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雪華月ふわり

杞憂は転々[閑話休題]~雛編~

妹にバトンタッチをして帰路に着く。ゆっくりと外の空気を吸って吐いた。
夢というのはだいたいの人が叶わないと正直思う。
必死に行動をしても、僅かなチャンスを捕らえる前に幾度と無い挫折が転がっている。
それでもなお、諦めないほんの一握りの人達は栄光を手に入れるのだろう。
正直自分にはそこまで熱く信じられる覚悟(もの)がない。
それでも損得を考えず、真正面から飛び込む
妹には本当に頭が上がらない。
世の中には「出来ない」が溢れすぎでいると思う。
なんとなく安泰を求めるのが良しとされがちだが、満足している人が少ないのは火を見るより明らかだ。
化粧品会社に就職して4年近く経つ私はどうだろうか?
好きなことに毎日触れ、そこそこ楽しんではいる。
でも一定のラインは越えない。
香菜を応援する反面、どうしても世の中の常識に当てはめてしまっていた自分がいる。今でもその考えを完全に拭い去る事は出来ないが、少しずつ心境が変わろうとしている。ほんのゆっくり、ゆっくりと。
可愛い妹が心配なのは姉として当然だと思うが、妨げてはいけない。
香菜には香菜の、私は私の人生がある。
今はもう着ていない桃色のワンピを思い浮かべ、そっと願いを込める。
今日、「アイドルのオーディション」というイレギュラー過ぎる人生のイベントに体当たりしてきた。
少しだけ、妹と気持ちを分かち合えた気がして満たされた心で玄関を開けた。

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