転生した俺は???級の一般人でした。
8、誕生?!小さな勇者(ヒーロー)
ラフレシアに戻ってみれば街内がおかしい事になっていた。警備兵が街を取り囲むように待機しており何があったのかと聞いてみることに。
「あの……何故、こんな大騒ぎに?」
警備兵の1人に聞いてみると……
「近くで爆発が起こった為、こちらに被害が出ないよう、もしもの時の為に待機しております。君も、すぐに親御さんの所へ戻りなさい。」
あー待って……。
もしかしてさ……
「あの……その爆発って、カネンソウが生えてる所からですよね?」
「勿論だ。ん?何故、君が知っているのだ?この事は我らしか分からないはずだが……」
「すみません、それ俺が原因です。」
「はぁぁぁぁ?!?!な、何を馬鹿なことを!!じょ、冗談だろう。大人をからかうのは良くない。さっさと帰りたまえ。」
「いや、本当なんです。カンネンソウを素手でちぎっちゃって……」
「素手で?!な、何を馬鹿なことをしているんだ!!危ないだろう?!布か手袋かをして取らないと爆発が……」
警備兵は自分で言ったことの内容で何か
気づいたのか俺をガン見。
「爆発に巻き込まれた君が……生きている?!」
「まぁ、何とか。生きてます。」
「かすり傷が1つもない……!いったい君は……。」
「普通の一般人です。あ、疑われるの嫌なので……」
持ち物から、結晶化されたカネンソウを取り出す。
俺の手には、カネンソウが。
「はい。警備員さん、これなら間違いじゃないって分かるでしょう?」
「わわわわわわわわわわわわわわッ?!ば、爆発……!!!」
怯えたように縮こまっている。
「あのー?」
「あ、あれ?な、何も起こらない……?」
「この、カネンソウはコーティングしてあるので素手で触っても大丈夫ですよ?」
「な、何?!俺も触ってみも良いだろうか?」
「どうぞ。」
警備兵は素手でカネンソウに触れる。
しかし、爆発は起きない。
「本当だ……爆発が起きない……それに、ひんやりするぞ?!」
「はい。結晶化しましたから。」
「けっしょう……か?いや、でも…普段触る時のカネンソウと同じ……。どうやって加工したんだ?!」
「えっと……企業秘密です。」
俺の魔法で、やった事だ。
ただ、どうやったのか詳しく話せと聞かれると
上手く答えられる自信はないので秘密にしておこう。
俺達の騒ぎを聞いたのか、
住民や他の警備兵がわらわらと集まっていた。
「……そうか……。とりあえず、この件は本当みたいだな……まさか、君みたいな子供が……。団長に話をつけてくる。悪いがここで待っていて貰えるだろうか。」
「あ、はい……。」
今、思ったんだが……言わない方が良かったのでは?日本でいう事情聴取とか受ける必要があってとかだったら面倒だし、何か罰則が……。
いや、たかが子供に罰則はないよな……?
子供ってのを盾に生き延びるしかないか……。
『ずる賢い子供だな。』
仕方ないだろ……。
こっちは生死が関わってんだから。
『ふふ……面白い奴だ。』
ライシンは呑気すぎる。
そこへ、数十人の人を引き連れて
体格の良い男がこちらへやって来た。
さっきの兵士も一緒だった。
「……君が、爆発を起こした人物なのか?」
うわぁ……声渋っ…。
容姿もデキる男って感じでカッコイイ人だった。
この人が団長かな?
「あ、はい……。カネンソウが素手で触って採取すると爆発するって知らなくて……あ、でも!ちゃんと元通りにしときましたから大丈夫ですよ?それに、魔物だって全部倒したので危機はないはずでず。」
「魔物も……倒した?」
「はい。証拠、見せましょうか?」
「証拠なんて見せれるわけが……こんな子供に。」
子供子供、煩いな。
大人だったら信じるってか?
ちょっと腹が立ってきた。いいよ、見せたら分かるだろ。
ボタンを押して、持ち物から先程狩った魔物を全部一瞬にしてその場に出す。てんこ盛り状態だ。
「これで信じて貰えます?」
見せれば何か返事がくるはず……
ん?あれ?返事がない?
俺は団長と思われる人物を見上げた。
団長はマヌケにもポカンと口を開けている。
他の団員達や街の人達も。
そして、ポカンとしていた街の人達は我に返ったのか
悲鳴をあげた。
「「「「「キャァァァァァァァァァ!!!!!魔物ぅぅぅ!!!!食われるぅぅぅ!!!!」」」」」
え?!
今度はこっちが驚く番だった。
街の住人は一斉に逃げ出した。
あれ、なんで?魔物は死んでるけど。
『アレン、皆、魔物が生きていると勘違いしている。』
え、何で?あ。傷一つないように見えるからか。
『そういう事だ。』
「はぁ……」 
静止……!
逃げ惑っていた人物も全て止まる。
そして、声を響くように
空洞音声!
「落ち着いて下さい。この魔物は俺が倒しました。皆さんに危害を加えるようなことは起こりません。」
静止もすぐ効果が切れたのか皆…動き出すが、
さっきまでの慌ただしさはない。
「……動け……る……。」
そう団長らしき人は呟くと、真っ先に魔物へと向かった。
そして、何かを確認している。
それから、大きな声でこう叫んだ。
「皆の者!!この魔物は絶命している!!!危険は何も無い!!安心してくれ!!!」
そう言った団長の言葉に
皆、安堵したのか……
「「「「「良かったぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」
街の人達は隣の人と抱き合ったり、ワイワイとやった!!と叫んでいた。
あの……えっと…。街に悲劇が起こって無事に助かった!やったぜ!みたいな図が現在、起こっているが全くそんな危機は起こっていないぞ……。
「なぁ?!あの子供が助けてくれたんじゃないか?!」
「そ、そうだ!!街の危機を救ったんだ!!」
「どうやって、これだけの魔物を倒したかは知らないけど!!」
「「「ありがとう!!君!」」」
複数の人にそんなことを言われる。
え、あの……な、何が起こって…………。
助けたじゃなくて……自分の後始末をしただけ……なんだけど……。
「おい、少年。俺の名は、カリオン・グレイス。この街の警備兵の団長を務めている。カリオンと呼んでくれ。」
「あ……はい…。えっと、俺の名前はアレン・スコッティです。アレンって呼んで下さい。」
「アレンか。すまないが、俺に着いて来てくれるか。」
「……は、はぁ……。」
とりあえず、取り出した魔物は収納した。
そして、カリオン団長に着いていく。
街の人達に感謝されながら。
カリオン団長に連れてこられたのは立派な屋敷だった。
立派な門があり中には噴水。
前世で言うと西洋の金持ちの家みたいな。
そんな場所に連れてこられた。
警備兵が大きな玄関扉を開ければ、
メイド服を着た美人な人達がお出迎えしてくれた。
「「「「「おかえりなさいませ。」」」」」
……この世界…綺麗な人ばっかりだな……。
そして、1人のメイドが前に出てきて、カリオン団長に……
「旦那様の所へ、ご案内致します。」
「頼む。」
そして、そのメイドさんによってある部屋へと案内された。
「コンコン……失礼致します旦那様。」
「入れ。」
ガチャッ……
部屋の中に入る。
えっと……緊張しかない……。
「失礼します!旦那様。今回の件を解決した方にお越し頂きました。」
カリオン団長がダンディな男性にそう言った。
「ふむ……この子が?」
「はい。」
「たった一人で?」
「はい。」
「そうか……。」
「あの一体何の話を────」
「凄いな君!!そんな小さな体で!!街を守ってくれてありがとう!」
俺の声を遮って、ダンディな男性は俺に礼を言う。
「いえ!!だから!!あの!お礼を言われるようなことは何もしてなくて!!自分でやらかした不始末を精算しただけで……えっと……説明をして下さい!!!!!」
俺はパニックだった。
よく分からず連れてこられ、怒られるなら分かるが何故かお礼の言葉を述べられ感謝されている。キャパオーバーだった。
「ん?アレンは知らなかったのか?」
団長はあたかも俺が知っていたかのように言う。
「全く知りませんから……!!俺、クエストの採取行って帰ってきたら騒動になってて…警備兵の人に爆発が原因でって話を聞いて、それは俺がカネンソウを手違いで爆発させてしまった事だと気付いて…すぐに大丈夫ですよって話を通したんですけど……。」
「それは、兵士から聞いた。その後、見せてくれた魔物は?」
「あ、あれは……爆発音でおびき寄せちゃったみたいで……向かってきた魔物を全部、倒しました…。」
「凄い!!素晴らしい!!」
ダンディな男性が拍手しながら告げる。
「いや……だから……!」
「アレン、偶然だったとはいえ俺達はお前に助けられたのだ。」
「え?偶然??」
「あぁ。広場で騒ぎが起こった後にある情報が入ったんだ。 」
「あの……広場で騒ぎって、まさか……子供が魔物引っ捕らえたみたいな話だったりします?」
「おぉ!知っているのかアレン!」
それ、俺です……。思わぬ情報が入ったな……。
「ま、まぁ……あ、話を止めてすみません。続きを……。」
「そうだったな。その情報というのが、魔物があちらこちらで活発に増え始めたという事なんだ。しかも、その魔物達がこの街ラフレシアへ向かって来ていると……。そこら辺の魔物なら数が多くてもまだ、対処は出来たが……ほとんどが高ランクの魔物だったのだ。避難するにも時間が足りないし、かと言って放っておく訳にもいかない。住民を守るのが使命だからな。そこで、その場にいた冒険者達をかき集め……それでも足りていなかったがここを死守すると話し合った矢先……爆発が起こった。そして、その爆発音のおかげでラフレシアから逸れたのだ。」
俺が理解出来ていないので言葉にして頭の中を整理していく。
「という事は……俺がやらかした爆発音が結果、ラフレシアに向かっていた魔物を俺の方におびき寄せる事が出来て俺はそれを倒したと……。」
「そうだ。その爆発音のおかげでこの街と住民は助かったんだ。」
「なるほど……。」
自分の命だけでなく、他の人の命も守れていたのか……。ていうか、あの魔物……高ランクの魔物だったんだ……。似たような奴が多かったけど……。
ライシン、分かってた?
『勿論だ。』
はぁ……。と、とりあえず良かったか。
「という訳なのだ。」
「本当にありがとう。そうだ!私の名前を言っていなかったね。この街を仕切っている長、ヤブミ・アルテミスだ。これから、宜しく。小さな勇者(ヒーロー)。」
「いやいや……勇者(ヒーロー)って呼ばれる程のことは……。たまたまですし。俺の名前はアレン・スコッティです。アレンと呼んでください。」
「謙遜しなくていい。アレン。この事は私から街の皆に発表させてもらうよ。」
「えぇっ?!い、良いので!!」
「駄目だ!!これは決定事項だ。と言っても、この部屋を入った瞬間から放送しているのだがね。」
え?放送……??
「あの……どういう意味ですか……? 」
「そのままの意味だアレン。街の者達よ。見ているだろうが……皆に事の危機を全て伝えず申し訳なかった。」
そう言って頭をその場で下げたヤブミさん。
いったい……何が……。
「ただ、皆、聞いていた通りここにいるアレンが私達を街を救ってくれたのだ。私ヘの不満は後で受け付けよう。」
その言葉に案内してくれたメイドさんがヤブミさんにこう伝える。
「旦那様、街の者は俺達を私達の事を思ってして下さった行動なのは分かっているから謝らないでくれと言っております。」
「皆……ありがとう……。感謝する。」
「当たり前だと皆さん、仰っております。」
「そうか……なんとも嬉しい事だ…。」
ヤブミさんは泣きそうな声だ。
「1度、放送を切る。皆の者、また後で話そう。」
「旦那様、放送を切りました。」
「ありがとう。ご苦労だったね。」
「いえ。」
2人の会話が終わり……全くついていけていないがヤブミさんが俺に話題を振ってきた。
「そうそう、報酬は何が良いだろうか?」
「いえ、報酬はいりません。」
「何?!それは駄目だ。何かお礼をしなければ。」
「えっと……今のところないので保留にして頂けますか。」
「保留……分かった。何かあればすぐに言ってくれ。用意出来るものは何でも用意する。」
「ありがとうございます。」
何か助力を得られることになっている……。
さっきの放送って……街中に液晶画面みたいなのが出てたりするのだろうか……?
よく分からないな……。
「とりあえず……失礼してもいいでしょうか。クエスト報告をしに行きたいので。」
「あぁ、構わない。引き止めて悪かったね。これからはこの屋敷にも自由に出入り出来るよう使用人にも伝えておくから何かあれば来てくれ。」
「はい。ありがとうございます。ヤブミさん。」
「さんは要らないよ。ヤブミでいいからね。」
「分かりました。ヤブミ。それでは、失礼します……。」
「カリオン、連れて行ってあげてくれよ。」
「はい!畏まりました!アレン、行(ゆ)くぞ。」
「はい。」
そうして、俺は屋敷を出ることになったのだが…
門の前に人!人!人!人!人!!だらけ。
「放送で全部聞いた!!アレン様に会わせてくれ!!」
「礼を言いたいんだ!!」
「俺達を助けてくれた恩人に!!」
「私達に恩返し出来ることがあったら何かしたいの!!」
「会わせて!!」
そんな、声が聞こえた。
放送でって事は……俺が想像した通りで合ってるのかも……。様はつけなくて良いんだけど……。
『アレン、たくさんの人に好(す)かれたな?』
……う、うん……。
『何だ?嬉しくないのか?』
いや……好かれるのは嬉しいけど……。たまたま起こった出来事が運良く俺以外の人達も救ってたってだけで……。別に俺は特別な事をしてない……。
『確かに、今回はたまたま人を助けたのかもしれない。だが、結果。皆の命は救われたわけだ。如何なる理由があろうともアレンが助けたという、事実は変わらん。胸を張ればいい。街の住人もそう言っているだろう?』
確かにライシンが言ってくれた事と似たような事を街の人達は言ってくれている。だけど……胸を張ることは今の俺には出来ない。けど……受け入れるくらいなら……。
『それで良(よ)い。アレンは人に好かれるという行為に、臆病になっているのだな。』
そうかも……。だって、人に好かれることなんてなかったから1度も。この世界の”オレ”も──前世の俺も──。
『アレン、泣いているのか?』
ライシンに、言われて気付いたが
温かい何かが頬をつたっていた。
え?あれ……ホントだ……。何でだろ……。
よく分かんないな……なんか心が温かくて……。
涙が止まらない───。
「アレン?!どうした?!何故泣いているのだ?!」 
俺が泣いているのに気づいたカリオンが心配そうに声をかけてくれる。
こんな風に心配なんてされた事はない。
あぁ、心があったかくなる……。
「カリオン、大丈夫。」
涙って辛い時、悲しい時だけに出るんじゃないんだな。初めて知った。
涙なんて枯らしたと思ってたけど…俺……泣けるんだ……。
”オレ”も俺も、ある日を境に泣けなくなったんだ。どんなに辛くて悲しい事があっても泣いたって無駄で……無でいれば……何も辛く悲しいことはないと知っていたから───。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫。俺こそ街の人達にお礼が言いたい。」
「お前は不思議な奴だ。」
「よく言われる。」
  心が温かくなると涙が出ることを
              教えてくれてありがとう────。
    ”オレ”と俺は、感謝の言葉を伝えたくなった。
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