choice02~球体の楽園~

ノベルバユーザー329392

違和感

昼食後、葵は湖に向かった…特に理由はなかったが、何となく向かった。


湖にに到着した葵は、呟いた。
「湖と言うより、池…ですね…」


波の立たない湖は静かすぎて、どこか不気味さを感じさせる。


刷ると後ろから声がした。


「あら…月島君、こんなとこに何の用?」
祥子が小さな湖の絵を描いていた。


葵は答えた。
「ただの散歩ですよ…」 


「ふふふ…退屈なのね…。よかったらあなたも、どう?」


「僕は絵を描けません…観賞してる方が、自分には合ってます」


葵は祥子が持って来ていた、絵を見つけた。
同じ湖の絵が2枚ある。


葵は聞いた。
「これも、祥子さんが?…」


「そうよ…どう?…」


それは綺麗にデッサンされた湖の絵で、色合いなども上手く描かれていま。


「2枚共…おじょうずです…、うん?…」


葵の異変に祥子は反応した。
「どうかした?」


葵は何事も無かったように答えた。
「いえ、なんでもありません…気にしないで下さい…」


祥子は言った。
「そう……。ところであなた達…脱出方法を探しているようね…」


「ええ…いつまでもここに、いる訳にもいきませんから」


すると、祥子はあの妖艶な笑みで言った。
「ふふふ…私はここ、好きよ…ずっといたいくらい…。絵を描くには最適な環境よ」


「あなたにとっては…いい環境かも知れませんが…他の人は帰りたいのでは?」


「それはどうかしら?…」


「どういう意味です?」


祥子は立ち上がった。
「私はそろそろ部屋に戻りるわ…、ではまた夕食で…」


祥子はそう言うと、荷物をまとめて屋敷に戻って行った。


祥子の後ろ姿を見ながら、葵は呟いた。
「掴み所の無い人です…しかし…」


「あの絵を見た時の違和感は?…」


葵が移動しようとしたら、グランドの方へ向かう亜美を発見した。


グランドでは陸が体を動かしている。


葵もグランドの方へ向かった。


葵が到着する前に、陸と亜美が何かを話している。


「私は帰りたくない…」


「何言ってんだ?…俺には関係ねぇよ」


「嘘よっ!あなただってっ!」


「おいっ!」


葵に気付いた陸は亜美を制止した。


陸は言った。
「葵君…どうした?君もサッカーする?」


葵は言った。
「いえ…僕は、散歩していただけなので」


「そう?…たまにはいいよ…」


すると亜美は走って何処かへ言ってしまった。


「亜美さん…」


葵が呼び止めようとすると、陸が止めた。
「いいよ…葵君、ほっとけよ…」


葵は言った。
「すみません…立ち聞きするつもりはなかったのですが、何か揉め事ですか?」


陸は少し戸惑って言った。
「いや、俺もよくわかんねぇけど…。
ただのヒステリーじゃねっ?…」


「そうですか…何事もなければそれでいいです」


陸は落ち着きを取り戻して言った。
「そうそう、気にしない、気にしない…。
俺、もう少しボール蹴ってから…屋敷に戻るから…」


「では後程…」


そう言うと葵は屋敷に戻る事にした。


屋敷に戻った葵は食堂に行った。
食堂に入ると、五月と有紀がいた。


有紀は葵に声をかけた。
「葵…何をしていたんだ?」


葵は席に座って答えた。
「少し探索を…」


有紀は聞いた。
「何かわかったか?」


「脱出に関しては、特に…。ただ…」


「ただ…何だ?」


「いえ、それより…有紀さんは、元の世界に帰りたいですか?」


有紀は目を見開いて言った。
「意外だな…葵の口からそんな言葉を聞くのは…」


「そうですか?…」


有紀はまだ目を見開いている。
「ああ…何だか弱気に見えてしまうが…」


葵は口角を上げた。
「まさか……、ただ少し聞いてみただけです…」


有紀は表情を戻した。
「ならいいが…。まぁ、葵の質問に答えると、2~3日はいてもいいが…、それ以上は嫌だな、帰りたくなる…」


葵は五月に言った。
「そうですか…、では、五月先輩は?」


急に振られた五月は少し慌てた。
「な、何よ…、急に話を振らないでよ…」


五月は慌てているが、葵は気にせず言った。
「どうなんですか?」


五月は勢いよく言った。
「帰りたいに決まってんでしょっ!早く帰って記事を作らないと…」


葵は五月の大声に少し驚いた。
「やれやれ、いつから記者になったんですか?…」


「うるさいわねっ!」


「ただ…帰りたいと聞けて…」


葵は笑って言った。
「安心しましたよ……」






……午後……


昼食を終えた皆は、それぞれの食後を楽しんでいた。


そんな中、葵は独り髪をクルクルさせながら考え事をしている。


葵に九条が話し掛けてきた。
「葵君…考え事かい?」


「九条さん…」


「君が髪をクルクルさせてるときは、考え事か、相手を追い詰めてる時だからね…」


「人聞きの悪い事を言わないで下さい…、まぁ、考え事はしていましたが…」


九条は笑いながら言った。
「ははは……。後者は冗談だよ…、で、何を考えていたんだい?」


「この屋敷の部屋の数です…」


屋敷には客室が12室ある。


九条が言った。
「僕たちは9人だね…」


「まだ誰か来る可能性があります…」


「確かに…そうかもしれない」


「そこで一つ九条さんに確認したい事が…」


「なんだい?」


「九条さんがここに来た時は、何人でした?」


九条は思い出すように言った。
「え~、僕と…亜美さんに、祥子さんの三人だよ…」


「なるほど…、では次の日に、有紀さん…陸さん、そして愛さんが来たと…」


「そうだよ…、その次の日に葵君、歩、五月ちゃんだね…」


「では時間は…皆一緒の時間ですか?」


「時間は…一緒だと思う…。僕が気が付いた時、残りの二人は、まだ気を失っていたからね」


「なるほど……、では今晩…可能性がありますね…」


「そうなるな…でもだとしたら…」


「ええ…アマツカの可能性もあります。
ただ、今のメンバーに、アマツカがいないとも言い切れませんけど…」


「なかなか難しいね…」


「仕方ありませんよ…相手は変幻自在です…仮に九条さんが、アマツカだとすればすぐにわかりますけど…」


九条は少し慌てて言った。
「僕じゃないぞっ!」


葵は口角を上げて言った。
「ふふ…わかってますよ、アマツカはそんな事はしません」


「どうしてだい?」


「リスクが高過ぎます。九条さんや有紀さん、それに歩さんに先輩の誰かが、アマツカだとすれば、僕にすぐばれてしまう…と、アマツカは思うはずです…」


「なるほど……、葵君は人間観察が凄いもんね…」


「そういう事です…。だが他の皆の事は知りません…今のところ1/4の確率です…。
今晩で1/7になる可能性がありますけど…」


「いない可能性は?…」


「おそらくないでしょう…前にアマツカは「次は負けない」「また会いましょう」と、言っていましたし…、今回も脱出ルートはありそうです…」


「なるほど…、気が重いよ…」


アマツカがいる可能性がある以上、油断は禁物だ。


九条が言った。
「しかし、目的は何なんだろう?…歩にこだわっているのは、だいたいわかるが…」


「それもあるでしょうが、歩さんの事は、ついでな感じがしますね…。
歩さんが目的ならこんな回りくどい事はしないでしょうし…」


「人数が揃ったら…自由行動は控えた方がいいかもね…」


葵は苦笑いして言った。
「それは難しいかもしれないですね…」


「どうしてだい?…」


「前回とは、皆との距離感が違います…。
それに…」


「それに…なんだい?」


「いや、見なさん個性が強そうですから…」


「確かに……」


「まぁ、一応提案はしましょう…。
ただ、あまりしつこくすると、逆に信頼がなくなりそうですから…そこは気をつけて…」


九条は少し肩を落とした。
「それって、また僕の仕事かい?…」


「他に誰かいますか?」


九条は溜め息をついた。
「はぁ…、あまり気が進まないな…」


その後夕食を済ませた後、葵と九条の予想通りの事が起こる。


だがそれは、同時に予想外の事も運んできた。













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