絶滅危惧種のパパになりました………~だから、保護して繁殖をしようと思います~

ブラックベリィ

0143★ただよって来た甘い匂い

 すべての風糖ふうとうを採取し、巾着袋へと入れた神護は、さっさと白夜を抱き上げ、元居た対岸へとあっさり戻り、再び下流に向かって歩き始める。

 一方の白夜は、質問の答えを聞いた後、神護の意識が自分から外れたのを感じて、手渡された風糖ふうとうを再び食べ始める。

 1粒1粒、微妙に味わいが違う為、夢中になって食べていた。
 幼い姿で、マグマグ食べる姿にホッとしながら、ひたすら歩き続けた。

 ゆったりとした傾斜がある小川のサイドを歩き続けた神護、戸惑いを浮かべた。
 小川が、急に幾つもに枝分かれしていたのだ。

 「どうする? 白夜…どれが本流だと思う?」

 聞かれた白夜は、ジィーっと3方向に分かれている小川を見る。
 どれもが同じくらいの細さなので、明確にどれと言えないので困ってしまう。

 〔どれって……言っても…ほとんど変わらないからなぁ……
  ここはもう 真ん中行ってみようかな?〕

 「父上 どれか わかりませんので どうせですから
  真ん中 行ってみませんか?」

 白夜のセリフに、同じことを考えていた神護は、くすっと微笑う。

 「そうだな……んじゃ……真ん中ってことで………」

 白夜を腕に、石や岩がゴロゴロしている小川の岩の上をトントンと飛び跳ねて、真ん中の小川のサイドを再び歩き始める。

 ただひたすら、下流に向かって歩き続けた神護は、ふわりっと………とても、あまぁ~い香りを感じて顔を上げる。

 このすっごく匂い匂いって………もしかして………
 こっちにも、有るのか?つーか、あって欲しいな
 どこから、この甘い匂い、漂ってくるんだ?

 その甘い匂いがとこからきているのか知る為に、神護は歩みを止める。

 「どうしました 父上?」

 白夜は、神護が立ち止まり、キョロキョロしているのに気付いて問いかける。

 「ぅん? ああ……今…すっげぇ~…甘い匂いがしたんでな
  その匂いが知っているモノに酷似しているんでな

  もしかして…バニラの木…いや、あれっても蔓性だっけか?
  確か、蘭科だったような……最小の蘭って……いや……

  とにかく…御菓子に使うと……とても……美味しくなるんだ」

 うまく説明出来ない神護は、ただよってきた匂いを求めて、改めてキョロキョロする。

 「甘い匂いですか?」

 そのセリフで、腕に抱いた白夜の位置では、その匂いは鼻に届かなかったようだ。

 神護は、その事実に気付き、白夜を抱いた腕を持ち上げ、顔の位置が自分と同じくらいの位置へと持って来る。

 途端に、鼻をひくひくさせた白夜が、喜色を浮かべる。

 「本当だ すごく甘い いい匂いだ」

 神護は自分の気のせいじゃなかったことにホッとしながら、甘い匂いの元をたどろうと、辺りを見回す。
 もちろん、その甘い香りに魅了された白夜も、キョロキョロした。







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