絶滅危惧種のパパになりました………~だから、保護して繁殖をしようと思います~

ブラックベリィ

0245★とりあえず、馬達を休ませよう


 御者台に座り、前方を見れば、旅商人・アデルのキャラバン隊が砂漠の中に走る街道へと、ちょうど入るところだった。
 神護は、アデルが街道に上がり、どちらの方へ向かうかを、よぉ~く見ていた。

 時間にして十分程度遅れて、神護の馬車も街道へとたどり着いた。
 結構な段差があり、かなり大きく揺れたコトで、白夜やリオウ、幻獣【カーバンクル】のコトが気になったが、誰も出て来るコトは無かった。

 ふむ、振動の軽減も入っているのかな?
 そう言えば、馬車の中に居る時は、そういうのを感じなかったな

 馬達は、神護からの号令を待ちつつ、街道へと力尽くで乗り上げ、旅商人・アデルが率いるキャラバン隊の後を極自然に追い始める。
 神護は、後部の2台の馬車も、自分が乗っている馬車同様、力尽くで街道に入り、付いて来ていることを確認して、先頭を走る馬達に声を掛ける。

 「よぉ~し、みんないい子だなぁ……もう前を追わなく良いぞぉー
  そしたら、速度をゆっくりと落とせ

  馬車を停泊できる路側帯を付けたら、そこに停まって休憩だ
  約束の水と風糖ふうとうをやるぞ」

 神護の言葉に、猛然ダッシュからゆっくりとした走りへと移った馬達は、ルンルンという音が聞こえそうな程、尻尾を揺らしながら走り続けた。
 そして、しばらく進んだところに、大きなキャラバン隊が停まれるほどの路側帯が見えた。

 「よぉ~し…あそこの路側帯で休憩だ……」

 そう、馬達に声を掛けながら、神護は内心で小首を傾げていた。

 あれ? アデル達の馬車隊の姿が全然見えないけど
 アデル達は、休まずに進んだのかな?

 馬達への休憩って、どれぐらいの間隔で入れてやれば良いのかな?
 まぁ、白夜の弟達は気になるけど、無理は禁物だよな
 なんせ、初めての馬車旅だし

 そう思いつつ、神護は軽く馬達の手綱を振る。
 それだけで、了解したとばかりに、路側帯へとスムーズに入って行く。
 それを確認し、背後を振り返れば、後ろの2台も同じように路側帯へと入っていた。

 ゆっくりと足を止めた馬達を確認し、神護は御者台からひょいっと降りて、先頭の馬達の確認に向かう。
 足を止めた馬達の身体は、やはり汗に塗れていた。

 本当なら、噴出した汗を丁寧に拭い、1頭1頭いたわってやりたいところだが、後ろに続いた2台の馬達も気になるので、神護は効率を重視することにした。
 馬が汗でを冷やすと、風邪をひいたりして体調を崩してしまうからだ。

 「とりあえず、風邪をひいても困るからな《清浄》と《微風》」

 神護は魔法で馬達の身体を綺麗にし、温風で乾かしながらマッサージするイメージを練り込む。
 先頭の馬車を引く馬達は、自分の身体の不快さが綺麗に消え、暖かく癒される感じ受けて、神護を嬉しそうに見るのだった。

 神護は、そんな馬達の鼻面や首筋を1頭1頭軽く撫で叩いてやる。

 「ごめんなぁ…手抜きで…もうちょっとだけ
  水とおやつを待っててくれな

  後ろの2台の馬達を綺麗にし終わったら………
  たっぷりの水とご褒美の風糖ふうとうを3粒づつやるからな」

 そう言った神護は、2台目の馬車へと向かい、馬達の汗を《清浄》と《微風》を使って綺麗にした。
 勿論、3台目の馬車に繋がれている馬達もである。

 ちなみに、神護が旅商人・アデルから手に入れた馬車には、1台に付き6頭の馬が繋がれていた。
 そう、馬車自体が巨大で重厚な為、6頭立てなのだ。

 ようするに、神護は1人で手早く18頭の馬の面倒を見なければならなかった為に、魔法を多用したのだ。

 また、神護はこの世界や交渉ごとに詳しく無い為、要求しなかったが…………。
 本来、6頭立ての馬車には、予備の馬が左右に1頭か2頭づつ、空身で付くものなのだ。
 馬が不調になった時のことを考えて………。






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