choice01

ノベルバユーザー329392



 三人の検死を、葵と有紀はしている。
 美夢と容子は互いに抱き合い涙を……椿は下を向いて震えている。
 歩と九条はただその場に立ちすくむしかなかった。
 検死の結果……三人とも愛美と同じで、拳銃による射殺…。
 九条が言った。
 「山村さんは……この旅が終わったら…別れた家族に会いに行こうとしていたそうだ」
 歩が聞いた。
 「家族に?」
 九条は続けた。
 「ああ……昔、事業に失敗して多額の借金を背負って、家族は離散したそうだ。しかしその後…血の滲む努力をしたんだろ、借金の返済まであと僅かだったようだ」
 椿は言った。
 「この旅での報酬で借金が完済出来る予定だったようです…」
 椿は泣いているのか……肩を落として下を向いている。
 九条は拳を握りしめている……悔しさが伝わるほどに…。
 皆は一度解散する事となった……皆、朝食をする気分ではなかったのだろう…。
 部屋に戻った葵はいつもの仕草で考え事をしている。
 髪をクルクル回している葵に美夢が言った。
 「減っちゃったね……12人も居たのに…」
 美夢はアイスカフェラテを差し出した……両頬には涙の跡がついている。
 「無理はするな……美夢…」
 ただ優しい葵の言葉にも、美夢は出来る限り、気丈に振る舞った。
 「私だけ泣いてられないよ……皆頑張ってるんだから…」
 「……そうか……」
 美夢は不思議そうに言った。
 「でも不思議よね……死んだ人が消えちゃう何て…」
 「確かにそうだな……ありえない…」
 「なんか……ああいうのを、天に召されるって言うの?」
 「天に召される?」
 「よく童話とかでもあるじゃない……天使が死んだ人を天国に連れていくやつ…」
 「天使……天に召される…連れていく…」
 葵は何かブツブツ言っている。
 美夢は不思議に葵に言った。
 「どうしたの?葵……ブツブツ言って…」
 葵は突然叫んだ。
 「そうか…そういう事だったのか!」
 「美夢!僕たちは脱出出来るぞ!」


 正午にパーティールームに集まった皆は葵の言葉に驚いた。
 「脱出できるって…本当かいっ?!」
 九条が、声を荒げた。
 葵は口角を上げて言った。
 「ええ……本当です…」
 皆は驚きと、喜び、戸惑いか混ざった感じだ。
 葵は皆の興奮を抑えるように言った。
 「ただし、時間がありません……今晩脱出します…」
 九条が言った。
 「今晩?」
 「はい……少し準備がいるので時間を下さい…そうですね、22時に僕の部屋に…美夢はそれまで歩さん達といてくれ…」
 九条が言った。
 「一人でいるつもりかい?危険だよ!」
 葵が言った。
 「犯人はまだわかりませんが……おそらく外部犯でしょう…皆さんにはアリバイがありますから……それに僕は死にませんよ…」
 歩が言った。
 「九条……ここは葵君に任せよう…」
 有紀も歩に賛同する。
 「そうだな我々には……どうにもならない」
 二人に圧された九条は渋々納得した。
 「わかったよ……ただしくれぐれも警戒は怠らないように…」
 葵は九条に言った。
 「感謝します九条さん…では僕は先に戻り、一眠りします…最近寝ていないので…」
 有紀が言った。
 「準備じゃないのか?」
 葵が言った。
 「寝るのも準備の一つのです……皆さんも今晩のために眠って下さい…因みに鍵は開けておきますので…一応声はかけてください…」
 九条が言った。
 「無用心だよ…」
 「心配は無用ですですチェーンはかけておきますので…それでは…」
 美夢が心配そうに葵に言った。
 「葵……」
 葵は美夢に表情を緩めて言った。
 「美夢……心配するな……僕を誰だと思ってる…」
 そう言うと葵は、美夢の頭を軽く叩いて、自分の部屋に戻ってしまった。
 葵の出て行ったパーティールームは、しばし沈黙に包まれた。
 容子が言った。
 「葵君……大丈夫かな…」
 美夢が答えた。
 「大丈夫ですよ……あいついつも、ああなんです……じっとしてなくて…」
 有紀が言った。
 「美夢も大変だな……葵の面倒をみるのは骨が折れそうだ…」
 美夢は少し考えて答えた。
 「でも……じっとしている男は、つまんないでしょっ?」
 有紀は少し驚いて……そして美夢を感心した…真意を最後まで言わない葵の事を、根拠なしで……ただ信じている。
 有紀は言った。
 「お前も強いな……美夢…」
 「そんなことないですよ……すぐ泣くし…」
 歩が言った。
 「いや、美夢ちゃんは強い……俺たちも見習おう…」
 九条が言った。
 「そうだな……我ながら情けないが、葵君を信じよう」
 こうして皆は葵の指定する時刻まで、各部屋で待機する事になった。
 期待と不安が入り交じった、難とも言い難い気持ちを胸に…。
 その時を待った。

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