絶滅危惧種のパパになりました………~だから、保護して繁殖をしようと思います~

ブラックベリィ

0021★ビャクヤの秘密1

 飛翔族の皇太子ラー・レイ・ビャクヤは、王宮を灰燼かいじんとする魔術を放った後、空間転移で1番よく使っていた秘密の部屋へと移動していた。

 そこには、そこそこの食料と、他国の禁断と呼ばれる類いの魔道書が保管されていた。

 もちろん、偽名を使い借りていたモノだ。
 まさか、飛翔族の皇太子が、こんな下級貴族が使うような部屋を、こっそりと借りて使用しているとは思わないだろう。

 当然、この部屋は完全に、ビャクヤだけの空間で、父の鳳皇ほうおうころか、弟達も知らない、完全な個人部屋だったりする。

 勿論、使用人なんてモノも存在しないので、自分のことは自分でしていたし、掃除も自分でおこなっていた。

 「ふっ……これも……残念だが………
  処分するしかあるまいな」

 そうポツリとつぶいたビャクヤは、その部屋に置いていた、たくさんの書物や魔道書などを石造りの床に置いた。

 もちろん、ここでの簡単な食器や着替えなども…………。
 山となったそれらを、これから失う切なさに溜め息が漏れる。

 ビャクヤは、部屋の中にあった自分の痕跡が残るモノ全てを、ここに集めるのにまるまる2日かかっていた。

 これだけ集めるのに………
 費用も…時間も…てまも………はぁ~………

 だが この私物には
 私の《魔力波》が残っている

 己が欲望に塗れた あのおぞましい男 
 国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王
 けして 我らを捕らえることを諦めないだろう

 弟達は 無事逃げおおせただろうか?
 ………じゃない 今は 私自身だ

 が翼の祈願成就の《力》は強い

 そして 願えば 願った通りのことを
 おおよそは かなえられる

 かならず 私は狙われ 追われ続ける
 なんとしても 奴等の手から逃れねば……

 かならず 真の故郷にたどり着き
 はるか 遠い昔に 大半を封じられし
 真の《力》を取り戻さねばならない

 私は 私の翼に 我が弟達の無事を
 妹姫や民達の 無事を願おう
 
 その為なら 今まで集めた
 英知を失ってもかまわない

 コレがあると 追われやすくなる
 その可能性があるからな 

 「…っ… いかに 全てのモノを
  灰燼かいじんとしようと
  私の部屋の移動術による

  軌跡きせきが 何時見付かり
  ここへ強襲きょうしゅうされるかわからんからな

  かなりもったいないが
  ここで 処分するしかないな」





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