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ノベルバユーザー329392



 先程まで座り込んでいた葵は立ち上がり、外に出ようとする。
 それを見た歩は葵を止めようとして言った。
 「どこに行くつもりだい?」
 葵は振り向く事なく言った。
 「広場ですよ……もう正午は過ぎました…」
 歩は葵の腕を掴んだ。
 「危険だ……君だって見ただろう?あの炎を……それに犯人は拳銃を所持しているんだぞっ!」
 葵は歩の目を見て、言葉に力を込めた。
 「その犯人の手がかりがあるかもしれないんです…」
 歩は大声で葵に言った。
 「君が死んだら終なんだぞっ!」
 すると有紀が言った。
 「だったら……年長者の私たちが、葵を守らねばな……行くぞ…」
 歩は有紀に言った。
 「何を言ってんだっ?!有紀まで…」
 「こうなったら、こいつは引かないぞ……それは歩もわかっているだろ?」
 葵は歩に言った。
 「僕は自暴自棄になどなってませんよ…」
 「だったら何故…」
 「タイミングがよすぎます…」
 「タイミング?」
 「うまく言えませんが…察して下さい…」
 有紀が言った。
 「行くしかないな……私も気になる…」
 歩は仕方なしに言った。
 「しゃあないな……いいか?九条…」
 九条は他の皆の様子を見て言った。
 「わかった……ただし30分だけだ……必ず戻ってくれ…」
 葵は九条に言った。
 「感謝します…九条さん…」
 順平が焼死した広場に向かった三人は、あらためてこの島の異常さを実感した。
 焼けた芝や飛び散った土などが、キレイにもとに戻っている。
 歩が言った。
 「つくづく……驚かされるなぁ…」
 葵は鉄のボックス付近を丹念にしらべている。
 葵は言った。
 「妙ですねぇ……何故ここまでキレイに?…」
 すると葵は何かを見つけた。
 それは『黒い樹脂製の小さな物体』だった……葵はそれをハンカチ越しに摘まんだ。
 「何でしょう?これは?」
 有紀がそれを見て言った。
 「元は何かの棒か?…折れたような跡があるぞ…」
 有紀の言うように、先っぽは折れたような跡があり、もう逆側の先っぽは熱で変形したのか…丸みがある。現状の長さは3cm程だ。
 葵はそれをジッパー付きの袋に入れて保管し、それをまじまじ眺めて言った。
 「ん?これって…」
 有紀が言った。
 「で……わざわざリスクを犯してまで、我々をここに連れてきた理由は何だ?」
 葵が言った。
 「流石は有紀さん……察しがいい…」
 歩は驚いて言った。
 「なに?…現場検証じゃないの?」
 葵が言った。
 「それもありますが……僕にはどうしても納得がいかない事があります…」
 有紀が葵に確認した。
 「私と歩に話してもいいのか?」
 葵は目を閉じて、そして力強く答えた。
 「あなた方は信用できます…」
 有紀が言った。
 「何故言い切れる?」
 葵は自分の考えを言った。
 「歩さんは……誰よりも命を重んじています。その歩さんがあなたを『戦友』と言った…理由はそれだけで充分だと思いますが…」
 歩が言った。
 「葵君……」
 有紀が言った。
 「そうか、ならいい……まぁ歩はともかく、私は犯人じゃないがな…で?何を云いたい?」
 歩にはもはや突っ込む気力もないようだ。
 葵は言った。
 「どうも後手になりすぎています……それにあれだけ人間不信になっていた順平君が、部屋を飛び出すと思いますか?」
 有紀が言った。
 「確かにそうだな……順平の部屋は08番で、広場は反対側だ……呼び出された可能性が高い…」
 歩が言った。
 「でも順平君が死んだ時には、全員にアリバイがあるんだぜ…」
 葵が言った。
 「次の疑問がそれです。愛美さんが殺害された時は全員にアリバイがなかった……しかし、何故今回は全員にアリバイがあるんです?」
 有紀が言った。
 「たまたま……とも、言えるが……違和感は感じるな…」
 葵が言った。
 「それにタイミングが良すぎる……まだうまく言えませんが、犯人は僕たちの一手先を、常に行っているような気がします。全てを見透かされたような…」
 歩が葵に言った。
 「つまり……どういう?…」
 葵が言った。
 「犯人はやはり内部犯だと僕は思います…」
 三人が広場で現場検証をしてるのを九条がパーティールームの入り口から見ている。
 山村が言った。
 「皆さん大丈夫ですか?」
 「ええ…今のところ……もう戻ってきそうです」
 九条が言った通り三人はパーティールームに戻ってきた。
 九条が葵に言った。
 「収穫はあったかい?」
 葵が答えた。
 「物的証拠になる物はとくに……しかし広場は焼けた形跡などは消えて、キレイになっていましたよ…」
 山村が言った。
 「異常ですね…」
 葵は言った。
 「しかしこれで、この島がプログラムで形成されてる可能性がより高くなりました…」
 九条が言った。
 「これからどうすんだい?」
 「僕はこれから全力で脱出方法を考えます……ここを解放しない限り僕らに先はありません…皆さん出来るだけ協力を…」
 皆に異論はなかった……今はそれにすがるしかないのだ。
 九条が話を変えるように言った。
 「組分けの話なんだが……少し変更しようと思うんだけど…」
 歩が聞いた。
 「どう組むんだ?」
 九条が説明した。
 「君達……葵君、美夢ちゃん……歩と片岡さんの組はそのままで、容子君と山村さんを交換しようかと…」
 葵が言った。
 「何故ですか?」
 「一ノ瀬さんが……男に囲まれるのは、もう我慢の限界らしい…」
 九条は自分で言ってて悲しそうだ。
 葵は九条に同情しつつ言った。
 「問題ないでしょう……確かに一ノ瀬さんには酷な環境だったでしょう……気分転換も必要です、僕たちの身の回りの仕事もしていますからね…」
 こうして昼食を食べて、新しい組分けで一度解散し、夕方の6時に12番の部屋の前に集まる事にした。
 犯人は拳銃や火炎瓶を所持しているので、時計台は止めたほうがいいと…光一が提案した。
 部屋割も少し変更した。10番の部屋に葵と美夢、11番の部屋な歩と有紀が…1番の部屋に九条、椿、容子が…そして最後に2番の部屋に堂島夫婦と山村に決まって、解散した。
 夕食を何事もなく終えて皆はそれぞれの部屋に戻った。
 部屋に戻った葵は、髪をクルクル回している……考え事をしているようだ。
 「やはり転送倉庫の機能には武器や、危険物はない……どうやって拳銃を入手した?」
 「最初から持ってたんじゃない?」
 「拳銃何てそう簡単に手に入る物じゃない…」
 葵はそういいつつも可能性はあると思った。
 九条は財界、政界様々なパイプがある…手に入れようと思えば手に入る。
 歩は戦場カメラマンで武器弾薬がある地域で、シャッターを切っている……この中では一番入手が簡単に出来る。
 しかし歩の人の命への執着は異常だ……しかも戦場カメラマンはその使命から武器を嫌う……そんな歩が人を、ましてや嫌いな武器で人を殺すのは考えにくい……。
 山村は?……彼の素性は明らかになっていない……そして椿……彼女も素性は明らかになってない…。
 ……拳銃はどこから?……。
 美夢が呟いた。
 「裏サイトで手に入れたとか、よくニュースでやってるよね」
 「裏サイトか……でもここは通信が…ん?まてよ……だとしたらあれは…」
 「どうしたの?葵…」
 葵は何かブツブツ言っている。
 「だとしたら今までの僕の考え方がガラッとかわるぞ……そうすれば残るはあれだ…」
 しかし葵の閃きは虚しく…またも悲劇が起こる事となる…。




 ……深夜……


 (どうして俺が?…)


 (残るは…俺だけだ…) 


 「俺はこんなとこで死ねないんだっ!」


 ……パンッパンッ!
 銃声が二発響く……。


 (やっと…家族に…会え…る…。取…も、ど…せる…と…)




 ……六日目…午前八時……
 



 葵と美夢は朝の集合時間のため、警戒しながら外へ出た。
 部屋を出た瞬間それらは、目に入った。
 もうなれてしまったのか……驚きはあったが、衝撃はあまりなかった。そして、お約束のあの臭い…。
 「あ、葵…」
 美夢は葵の腕を掴んだ、声は弱々しかったが…腕を掴んだ力は強かった。
 葵たちを確実に追い詰めるように…それはあった。
 02番の部屋の前に…。
 堂島夫婦と山村の死体が…。

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