絶滅危惧種のパパになりました………~だから、保護して繁殖をしようと思います~

ブラックベリィ

0238★街道までは、道が無いので大変です


 神護は、馬達に号令を掛けるように言う。

 「とにかく、街道だ、街道入ったら、水を飲ませてやるから頑張れよ」

 そう言って、神護は軽く先頭の馬達に繋がる紐を振る。
 2頭立ての縦3列に繋がれた馬達は、心得たとばかりに、軽く歩き始め、徐々に並足へと変え、ある程度の速度が出ると、猛然と走り始めた。

 その速度に、神護は心配になって、後ろの馬車を見るが、後続2台も同じように走り、付いて来ていた。
 そう、良く躾られた、訓練済みの馬達らしく、神護からの指示に素直に従い、先刻、アデルが一目散に向かった街道へと、何故か嬉しそうに走っていた。

 この時、神護は知らなかったが、砂漠の旅(神護に引き渡されるまで)の間、この馬達は軍馬というコトもあり、必要最低限の休憩と、水とエサしかもらっていない状態で、強行軍をさせられていたのだ。
 だから、神護が『街道に入ったら、休憩でお水』という言葉に、喜び勇んでいたのだ。

 そんな事情を知らない神護は、予想以上に礫砂漠れきさばくとサバンナがまだらに入った道無き道を疾走するコトで起こる酷い揺れに舌打ちしていた。

 「………っ……思ったよりひでぇー揺れだな……白夜、大丈夫か?
  流石に、礫砂漠れきさばくにサバンナ混じりだと思ったより揺れるな

  とにかく、街道にさえ出れば…少しは道が整備されているだろうから
  もう少しマシになるだろう

  思ったよりも揺れがひでぇーけど、街道までは我慢してくれな
  そしたら、俺達も少し休憩しような………流石に、キツイは

  あと、その幻獣【カーバンクル】の雛、抑えているがきつかったら
  馬車ン中にいれるから言えな」

 流石に、人手を入れてある街道と違い、礫砂漠れきさばくとまばらに生えた雑草のサバンナを走るのは、いかに車輪であろうと揺れる。
 いや、揺れるなどという可愛い表現ではおさまらないような、激しい衝撃の連続に、神護が心配そうな声でそう言えば………。
 白夜は首を振って、きゃっきゃと楽しそうに言う。

 「父上楽しいですぅ 砂漠を馬車旅ですよぉ~
  こんな風に 旅をするのは初めてです」

 とにかく、ただただ嬉しいらしい白夜に、少し苦笑しながら、神護はサバンナの様子と後続の2台を確認する作業をするのだった。

 しばらくすると、激しく揺れる馬車の振動に慣れ、後続に続く二台をそれほど気にしなくて良いことが理解わかり、落ち着いて前を向けるようになった。
 そうなると気になるのが白夜とリオウである。

 白夜は、よほど馬車旅が嬉しいらしく、御者台から振り落とされないように、車の後部座席に有るようなシートベルトのようなモノで、しっかりと腰部分で身体を固定し、周りを楽しそうに見ていた。

 一方のリオウは、御者台の背台部分に、横にデーデーと伏せて、両腕に顎を乗せ、うつらうつらし始めていた。
 馬車が猛然と走り出したコトで、駆け抜ける風を感じて眠りを誘発されたようだった。

 この安心しきった寝姿を見ると、リオウにとっては
 当座の危険はないってことなんだろうなぁ………たぶん

 この礫砂漠れきさばくとサバンナの帯に棲息しているだろう
 虹色オオトカゲが、リオウ達ヒリュオン族の天敵ってところなのかも

 流石に、あんな恐竜並みのなんて、そうそう居ないだろうし……
 いや、居たら困る、マジで………片付けるの大変だったし

 小さいのは良いけど、あそこまでの規格外は、もう二度とゴメンだ
 倒すのは簡単だけど、マジで処理が面倒だからな

 いや、たぶん腕輪にしろ巾着袋にしろ、丸ごと入れられるとは思うけど
 その後、結局自分で解体しないとだろうから………
 とりあえず、インベントリに入れたとしても
 解体という問題を、先送りするだけなんだよな

 それに、誰かに解体を依頼したとして、あの大きさだろう
 絶対に時間がかかって、質が落ちるに決まっている
 解体代だって、ばかに出来ないだろうしなぁ………

 まぁ…ホタルの子供達が全部孵ってからなら
 別に、あの巨大なのが現われても、問題ないからイイけどさ

 などと、神護はのん気なことをつらつらと考えていた。







コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品