好き同士ってめんどくさい

Joker0808

第23話

 ヤバイ……このままでは彩との仲が更に悪くなってしまう……ここはなんとかフォローを……。

「す、すまん間違えた!」

「間違えたって何よ……」

「だ、だから……その……」

 あぁ……なんか言い直すのも恥ずかしくなってきた。 でも、言わないと俺と彩の距離も縮まらないし……。 
「何もないなら私帰るから!」

「あ! 彩!!」

 怒って帰ろうとした彩の腕を俺は掴んだ。
 彩は驚き肩をビクッと震わせ、俺の方を振り向く。
 怒っているようは表情だったが、彩の顔は真っ赤だった。

「な、何よ……」

「お、俺は……その……悪かった……だ、だけど……俺は……」

 自分の顔も赤くなって来ている事が、自分でもわかった。
 しかし、ここでやめる訳にはいかない!
 最後まで言い切らなくては、俺は何も変わらない!

「に、西井より……お前の方が……良いから」

「え……」

 言ったぞ!!
 もうこれ告白だろ!!
 やべぇ……メッチャ恥ずかしい!!
 俺は自分の言った言葉を思い出しながら、彩の顔を真っ直ぐに見つめる。
 彩の顔も更に赤くなり、俺から視線を反らす。

「な、何が……良いのよ……」

「え?」

 な、何が?
 何がってそりゃあ……あれ? 何が?
 西井よりも彩の方が良いって言った意味だったんだが、そんなストレートにそんな事を言うメンタルを俺は残してないぞ!
 てか、そんな返し方するなよ!!
 察してくれよ!
 俺は彩に対してそんな事を思いながら、返答を考える。

「な、何ってそりゃあ……」

 女性としてって言えば良いのか?
 それとも異性として?
 うーむ……わからん。
 
「お、お前と一緒の方が……退屈しない」

「は?」

 あ、これ絶対返答間違えた……。
 退屈しないって何だよ!
 普通に好きだって言えば良かったじゃん!
 なんで俺はいつもこういう場面でへたれるんだよ!!
 俺がそんな事を考えていると、彩が口を開いた。

「もう……何よそれ……ウフフ」

「わ、笑うなよ」

「アンタも昔と変わってないわよ……肝心な事は何も言えない」

「う、うるせぇな!!」

「まったく……西井さんもこんな馬鹿のどこが良いんだか……」

「ば、馬鹿とはなんだよ!! それに、俺と西井さんは!!」

「はいはい、わかったわよ。そりゃあ大好きなアイドルの方が良いわよね? アンタアイドルオタクだし」

「オタクじゃねーよ!!」

 俺はアイドルオタクじゃない!
 彩が好きなだけだ!!

「はいはい、もうわかったから……さっさとコーラ頂戴」

「お、お前なぁ……」

 俺は彩に先ほど買ってきたコーラを渡す。
 彩は俺から貰ったコーラの蓋を開け、飲み始める。

「はぁ……美味しい」

「それは良かったよ……」

「良かったわね、大好きなアイドルに飲んで貰えて」

「俺からしたら、仕事以外のお前は普通の女子高生だっての」

「何よ、さっきダッシュで買いに行ってたくせに」

「う、うるせぇよ! てか、見てんじゃねーよ!」

 先ほどまでは眉間にシワを寄せていたくせに、今は楽しそうに笑いやがって……本当に可愛いな……クソッ!!
 まぁだが、とりあえず誤解が解けただけ良かったとするか……。

「はぁ……なんか疲れた」

「じゃあ飲む?」

「え?」

「はい」

 そう言って彩は俺に自分が先ほどまで口を付けていた、コーラを俺に差し出す。
 え? てかこれって……か、間接キスじゃねーの!!
 
「どうしたの? はい」

 こいつはなんでこんな平然とした顔してんだ?
 意識してるのは俺だけか?
 ま、まぁ確かに……本当にキスするわけではないが……。

「じゃ、じゃぁ……」

 俺はそう言って、彩の手からコーラを受け取る。
 の、飲んでも良いのか?
 相手はトップアイドルだぞ!
 こんなところ、他のファンに見られたら、絶対に殺される!!
 
「い、いただきます」

 ま、まぁでも……本人が良いって言ったし……。
 俺は少し躊躇しつつも、彩が口を付けたコーラを飲んだ。
 気のせいか、今まで飲んだコーラの中で一番美味しい気がした。

「わ、悪いな……」

「別に良いわよ」

 俺は彩にコーラのペットボトルを返す。

「ねぇ……今度の土曜日暇?」

「え? まぁ……何もないけど」

「じゃ、じゃあさ……買い物付き合ってよ……一人で行くと、荷物とかあんま持てないし……」

「荷物持ちに使うつもりかよ」

「そ、そうよ! と、友達と行って、友達に荷物なんて持たせられないもの!」

「俺は一体なんなんだよ……」

「男子は良いの! そ、それに……アンタ以外に、男子の知り合い居ないし……」

 居ないのか……なんか嬉しいな……。
 
「と、ともかく、良いから付き合いなさいよ……」

「わ、わかったよ……」

 断るわけがない。
 もし、土曜日に予定が入っていたとしても、俺はそっちを蹴って彩と買い物に行く。
 
「良かったわね、大好きなアイドルとデート出来て」

「何かある度にアイドルって付ければ良いと思うな!」

 まぁ、本当に嬉しいんだが……。
 俺と彩はその後、直ぐに互いの家に戻った。
 一時はどうなるかと思ったが、彩への誤解も解けて仲直りも出来て本当に良かった。
 しかし、土曜日か……何を着ていこうか……。
 俺は家に帰り、自分の部屋のクローゼットの前で服を選び始めた。

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