好き同士ってめんどくさい

Joker0808

第45話




「う、うーん……」

 目を覚ますと、そこは風呂場では無かった。
 
「ここは……」

 俺は起き上がり、周りを見渡す。
 見覚えがあるような無いような……そうだ、ここはユートに最初に通された部屋だ。
 どうやら風呂場で気を失った俺は、この部屋に運ばれたらしい。
 
「はぁ……参ったな……」

 彩の肌を見て興奮して倒れるなんて……まぁ、あの状況じゃ仕方ないか……。
 俺はため息を吐きながら、布団をめくり立ち上がる。 そして気がつく、自分が全裸であることに……。

「………キャァァァ!!」

 なんて叫んでは見たものの周りには誰も居ないしまぁ良いか……。
 ん? それよりも待てよ……一体誰が全裸の俺をここまで運んだんだ?
 あの場所に居たのは彩だけだし……ってもしかして……。

「いやぁぁぁぁぁ!!」

 俺は色々と深く考え過ぎてしまい、思わず声を上げる。
 いや……まさかな……流石にユートが運んだだろ……俺全裸だったし……。

「とにかく服は……ってこれか?」

 服は無いかと探すと、ベッドの直ぐ側に服が置いてあった。
 デザイン的にこちらの世界の物だろう。
 ゲームとかに出てくる村人A見たいな服装だ。

「あ、目が冷めた?」

「ユート……俺が寝てから何時間経った?」

「一時間くらいかな?」

「ちなみに俺をここまで俺を運んだのは?」

「僕だよ」

「それはどうも……服もありがとな」

「その方がこの世界では目立たないと思ってね、今日はもう休むと良いよ、疲れたろ? 寝室を用意したから」

「寝室? ここじゃないのか?」

「あぁ、ここは客間だからね、二階の奥の部屋だよ」

「そうか……ならもう休ませてもらうよ……マジで色々と疲れたからな……お前のせいで!」

「彩ちゃんとお風呂に入れて嬉しかったろ?」

「ありがた迷惑だよ! あぁいうのは今度からやめろよな!」

「わかったよ、分かったから今日は早く寝た方が良い」

「言われなくても、じゃあお休み」

「あぁ……まぁ……ごゆっくり」

 俺はユートにそう言うと二階の奥の部屋に向かった。 
「たく……寝かせるなら寝室に寝かせろよ……」

 俺はそんな事を思いながら、部屋のドアを開ける。
 
「あぁ……疲れた」

 俺は伸びをしながらベッドの脇まで歩き、そのままベッドに倒れ込む。
 あぁ………疲れたぁ~後はゆっくり……。
 むにゅ。

「ん? むにゅ?」

「きゃっ! ちょっと何!?」

「あ、彩!?」

「ゆ、悠人!? ど、どこ触ってんのよ!!」

「ぶふっ!!」

 ベッドにダイブした俺を待っていたのは、寝間着姿の彩だった。
 彩は俺と目を合わせるなり、俺の右頬にストレートをお見舞いしてきた。

「な、何よ夜這い!? この変態! アイドルオタク!」

「ち、違うんだ彩! これはユートに言われて……」

 俺はそこで先ほどの悠人の様子を思い出す。
 寝る場所は別だったし、やたらと俺に今日はもう休むように言ったのはこの為か……。

「ってことは……」

 俺は確認の為に部屋のドアに手を掛ける。

「やっぱりか……」

「何がやっぱりよ! さっさと出て行ってよ!」

「出て行けるなら直ぐに出て行くさ……でも見てみろ」

「な、何よ……ま、まさか……」

「あぁ……また開かなくなった」

 はぁ……またしてもユートに騙されてしまった。
 あいつはなんとしてでも俺と彩をくっつけたいらしい……。

「はぁ……とりあえずベッド半分貸して」

「し、仕方ないわね……ま、まぁ非常事態だし……良いわよ」

 風呂の次は今度はベッドか……。
 俺は彩が向いている方向とは反対を向き、ベッドの端に横になった。

「……」

「……」

「……」

「……ねぇ……」

「……なんだよ」

「もっとこっち来れば? そんな隅っこで眠れるの?」

 行けるかっつの……。
 好きな子と風呂の次はベッドで二人きり……こんな状況、誠実な俺で無くても男子高校生なら色々と意識してしまう。

「好き同士ってめんどくさい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く