OLアイドル奮闘中!

雪華月ふわり

ライバル‥?

オーディションの結果を香菜に報告する為、スマートフォンを取り出した。
シャンパンピンクの端末には香菜とお揃いのシルバーの兎のチャームを付けている。
早速通話が出来る無料のコミュニケーションツールアプリを開き、発信した。

プルル‥
「あっもしもし?お姉ちゃん?」
一コールで電話に出るとハキハキした声で話し始めた。
試験は午前中で終わったらしく、合格していた為、友達とこの近くのカフェにいるらしい。
「一次合格していたよ。」そう言うと
本ッ当?!お姉ちゃん凄い!等と言い、はしゃぎながら跳び跳ねているのが目に浮かぶ。
「それじゃあバトンタッチだね。後は私に任せて!!」

二次審査まで後三十分程の為、急ぎ足でカフェへと向かう。
(意外と時間が無いな‥急がないと!)
事務所の廊下を右に曲がろうとした次の瞬間
「きゃっ!?」
驚いて顔をあげると、深紅のハイヒールを履いた女性が座り込んでいた。 
「ごっごめんなさい!!前をよく見てなくて。怪我は‥」
「ええ‥大丈夫よ。」
そう言いテキパキと立ち上がると、急いでおり、こちらを見る余裕もないらしく、早足で去っていった。
(オーディションの受験者かな?)
しかし、考えを廻らしている暇は無く、小走りでチェンジをする為に向かう。
幸い他に誰ともすれ違わずに会場を後にできた。

程なくして無事に香菜と合流し、テラス席に向かい合って座った。
「なんか友達に悪いことしちゃったね。」
「いいの、いいの。」
おしゃべりはまた出来るけどオーディションは逃したら無いかもしれないし。
香菜はそう言って、まだ少し残っていたアイスティーを空にした。
「あれ?スマホのストラップは?」
そう指摘され、初めてウサギのチャームが消え、紐だけになっていることに気付いた。
何処かに引っ掛けたのだろうか?
「あっ!」
急に声をあげたことにより香菜の肩がビクッと震えた。
此処に来る途中オーディション会場で女の人にぶつかってその時に落とした可能性が高い。

じゃあ廊下にあるかも知れないから、後で探してみるね。そう言うや否や
「じゃあ行ってきます!」
凛とした声を響かせながらパタパタと駆けて行き、数秒でその姿は見えなくなった。

(でも、あの人どっかで見たことあるような‥)

この場で記憶を手繰り寄せていても仕方がないので、香菜の健闘を祈りながら帰路についた。
to be continued.

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