choice01

ノベルバユーザー329392



 「順調に対応していただいて、安心しました…」
 「そろそろ狩り時か?」
 「ええ……だいぶ選別も出来ました……」
 「では…『あれ』を渡す者を決めたと?」
 「ええ……あなた方に公開するつもりは有りませんが……」
 「この期に及んで、この私でさえ信用しないのか?」
 「いえ、ただ……あなたは顔に出やすいので、それにその方があなたも面白いのでは?」
 「痛いところをついてくる…富豪達の表情を見るとどうしてもな…私にはポーカーフェイスは出来ないようだ」
 「では…そろそろ富豪たちに集まっていただきましょうか…高揚感が冷めぬうちに……」




 ……二日目…午後十二時三十分……。


 前日の夕食はそれなりに盛り上がり、皆が楽しいひとときを過ごした。
 葵もそのなかで、楽しんだ……。
 不可解な事は多数あるが……とにかく楽しめる事は悪いことではない、愛美の酒癖の悪さが、葵は少々イラついたが、他は特に問題はなかった。
 葵の部屋をノックする音がする……。
 葵がドアを開けるとそこには有紀がいて、その隣には九条と歩がいる。
 有紀が言った。
 「葵……少しいいか?」
 三人の表情は……少し硬い。
 「おはようございます…お三方……」
 九条は呆れ気味に言った。
 「おはようって、もう正午だよ……」
 「眠ったのが遅かったので……まぁ入って下さい……たいしたもてなしは、できませんが…」
 そう言うと葵は三人を部屋へと招いた。
 葵は三人を招き入れると「適当に座って下さい」と言い、用件を聞いた。
 「で?どうしました?表情からして昼食の誘いでは、なさそうですが……」
 九条が言った。
 「昼食は……じきに山村さんが用意してくれるよ…」
 有紀が言った。
 「その山村氏が昼食の準備に取りかかった時に、気がついたようなんだが…」
 「何をです?」
 「昨日使ったはずの食糧が…『元に戻っている』とな…」
 葵は顔をしかめて言った。
 「『元に戻っている』…それは僕らがこの島に来た時の状態になっている……と、言う事ですか?」
 九条が言った。
 「そういう事だね……因みに誰も補充してないよ、補給船が来た形跡もないからね」
 葵が冗談混じりに言った。
 「まぁそうでしょう……でも、これで食糧難にはなりませんね…」
 歩がすかさず突っ込んだ。
 「確かにそうだけど……そういう問題じゃないでしょっ!」
 葵は言った。
 「わかってますよ……ただ、面白いと言いたいところですが…」
 有紀が言った。
 「厄介だな……」
 葵が言った。
 「ええ……厄介です、確かに食糧難を避けれるのは好ましいですが……元に戻るのは食糧だけではないでしょう」
 有紀が言った。
 「そうだ……これで劇薬の管理が難しくなった…」
 「使用しても、元に戻りますからねぇ……ただ『条件』があるはずです…」
 葵の言う『条件』のフレーズに三人は顔を見合わせた。
 九条が三人を代表して、葵に聞いた。
 「条件って……なんだい?」
 葵はいつものように髪をクルクル回して説明し始めた。
 「まず、僕らがこの島に着たのが昨日の午後1時30分前後……そのあとに夕食用の食糧を使い……おそらく今日の朝、何人か朝食を用意してもらったはずです……」
 有紀が答えた。
 「私と、堂島夫婦は午前9時頃に和食の朝食をいただいたが…」
 葵は三人に聞いた。
 「山村船長が昼食の準備を始めた時刻は?」
 歩が答えた。
 「さっきだから……12時くらい……そうかっ!」
 歩のハッとした表情を確認すると、葵は不適な笑みで説明を続けた。
 「そうです……答えは簡単です。つまり、昨日の午後1時30分~今日の正午までは『使った物は減ったまま』だった事になります」
 さらに葵は言った。
 「少し調べたい事があります……今日誰かプールは使用してましたか?」
 九条が言った。
 「まだ誰も使っていないはずだが……」
 「では……昼食時でいいので、僕がいいと言うまでプールの使用は禁止して下さい…あと、医務室の使用は必ず九条さんか、歩さんが付き添うように……劇薬などの見張りを予て……」
 九条が言った。
 「わかった……そろそろ皆、昼食に集まる頃だ。僕から伝えよう…」
 「感謝します……そして有紀さん…」
 有紀は葵の言いたい事を察してか、先に答えた。
 「「プールの水を調べろ」だろ?」
 「お願いします……あと、島を囲っている水面の水もお願いします…」
 「了解だ…ふふ、面白くなったきたな」
 歩が呆れ気味に言った。
 「面白がっている場合じゃないよ……明らかにおかしいだろ!?薄気味悪いし」
 葵が言った。
 「確かにこの島は、ありえない事が多すぎます。太陽が無いのに朝昼晩が、存在する。パソコンと倉庫をつなぐ謎の転送機能など…」
 歩が言った。
 「現実離れし過ぎている…」
 葵が言った。
 「とにかく九条さんと歩さんは昼食に行って下さい。有紀さんは申し訳ないですが昼食は後回しで……」
 有紀は笑って言った。
 「ふっ、人使いが荒いな……まぁいい、私も興味がある」
 九条が呆れ気味に言った。
 「皆を誤魔化す僕の身にもなってくれよ……」
 歩が言った。
 「あきらめろ、九条……それがお前の役割だ」
 歩が九条の肩を叩き、部屋を出てパーティールームに向かった。
 葵が言った。
 「それでは僕たちも向かいましょう…」
 葵と有紀はプールに向うため部屋を出た。
 部屋の外に出たが、パーティールームに向かった歩と九条以外、人の気配はない。
 どうやら他の皆は昼食をしに、パーティールームに行ったようだ。
 葵と有紀は真っ直ぐプールに向かった。
 目的地に着いた二人は早々に採取を始めた。
 有紀は小さな小瓶を二つ持ち、一つをプールの水を、もう一つに島を囲っている水面の水を入れ、プールの水が入った小瓶にマーカーで印を着けている。
 そんな有紀の様は、格好よく見える…内科医というより、美人科学者のようだ。
 葵にいたっては、芝の一部と、その下にある土を採取している。
 採取している葵は広場の入口の右すみにある、高さ1m程の鉄のボックスらしき物を指で指して言った。
 「有紀さん…昨日あんな物……ありましたか?」
 有紀も不思議そうに言った。
 「いや、私の記憶にはないな…」
 葵はボックスに近づいて、その物を確認する。
 ボックスは鉄製で、これまた鉄製のとって付の蓋が付いてる。
 葵はとってを握って、蓋を開けた。
 中は……空っぽだ。ただ、大人が一人入れるくらいのスペースはある。
 「なんなんでしょう?この箱は?昨日は確かになかったはずですが…」
 「ゴミ入れか、何かじゃないのか?」
 そう有紀が言うと、葵は何か閃いたように言った。
 「有紀さん!ここで少し待っていて下さい…」
 そう言うと葵は走って自分の部屋に戻った。
 時間にしたら1~2分くらいだろうか……手に空のペットボトルを持って、葵は戻って来た。
 「いったいなんなんだ?葵……」
 有紀に返事をする事なく、葵は真っ直ぐボックスに向かい……ボックスの蓋を開け、空のペットボトルを空のボックスに入れて、再び蓋をした。
 しばらく間を取り、葵は意を決したように、とってを握って蓋を開けた。
 ボックスの中を確認した葵は不気味に笑って、有紀を呼んだ。
 「ふふふ……来て下さい有紀さん…」
 有紀はなんなんだ?といった感じで葵に言われるまま、ボックスの中を見た。
 ボックスの中を見た有紀は目をしかめて言った。
 「これは……いったい?」
 有紀が驚くのも無理はない…なぜなら、あるはずのペットボトルがそこにはなく……ボックスの中身は何事もなかったかのように、空だったのだ。
 有紀が言った。
 「なぜ気づいた?」
 葵が答えた。
 「逆の可能性を考えてみました…」
 「逆の可能性?」
 「はい……パソコンと六時の方向の倉庫……そうですね『転送倉庫』とでも呼びましょうか…」
 有紀が言った。
 「物が現れる倉庫と、物を消すボックスか……」
 「そういう事です……それにしても主催者は何がしたいのでしょうか…」
 「さぁな、ただ言える事があるとすれば……あまり良い趣味とは言えないな…」
 「ええ……悪趣味です」
 有紀は葵に聞いた。
 「それでなぜ水を調べる?」
 葵は答えた。
 「僕の予想では、水の状態は…昨日有紀さんが調べた状態になっているでしょう」
 有紀は何かに気付いたように言った。
 「そうか……だとすれば……おかしい…」
 「ええ……昨日は複数の人が遊泳してました……」
 有紀は言った。
 「だとすれば、汗の成分や皮脂、垢などが、検出されなければならない……」
 「さっそく調べましょう……」
 そして二人は実験室へ向かい……採取した水を調査した。
 葵の予想通りプールの水は昨日のままだった。
 葵が言った。
 「やはり……プールもですか……どうやらこの島は決まった時間……つまり、24時間に一回、リセットされるようですねぇ…」
 葵が言うと有紀は言った。
 「ああ……だか、それよりも厄介な事がわかった……見てみろ」
 有紀に促され、一つの資料を見た葵は言った。
 「これは……」
 「この資料は、島を囲っている水面の水の分析結果だ」
 「予想はしていましたが……塩分がありませんね…つまり、海水ではない」
 「ああ……つまり、ここは海に浮いた島ではないという事だ」
 「まぁ、太陽が存在しない時点で、ある程度予想はしてましたが……」
 有紀は言った。
 「証明してしまったな……我々は隔離されている事を…」
 『隔離』?何の為に…。
 ネガティブなそのフレーズは、他のメンバーにも重くのしかかる事を、二人には安易に想像できた…。

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