アリス ー黒の旅ー

黒の旅ー五月蝿いなぁー

剣を手にし、堂々と歩を進める。赤い花を辿りながらずんずん進む。やはりこの道が1番良かったようだ。途切れる様子がない。嬉々としながら進むその姿はまるで大好きな家族が待つ家に帰る子供のようだった。しばらく何の変わりもない道を進み続けた。すると開けた場所に出た。そこにはたくさんの植物が植えられていた。普通じゃないのはその大きさ。自分よりも大きい花がそこら中に咲き誇っている。その中の道に赤く光る花は咲いている。「邪魔だなぁ」と思いながら花を掻き分けて進む。
すると1輪の花が
「あなた、見ない子ね?」
と話しかけてきた。
「さっき此処に来たばかりだから。」
簡潔に答える。こんな花に構っている余裕はない。
「あら、そんなに急がなくてもいいじゃない。私たちとお話しましょ?」
「そうよ!それがいいわ!」
1輪の花が話しかけてきたのをきっかけに他の花も話しかけてくる。
「ごめんなさい。今急いでるの。」
すると1輪の花が
「あら?あなた見た目が凄いことになっているわよ?真っ赤ね。まるで何かを殺してきたかのよう…」
他の花の動きがピタッと止まる。そしてざわめき。
「本当だわ。」
「真っ赤ね。」
「人殺し?」
すると1輪の花が
「落ち着きなさい。こんな小さな少女が殺しなんてする訳がないじゃない?ごめんなさいね?」
と謝った。この花を裏切った時ここはどうなるだろう?そう考えると楽しくなってきた。思い切って、
「いいのよ。だって本当に私、人を…いいえ、猫を殺してきた所なんですもの!!」
と全ての花に聞こえるように言った。その瞬間花達は悲鳴をあげはじめた。
「なんですって?!」
「本当に殺しをしてきたの?!」
あぁ、そんなに叫ばないでくれ。耳が痛くなりそうだ。
「えぇ!殺してきたわ!うるさかったんだもの!!」
負けないくらい大きく叫ぶ。そして
「あなた達もうるさいから殺していいかしら?!」
と叫ぶ前に剣を振りかざす。流石に血は出ないようだが、綺麗な花びらが散る。まるで祝福されているように気分が良かった。そのせいか、剣を振り回す手が止まらない。しばらく斬り続けていたが、流石に疲れて手を止めた。丁度最後の花を切り落とした所だったらしい。壁のように立ちはだかっていた花がなくなったせいか、周りが見えやすくなった。赤く光る花は小さかったので切らずに済んでいた。まだ森の奥へと続いている。少し時間をとられてしまった。でもまぁいいわと歩き始める。逆に少し楽しい時間だったかもしれない。またしばらく歩き続ける。今度は何も無いようだ。同じような景色が続く。まるで同じ場所をグルグル回っているようだ。だがそれは違うようだった。突然赤い花が途切れた。こういう時は絶対周りに何かあると学んだ。辺りを見渡す。ほら、やっぱりあった。そこには家があった。少し大きめの、だけど普通の家。庭は荒れ果て、草が生い茂っている。その癖、家の壁や窓、煙突は綺麗にされている。段々と興味が湧いてきて…



      ー人喰いの家に足を踏み入れた。ー

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