
信也は軽い言動が目立つも、とても友達想いのいいやつで、凜は面倒見がいいお姉さんタイプの綺麗な女の子だ。ちなみに、この二人は付き合っていてとても仲がいい。
「おう!仲がいいのはどっちだよ」
周りから見たら毎朝、手を繋いで登校してくる信也たちの方がよっぽど仲良しに見えるだろう。
「てかさ、お前ら本当に付き合ってないんだよな?そんな仲いいのによ」
仲がいいのは幼馴染だからで、付き合おうとかは思っていない。いや、ちょっとは思っているかもしれない。
「いやいや!付き合ってないよ~!本当に!」
鈴佳は分かりやすく顔を真っ赤にして慌てている。
「ふ~ん。ねぇ、手とか繋いでみたら~。別に付き合ってなくても仲良しなんだからいいんじゃない?」
凜は悪戯な笑みをみせる。
「え?べ、別に、私は大丈夫だけどね!ね!蓮くん!」
鈴佳が挙動不審になっている。そこまで動揺されると、なんかこっちまで恥ずかしくなる。
「え?い、いやそれでまた誤解されるだろうし、止めとくよ」
僕は必死に言い訳を探した。こんな所で手なんか繋いだら、顔が熱くなって茹で上がってしまいそうになるだろう。
そんなこんなで信也たちのペースに乗せられながら学校へと到着する。神様は僕達をどうしたいのか、教室の席は鈴佳と隣だ。おまけに信也と凜は前の席。誰かに仕組まれているのかと疑いたくなる。
席についても朝のホームルームまでの時間は、信也たちの惚気話か、惚気話かで過ぎていく。毎日よくネタが尽きないものだと感心する。
「そういえばさ、春と言えばなんだと思う?」
急に信也がそんな話を振ってくる。春か?なんだろうなぁ?入学式とか?出会いと別れとか?
「そう!桜だよ!さ・く・ら!」
僕の答えを待たずに話を進める。信也はこういういい加減なところがある。でもなんか憎めないやつだ。
「ああ。んで?それがどうした?」
「あのさ、明日土曜日だろ。お前らはどうせ部活やってないから暇だろ?だからさ、花見しないか?」
暇なのはお互い様だろうけど、花見か、確かにちゃんとしたことは無かったかもしれない。
「私は大丈夫だよ!花見ってやって見たかったんだよね!」
鈴佳はノリノリらしい。昔からアグレッシブなところは変わらない。
「オッケー!ってことは蓮もオッケーってことだな」
また、勝手に決めやがって。まぁ、大丈夫なんだけど。
「まぁ、暇だし悪くないかな」
「よしよし!あ、お弁当はうちの凜が作ってくれるから期待しとけよ!俺はジュースとか持ってくから!」
凜は料理が上手で何度か手作りの弁当を食べさせてもらったことがある。
「お、それは期待大だな。凜の料理は本当に美味いからな」
「あら、そんなに素直に褒められとちょっと照れる」
凜は顔を隠すように下をむく。
すると、隣にいた鈴佳が急に右手をピンっとあげる。
「はい!はーい!私もお弁当作っていきます!」
そう宣言すると、僕のほうをチラチラと見る。鈴佳が料理か。正直、鈴佳の料理は食べられなくはないんだけど……。
「えっと、鈴佳ちゃん大丈夫ですか?ここは凜に任せと」
バシッ!信也が話終えるまえに凜が頭を叩いて静止させる。
「いってぇよ~、何するんだよ!」
そんな信也を無視して凜は優しい笑顔を鈴佳にむける。
「じゃあさ鈴、明日朝早くに家にきてよ!一緒にお弁当作って持っていこう!ね!」
これはナイスな提案だ。凜が居てくれれば心強い。
「凜ちゃん!ありかとう!うん!よろしくね!」
鈴佳は思いっきり凜に抱きつく。それを嫉妬の目で信也が見つめる。いやいや、女の子に嫉妬してどうするんだよ。
「はーい!ホームルーム始めるから席についてー!」
そこで、チャイムがなって教師が入ってくる。僕達も話は一旦置いといてホームルームに備える。
―――放課後
僕は信也と一緒に帰っていた。鈴佳と凜は明日の買い出しに行くといって途中で別れたのだ。
「なぁ、蓮。ずっと思ってたんだけどさ、お前って本当に鈴佳ちゃんのこと何とも思ってないわけ?」
急な質問にドキッとする。それは昔からの幼馴染で付き合いは長いし、何とも思ってないとかそんなの。いや、正直に言ってしまえば…………。好きだ。
でも僕は恥ずかしくて口に出来ずにいた。もう、その沈黙が答えみたいなものだ。
「ま、いいや。でもさもし、お前が想ってるならさ早く伝えた方がいいと思うぜ。伝えられなくなってからじゃ遅いから」
なんだろう?信也が急にこんな話をするなんて。もしかして、凜と何かあったのか?
「え?どうしたんだ?なんでそんな話を急に?」
「あのな。実は…………」
僕は今から何を聞かされるのだろう。緊張でたまらずゴクンと唾をのみこむ。
「実は。昨日ある映画を見ちゃってさ!もう感動してさ、主人公の好きな人が、病気で亡くなっちゃうって話なんだけど……」
いや!映画の話かよ!心配して損してわ!てか、その映画まだ見てなくて、見ようと思ってたのにネタバレすんなよ!
僕はあまりにもバカバカしくなって声をあげて笑った。
「おい!なんで笑ってんだよ!本当に感動したんだぞ!まったくお前は……ハハッ、あはは!」
そんな僕につられて信也も笑う。こんな時間がいつまでも続けばいいなと柄にもなく思った。
「まぁ、なんにせよだよ!お前が本当に好きなら俺は、いや俺達はお前を応援してるから!俺でよければいつでも相談にのるぜぇ~」
それからも二人の笑い声は絶え間なく響きわたっていた。
「よし、じゃあ、俺はここで!また明日な!寝坊すんなよ!」
「おう!そっちこそな!じゃあまた明日!」
僕達は手を振り途中で別れた。
僕はその後一人で家路を歩いていた。花見かぁ~。実はすごく楽しみだ。桜を見るのも好きだし、みんなと一緒にいれることも幸せだし。もう三年だし、最後に思い出をたくさん作っておかないとな。
明日の花見は僕もよく行っていた公園ですることになった。あそこにはいろんな思い出があって、そういえばいつか、願いが叶うとか言う都市伝説のあるサークルに行ったけな。懐かしいな。確かあの後、おつかいに行って事故にあったんだっけ。
意識不明の重体でもう無理かもしれないって言われてたらしいけど、奇跡がおきて僕は今もこうして生きることができている。もし、あの時死んでしまってたら、明日の花見も信也と凜に出会うことも、今日まで過ごしてきた鈴佳との思い出も無かったんだな。そう思うと急に感慨深くなった。
神様がいるかわからないけど、もし僕を生かしてくれたのが神様なら感謝します。僕にかけがえのない友人や大切な人、その人たちと過ごす日々を与えてくださり、心から感謝します。
なんだか、今日の僕は変だな。まるで映画の主人公みたいだ。僕は可笑しくなってフッと鼻で笑った。
「おはよう!蓮くん!」
太陽よりもキラキラと輝く笑顔で挨拶をする鈴佳。僕はその笑顔がとても好きだ。
「あ、おはよ。じゃあ行くか」
僕はその笑顔を直視すると顔が赤く染まってしまうので、そっぽを向きながら挨拶を返す。
二人で並んで歩く通学路。本人にはとても言えないが、僕はこの何気ない時間に幸せを感じていた。
僕達が通う学校は歩いて20分ぐらいの場所にある。そんな時間もあっという間に感じてしまうのも鈴佳とだからだろう。
「お!お二人さん!仲がよろしくて何よりです!」
僕は急に背中をポンッと叩かれる。振り返るとそこにいたのは、僕達のクラスメイトの五十嵐 信也と同じくクラスメイトの渋谷 凛だ。
信也は軽い言動が目立つも、とても友達想いのいいやつで、凜は面倒見がいいお姉さんタイプの綺麗な女の子だ。ちなみに、この二人は付き合っていてとても仲がいい。
「おう!仲がいいのはどっちだよ」
周りから見たら毎朝、手を繋いで登校してくる信也たちの方がよっぽど仲良しに見えるだろう。
「てかさ、お前ら本当に付き合ってないんだよな?そんな仲いいのによ」
仲がいいのは幼馴染だからで、付き合おうとかは思っていない。いや、ちょっとは思っているかもしれない。
「いやいや!付き合ってないよ~!本当に!」
鈴佳は分かりやすく顔を真っ赤にして慌てている。
「ふ~ん。ねぇ、手とか繋いでみたら~。別に付き合ってなくても仲良しなんだからいいんじゃない?」
凜は悪戯な笑みをみせる。
「え?べ、別に、私は大丈夫だけどね!ね!蓮くん!」
鈴佳が挙動不審になっている。そこまで動揺されると、なんかこっちまで恥ずかしくなる。
「え?い、いやそれでまた誤解されるだろうし、止めとくよ」
僕は必死に言い訳を探した。こんな所で手なんか繋いだら、顔が熱くなって茹で上がってしまいそうになるだろう。
そんなこんなで信也たちのペースに乗せられながら学校へと到着する。神様は僕達をどうしたいのか、教室の席は鈴佳と隣だ。おまけに信也と凜は前の席。誰かに仕組まれているのかと疑いたくなる。
席についても朝のホームルームまでの時間は、信也たちの惚気話か、惚気話かで過ぎていく。毎日よくネタが尽きないものだと感心する。
「そういえばさ、春と言えばなんだと思う?」
急に信也がそんな話を振ってくる。春か?なんだろうなぁ?入学式とか?出会いと別れとか?
「そう!桜だよ!さ・く・ら!」
僕の答えを待たずに話を進める。信也はこういういい加減なところがある。でもなんか憎めないやつだ。
「ああ。んで?それがどうした?」
「あのさ、明日土曜日だろ。お前らはどうせ部活やってないから暇だろ?だからさ、花見しないか?」
暇なのはお互い様だろうけど、花見か、確かにちゃんとしたことは無かったかもしれない。
「私は大丈夫だよ!花見ってやって見たかったんだよね!」
鈴佳はノリノリらしい。昔からアグレッシブなところは変わらない。
「オッケー!ってことは蓮もオッケーってことだな」
また、勝手に決めやがって。まぁ、大丈夫なんだけど。
「まぁ、暇だし悪くないかな」
「よしよし!あ、お弁当はうちの凜が作ってくれるから期待しとけよ!俺はジュースとか持ってくから!」
凜は料理が上手で何度か手作りの弁当を食べさせてもらったことがある。
「お、それは期待大だな。凜の料理は本当に美味いからな」
「あら、そんなに素直に褒められとちょっと照れる」
凜は顔を隠すように下をむく。
すると、隣にいた鈴佳が急に右手をピンっとあげる。
「はい!はーい!私もお弁当作っていきます!」
そう宣言すると、僕のほうをチラチラと見る。鈴佳が料理か。正直、鈴佳の料理は食べられなくはないんだけど……。
「えっと、鈴佳ちゃん大丈夫ですか?ここは凜に任せと」
バシッ!信也が話終えるまえに凜が頭を叩いて静止させる。
「いってぇよ~、何するんだよ!」
そんな信也を無視して凜は優しい笑顔を鈴佳にむける。
「じゃあさ鈴、明日朝早くに家にきてよ!一緒にお弁当作って持っていこう!ね!」
これはナイスな提案だ。凜が居てくれれば心強い。
「凜ちゃん!ありかとう!うん!よろしくね!」
鈴佳は思いっきり凜に抱きつく。それを嫉妬の目で信也が見つめる。いやいや、女の子に嫉妬してどうするんだよ。
「はーい!ホームルーム始めるから席についてー!」
そこで、チャイムがなって教師が入ってくる。僕達も話は一旦置いといてホームルームに備える。
―――放課後
僕は信也と一緒に帰っていた。鈴佳と凜は明日の買い出しに行くといって途中で別れたのだ。
「なぁ、蓮。ずっと思ってたんだけどさ、お前って本当に鈴佳ちゃんのこと何とも思ってないわけ?」
急な質問にドキッとする。それは昔からの幼馴染で付き合いは長いし、何とも思ってないとかそんなの。いや、正直に言ってしまえば…………。好きだ。
でも僕は恥ずかしくて口に出来ずにいた。もう、その沈黙が答えみたいなものだ。
「ま、いいや。でもさもし、お前が想ってるならさ早く伝えた方がいいと思うぜ。伝えられなくなってからじゃ遅いから」
なんだろう?信也が急にこんな話をするなんて。もしかして、凜と何かあったのか?
「え?どうしたんだ?なんでそんな話を急に?」
「あのな。実は…………」
僕は今から何を聞かされるのだろう。緊張でたまらずゴクンと唾をのみこむ。
「実は。昨日ある映画を見ちゃってさ!もう感動してさ、主人公の好きな人が、病気で亡くなっちゃうって話なんだけど……」
いや!映画の話かよ!心配して損してわ!てか、その映画まだ見てなくて、見ようと思ってたのにネタバレすんなよ!
僕はあまりにもバカバカしくなって声をあげて笑った。
「おい!なんで笑ってんだよ!本当に感動したんだぞ!まったくお前は……ハハッ、あはは!」
そんな僕につられて信也も笑う。こんな時間がいつまでも続けばいいなと柄にもなく思った。
「まぁ、なんにせよだよ!お前が本当に好きなら俺は、いや俺達はお前を応援してるから!俺でよければいつでも相談にのるぜぇ~」
それからも二人の笑い声は絶え間なく響きわたっていた。
「よし、じゃあ、俺はここで!また明日な!寝坊すんなよ!」
「おう!そっちこそな!じゃあまた明日!」
僕達は手を振り途中で別れた。
僕はその後一人で家路を歩いていた。花見かぁ~。実はすごく楽しみだ。桜を見るのも好きだし、みんなと一緒にいれることも幸せだし。もう三年だし、最後に思い出をたくさん作っておかないとな。
明日の花見は僕もよく行っていた公園ですることになった。あそこにはいろんな思い出があって、そういえばいつか、願いが叶うとか言う都市伝説のあるサークルに行ったけな。懐かしいな。確かあの後、おつかいに行って事故にあったんだっけ。
意識不明の重体でもう無理かもしれないって言われてたらしいけど、奇跡がおきて僕は今もこうして生きることができている。もし、あの時死んでしまってたら、明日の花見も信也と凜に出会うことも、今日まで過ごしてきた鈴佳との思い出も無かったんだな。そう思うと急に感慨深くなった。
神様がいるかわからないけど、もし僕を生かしてくれたのが神様なら感謝します。僕にかけがえのない友人や大切な人、その人たちと過ごす日々を与えてくださり、心から感謝します。
なんだか、今日の僕は変だな。まるで映画の主人公みたいだ。僕は可笑しくなってフッと鼻で笑った。
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