絶滅危惧種のパパになりました………~だから、保護して繁殖をしようと思います~

ブラックベリィ

0147★火熊《ひぐま》と遭遇

 意外と花の蜜や樹液を集めらしく、飛行速度が遅いミツバチの後を、神護は慎重に追う。

 もちろん、ハチミツを狙う火熊ひぐまを警戒しながら…………。

 神護は、ゆっくりと飛ぶミツバチを追跡する。

 巨大なミツバチが飛ぶ空間は、バニラシードを採取した空間よりはやや温度が低い(それでも、樹海の中ではかなり暖かい)が、かなり暖かかった。
 神護は、その空間を追跡しながら思った。

 なんか……あの巨大なミツバチが飛ぶ空間は………
 【竜ケ峰りゅうがみね】の樹海の中でも暖かい場所のようだ

 まるで、樹海の中に温暖の帯が……川のように流れて続いている
 ………あ……この空間………少し温度が上がった

 ミツバチを追跡してたどり着いた空間へと足を踏み入れた瞬間に、神護は気付く。

 あのバニラシードが生えていた……空間と同じくらいの温度だ
 って…この甘い香りは………ここにも……あるのか?

 そう似たような空間には、やはり長大な大樹が生えており、ぽっかりと空間がひらけていた。
 そして、その大樹に、蛇のように絡んでいるバニラの蔓を見付ける。

 白夜は、バニラの存在を、名前すら知らなかった
 つーことは、香辛料として出回っていないと思ってイイ

 ちょっと、白夜には悪いけど、ここでもバニラシードを
 採取させてもらおう

 神護は、腕に抱えている白夜に向かって言う。

 「白夜、悪い……せっかくだから、ここでも……」

 そう言いかけた神護の背後に、突然、強獣の火熊ひぐまが出現し、その手を振り上げていた。
 火熊ひぐまは、神護達を容易く獲れるエサと認識したのだ。

 が、その時には、神護は白夜を腕に、タンッと岩へと飛び上がり、クルッと向きを変える。

 そして突進して来る火熊ひぐまの心の臓へと、思いっきり掌底しょうていを放っていた。

 なぜ、掌底しょうていかというと、剣で切ると血が飛び、余分な肉食系の獣を呼んでしまうからだ。
 もちろん、抜き手などしたら、心臓をくり貫いて、血潮が飛んでしまうこと間違いなしだったので、掌底しょうていにしたのだ。

 それでも、その強靭な毛皮には、くっきりと神護の掌底しょうていの手形に沈んでいた。

 神護の一撃に、火熊ひぐまはあっさりと心の臓の鼓動を止めて、ズズゥ~ンと地響きを立てて倒れた。

 ふぅ~…こんなところで…剣で火熊ひぐまを切ったりしたら
 流れた血の匂いで、どんな危険で獰猛な肉食の獣が現れるか
 わかったモンじゃねぇ~からな…………

 うまいこと、一撃で死んでくれて助かったぜ
 とはいえ、このまま火熊ひぐまを放置するのも不味いよな

 この火熊ひぐまって、食べられるモノなのか?
 もし、食べられるモノなら、腕輪か巾着ン中に入れておくか?

 あとで、卵から孵ったチビ飛竜達のご飯として、火熊ひぐま
 食べさせてもイイしな………って……ぅん?
 
 自分の一撃であっさりと死んだ火熊ひぐまを無感動に見下ろしていた神護は、ハッとする。

 そう、神護は、その空間の大樹の根元のそこここに生えているモノに気付いたのだ。




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