絶滅危惧種のパパになりました………~だから、保護して繁殖をしようと思います~

ブラックベリィ

0240★白夜は罪悪感を感じる


 そう思い、自分の気持ちに決着をつけた神護は、まだ遠い土煙へと意識を向ける。

 あん時の様子を考えれば、大商人・アデルが率いるキャラバン隊って
 たぶん、すごく早いんだろうなぁ~……狼獣人の護衛もしっかり居たし

 一定速度でサバンナの帯と礫砂漠れきさばくがまだらになっている、道無き道を走り、街道を目指してひた走る馬達に感心しながら、神護は住居性に富んでいそうな馬車の中を覗き込むコトにした。

 きちんとした出入り口の戸があるコトを確認した神護は、馬達が指示を必要としていないコトを前提に、御者台から立ち上がり、出入り口の戸に手を掛けて引く。

 引き戸を開けると、垂れ幕のように布が下り重なるようになっているので、チョイッと引っ張って、馬車の中を覗いてみる。

 ふむ、なるほど、この厚地の布で、外との温度差を保っているんだな
 中は薄暗い感じだな、何処かで採光しているのかな?

 もしかして、戸を開けるとほんのりと電灯が点くようになってるとか?
 まぁ、仕組みはわからないけど、うっすらと中を見れる程度にはなると
 じゃ無くって、どの程度のモンが入ってるかなぁ~?

 と、目を凝らして、中をしっかりと覗き込んでみると………。
 
 うわぁ~お……これは、けっこう色々なモノが入っていそうだな
 こっから軽く中を見ただけでも、着替えとかありそうだったし

 はぁ~………良かったぁ~…着たきりスズメは嫌だったんだよなぁ
 これなら、香辛料とか期待できるかも……欲しいって言っといたし

 そう思いながら、激しく揺れる御者台から周囲を眺め、楽しそうにしている白夜に神護は声をかける。

 「白夜、まだまだ陽射しが強いから、とりあえず中に入って
  少し休んでいた方が良くないか?

  まだまだ、成長途中の幼い身体だからな、疲労は良くない
  背中の翼にも良くない影響があるかも知れないしな

  それに、幻獣【カーバンクル】の雛の為にもその方が良いだろう
  馬車ン中の方が、確実に負担が少ないだろうからな

  こんな小さなナリして、防護の《結界》を張ったりしてるくらいだ
  安全の為にも、一緒に入っていろ

  どうやら、馬達は言うコトをきちんと聞いてくれるイイ馬のようだし
  これからしばらくは、どうしたって馬車旅になるだろうから
  少しでも体力を温存しておけ」

 神護にそう言われた白夜は、その表情を窺がうようにしながら言う。

 「入ってないとダメですか?」

 上目遣いでそう言う白夜が、まだ入りたくないというニュアンスで答えるのに、神護は肩を竦める。

 「ダメじゃないけど……疲れてないか?
  ちょっと強行軍したし………」

 その声音から、強制ではないと感じ取った白夜は、首を振って、御者台に固定しているベルトを外し、膝に掛けていた水の精霊の加護の刺繍がされた布を幻獣【カーバンクル】が入った鳥籠に掛けて、神護に両手を伸ばす。
 神護は、そんな白夜を優しく抱き上げる。

 「どうした? 白夜?」

 「父上 少しの間 こうしてて良いですか?」

 急に甘えっこになった白夜に、神護は優しく笑って抱き締めることで応えてやる。
 白夜は、神護の腕の中でぬくぬくとした安心感に、ほっとして気を抜いた。

 途端に、それは、寒気を伴なって来た。
 そう、自分だけが幸せな状態に居るという罪の意識が………。







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