choice02~球体の楽園~
調査
タクシーで九条のオフィスへ向かう途中、車内でアマツカの話を葵と歩はしている。
葵は歩道橋の上で、子供に貰った封筒の中身を、歩に見せた。
中には一枚の紙切れがはいっていた。
葵は紙切れを歩に渡した。
それを受け取った歩は、内容を確認した。
「これは……」
紙切れには…。
『今夜あなた達を、楽園にお連れします…』と、書いてあった。
葵は言った。
「実に興味深いです…しかも先手を打たれています…どうやら僕の行動は筒抜けです…」
歩が言った。
「この『あなた達を』って、ところかい?」
「はい…それはすなわち、僕が歩さんと一緒にいる事を、把握しているという事を示してます…それに…」
「それに?…」
「封筒を僕に渡したタイミングです…。あのタイミングで渡すには…僕を監視してなければ難しい…」
「監視……」
「ええ…どうやら、もう一人ストーカーさんがいたようです…」
「後手後手だな…」
葵は開き直ったように言った。
「それは仕方ない事です…、ステージは相手が用意するんですから…あと、紙の裏を見て下さい…」
歩は紙の裏を見た。
「Webアドレスと、23時00分…、これって…」
「『その時間に、そのアドレスを開け』と、指示しているのでしょう…」
歩は不思議そうに言った。
「しかし、これじゃあ…「罠ですよ」って、言ってるようなもんだぜ…」
葵は髪をクルクル回しながら言った。
「だから、九条さんと、有紀さんを『先に送った』のですよ…」
歩は不愉快な表情で言った。
「チッ!やり方が…汚い…」
「アマツカはわかってるんですよ…。
僕はともかく、歩さんは仲間を見捨てないと…、まぁ…僕も見捨てるつもりはありませんが…」
後部座席の真ん中に座る羽目になった五月は、左右で飛び交う二人の会話に理解できずいた。
「あの~、さっきから何を?九条さんって、あの九条司?…それに有紀さんって、さっきの綺麗な女の人ですよね?…。
送ったって、どういう事?ベッドで寝ていたし…、そもそもアマツカって?…」
歩は言葉を濁している。
「う~ん、説明すると長くなるね…」
葵が言った。
「もうつきそうですよ…」
五月の疑問をうやむやにするように、タイミングよくタクシーは目的地に到着した。
タクシーを降りた3人のまえには、綺麗なオフィスビルが並んでいる。
歩は九条のオフィスがあるビルを目指した。
「ここだ…」
九条のオフィスを目の当たりにした、3人は思わず、たたずんだ…。
「以外としっそですねぇ…」
葵が言うように、九条のオフィスビルは周りの豪華なビルと違い、シンプルな赤茶色のビルだった。
「このビルの5階が九条のオフィスだ…」
歩はそう言うと、ビルの入口へ向かった。
エレベーターに乗り込み、5階で降りると、正面に『Office-nine』とかかれた表札が目に入った。
歩が言った。
「これが九条のオフィスだ、ここを拠点にして様々な事業を展開してるそうだ」
歩はOffice-nineの黒い扉を開いた。
開いた先は壮絶な光景だった。
4~5人の社員らしき者が、バタバタとしている。
電話対応に追われてる者や、棚から書類を引っ張り出し…それらを確認する者や、様々だ。
そのバタバタした社員の中から、一人の女性がやって来た。
葵ら3人を怪しげな表情で見ている。
「誰です?あなたたちは?…」
女性はチェックのシャツにジーンズと、ラフな格好をしている。
歩が言った。
「あの~、渡辺って言いますけど…山村さんから聞いてませんか?…」
女性は強張らせてた表情を軟らかくして、笑顔で言った。
「あぁ~、社長のご友人の…」
「はい、九条の仕事部屋に用があって…」
「はいっ!聞いてます聞いてます…ちょっと事務所、散らかってますけど…こっちです…」
書類の山や、段ボールで散らかっている、事務所の通路を通り、九条の仕事部屋へ向かう。
歩が言った。
「随分…なんだ…壮絶な光景だね…」
女性はげんなりした表情で答えた。
「社長が急に休むことになって、社内はてんてこ舞いなんです…。山村さんも社長に付きっきりだし…」
女性は愚痴りながら、九条の仕事部屋まで案内してくれた。
「ここです。鍵は持ってますよね?それでドア開けて、中に入って下さい…。じゃあ…私忙しいんで…。愛想無しですみません、ゆっくりしていって下さい…」
そう言うと女性は戻って行った。
葵が呟いた。
「九条さんがいないと、ダメな会社のようですね…」
扉を開いて九条の部屋に入った3人は、事務所と部屋のギャップに少し驚いた。
五月が思わず言った。
「違う会社みたい…」
五月の言うように九条の部屋はキレイに片付いていた。
黒をベースにした部屋に、棚や机、ソファーなどどれもキレイに使われている。
葵は言った。
「さっそくPCを…調べましょう…」
葵はデスクに置いてあるPCへ向かった。
葵はPCの電源をいれた。
しばらくすると画面が明るくなりホーム画面へ写った。
葵は手際よくPCを操作する。
そんな葵を見て五月は言った。
「勝手に…そんな弄くったら、まずいんじゃ?…」
葵は呆れて言った。
「PCの前で九条さんは倒れていました…調べるのは当然でしょう…」
「なんで、PCと昏睡が関係あんのっ?…そんなのおかしいよっ?…。
呪いのメールじゃ…あるまいし…」
葵は口角を上げて言った。
「呪いのメール…ふふ、確かにそうかも知れません…」
五月は笑う葵を不気味に思った。
「何が可笑しいの?…」
「怖いのですか?あなたはオカルトミステリーの美人代表でしょ…」
「私が不気味なのは、あんたよっ!」
「その不気味な人間を、ストーカーしてるのは…あなたでしょ…」
「私はストーカーじゃないっ!」
激昂している五月を宥めるように、歩は言った。
「まぁまぁ、五月ちゃん…落ち着いて…。葵君、何か気になるところある?」
「アマツカから受け取った、アドレスの履歴が残っていますね…」
歩は驚いて言った。
「なんだってっ?!」
「開こうと試みましたが……エラーですね…」
焦った感じで歩が言った。
「葵君、先々進むなよぉ…、心の準備ってのがあるんだから…」
葵は言った。
「ご安心を…最初から開くとは思ってませんよ…アマツカがそんなミスをするとも思えませんし、念のため試しただけです」
歩は言った。
「じゃあ…この紙切れは?…」
「時間が書いてあります…その時刻に開けるようになるのでしょう…」
「11時ってわけか…」
「とにかく、手懸かりを…何故九条さんを先に狙ったのか?…」
「そうだな小さな事でもいい…」
すると葵は五月に言った。
「ストーカーさん…その首にぶら下げているカメラで、部屋を一通り写して下さい…」
「だ・か・らっ!ストーカーじゃないっ!…。
でも、いいわ…撮影してあげる…、やっと私に協力指せる気になったみたいだから…」
「無理矢理ついてきたのですから…そのくらいの役に立ってもらわないと…困ります…」
「いちいち…一言多いわねっ!」
そう文句を言いつつ、五月はデジカメで部屋を撮影し始めた。
PCを操作する葵は何かを見つけたようだ。
「うん?…これは…」
「どうした?葵君…」
「九条さんは…どうやらアマツカについて調べていたようです…これを…」
そう言うと葵はPCの画面を見るよう、歩を促した。
「これは?『A&M company』?なんだこれ?…」
葵は髪をクルクルさせながら言った。
「『島』へのチケットは、この『A&M company』から、ばらまかれたようです」
「どういう事?」
「これは九条さんがまとめた資料ですが…見て下さい、チケットの配分先です」
九条の資料には、九条の会社Officenineから、チケットがいくつかの企業や団体、協会などに、渡っていることが記されている。
その内容に歩は驚いた。
「これは!星城商事、それに警視庁…財界に東鷹医大っ!これは…」
「そうです…あのチケットはここから、ばらまかれたのです…」
「まさか、九条がアマツカに関与しているって事なのか?…」
「それはわかりませんが…利用された可能性は高いです…」
「でもどうして…」
「株主優待と偽って、九条の会社にチケットを送り、それを配分したって…ところですか…」
「しかし、それではピンポイントで俺を狙えないぞ…九条が何処に配るかはわからないんだ…」
「確かに…では、このOfficenineにアマツカの内通者がいたら?…」
歩は目を見開き表情を固めた。
葵は「ふう」と、ため息を一つついて言った。
「僕たちは、アマツカの事を考え直さないといけませんね…」
「どういう事だい?」
「アマツカが一人ではないのは、わかってました…チームか何かは…」
「じゃあなんなんだい?」
「組織ですか…しかも支援者のいる…。
これは、厄介です…」
「支援者……、そうか、アマツカのユーザーか…」
「はい…。アマツカはあの時、『富豪達』と、言っていました…、多分それが支援者でしょう…賭博に参加する事により、多額の資金を提供しています」
「やっぱ…普通じゃないよな…」
話の大きさに歩はどこか乗り切れていないようだ。
歩とは対照的に、葵は楽しそうに言った。
「ただの愉快犯では無いのは、わかってましたが…最終的な目的は…興味深いです」
「楽しんでる場合じゃないよ…どうやって2人を助けるの?」
「とりあえず…むこうに行くしかありませんね…。招待状も、貰った事ですから…」
そう言うと葵は、例の紙切れをヒラヒラさせている。
歩は頭を抱えて言った。
「やっぱりな…」
「おや?アマツカを追うと決めたのは歩さんですよ…」
「いや、そうじゃなく…。出来れば葵君には関わらないで欲しい…」
葵は呆れて言った。
「やれやれ…まだそんな甘い事を言ってるんですか?…。
アマツカは僕もターゲットにしていますよ…現にこの紙切れは僕の元に届けられたのですから…」
歩は葵がこの状況を、楽しんでいる事に危惧していた。
「上手くは言えないけど…葵君はアマツカに関わらないで欲しい…」
「またですか…僕は、アマツカとは違います…ご心配なく…」
歩はこれ以上言わなかった。
葵に関わらないで欲しいのは、歩の本音だが、葵に頼らないといけない現実もある…。
歩は葛藤し、思わず呟いた。
「ほんと…情けない大人だよ、俺は…」
そんな歩を見て葵は言った。
「そんな事を言わないで下さい…歩さん達がいたから…前回は勝てたのですよ…」
歩は葵に返す言葉が見つからなかった。
葵は言った。
「資料の事は、向こうに行ってから…本人に聞きましょう…」
歩は言った。
「そうだな…腹くくるか、葵君…」
「なんです?」
「皆を…助けよう…」
葵は髪をクルクルし口角を上げて言った。
「もちろんです…僕を誰だと思っているんですか?…」
葵は歩道橋の上で、子供に貰った封筒の中身を、歩に見せた。
中には一枚の紙切れがはいっていた。
葵は紙切れを歩に渡した。
それを受け取った歩は、内容を確認した。
「これは……」
紙切れには…。
『今夜あなた達を、楽園にお連れします…』と、書いてあった。
葵は言った。
「実に興味深いです…しかも先手を打たれています…どうやら僕の行動は筒抜けです…」
歩が言った。
「この『あなた達を』って、ところかい?」
「はい…それはすなわち、僕が歩さんと一緒にいる事を、把握しているという事を示してます…それに…」
「それに?…」
「封筒を僕に渡したタイミングです…。あのタイミングで渡すには…僕を監視してなければ難しい…」
「監視……」
「ええ…どうやら、もう一人ストーカーさんがいたようです…」
「後手後手だな…」
葵は開き直ったように言った。
「それは仕方ない事です…、ステージは相手が用意するんですから…あと、紙の裏を見て下さい…」
歩は紙の裏を見た。
「Webアドレスと、23時00分…、これって…」
「『その時間に、そのアドレスを開け』と、指示しているのでしょう…」
歩は不思議そうに言った。
「しかし、これじゃあ…「罠ですよ」って、言ってるようなもんだぜ…」
葵は髪をクルクル回しながら言った。
「だから、九条さんと、有紀さんを『先に送った』のですよ…」
歩は不愉快な表情で言った。
「チッ!やり方が…汚い…」
「アマツカはわかってるんですよ…。
僕はともかく、歩さんは仲間を見捨てないと…、まぁ…僕も見捨てるつもりはありませんが…」
後部座席の真ん中に座る羽目になった五月は、左右で飛び交う二人の会話に理解できずいた。
「あの~、さっきから何を?九条さんって、あの九条司?…それに有紀さんって、さっきの綺麗な女の人ですよね?…。
送ったって、どういう事?ベッドで寝ていたし…、そもそもアマツカって?…」
歩は言葉を濁している。
「う~ん、説明すると長くなるね…」
葵が言った。
「もうつきそうですよ…」
五月の疑問をうやむやにするように、タイミングよくタクシーは目的地に到着した。
タクシーを降りた3人のまえには、綺麗なオフィスビルが並んでいる。
歩は九条のオフィスがあるビルを目指した。
「ここだ…」
九条のオフィスを目の当たりにした、3人は思わず、たたずんだ…。
「以外としっそですねぇ…」
葵が言うように、九条のオフィスビルは周りの豪華なビルと違い、シンプルな赤茶色のビルだった。
「このビルの5階が九条のオフィスだ…」
歩はそう言うと、ビルの入口へ向かった。
エレベーターに乗り込み、5階で降りると、正面に『Office-nine』とかかれた表札が目に入った。
歩が言った。
「これが九条のオフィスだ、ここを拠点にして様々な事業を展開してるそうだ」
歩はOffice-nineの黒い扉を開いた。
開いた先は壮絶な光景だった。
4~5人の社員らしき者が、バタバタとしている。
電話対応に追われてる者や、棚から書類を引っ張り出し…それらを確認する者や、様々だ。
そのバタバタした社員の中から、一人の女性がやって来た。
葵ら3人を怪しげな表情で見ている。
「誰です?あなたたちは?…」
女性はチェックのシャツにジーンズと、ラフな格好をしている。
歩が言った。
「あの~、渡辺って言いますけど…山村さんから聞いてませんか?…」
女性は強張らせてた表情を軟らかくして、笑顔で言った。
「あぁ~、社長のご友人の…」
「はい、九条の仕事部屋に用があって…」
「はいっ!聞いてます聞いてます…ちょっと事務所、散らかってますけど…こっちです…」
書類の山や、段ボールで散らかっている、事務所の通路を通り、九条の仕事部屋へ向かう。
歩が言った。
「随分…なんだ…壮絶な光景だね…」
女性はげんなりした表情で答えた。
「社長が急に休むことになって、社内はてんてこ舞いなんです…。山村さんも社長に付きっきりだし…」
女性は愚痴りながら、九条の仕事部屋まで案内してくれた。
「ここです。鍵は持ってますよね?それでドア開けて、中に入って下さい…。じゃあ…私忙しいんで…。愛想無しですみません、ゆっくりしていって下さい…」
そう言うと女性は戻って行った。
葵が呟いた。
「九条さんがいないと、ダメな会社のようですね…」
扉を開いて九条の部屋に入った3人は、事務所と部屋のギャップに少し驚いた。
五月が思わず言った。
「違う会社みたい…」
五月の言うように九条の部屋はキレイに片付いていた。
黒をベースにした部屋に、棚や机、ソファーなどどれもキレイに使われている。
葵は言った。
「さっそくPCを…調べましょう…」
葵はデスクに置いてあるPCへ向かった。
葵はPCの電源をいれた。
しばらくすると画面が明るくなりホーム画面へ写った。
葵は手際よくPCを操作する。
そんな葵を見て五月は言った。
「勝手に…そんな弄くったら、まずいんじゃ?…」
葵は呆れて言った。
「PCの前で九条さんは倒れていました…調べるのは当然でしょう…」
「なんで、PCと昏睡が関係あんのっ?…そんなのおかしいよっ?…。
呪いのメールじゃ…あるまいし…」
葵は口角を上げて言った。
「呪いのメール…ふふ、確かにそうかも知れません…」
五月は笑う葵を不気味に思った。
「何が可笑しいの?…」
「怖いのですか?あなたはオカルトミステリーの美人代表でしょ…」
「私が不気味なのは、あんたよっ!」
「その不気味な人間を、ストーカーしてるのは…あなたでしょ…」
「私はストーカーじゃないっ!」
激昂している五月を宥めるように、歩は言った。
「まぁまぁ、五月ちゃん…落ち着いて…。葵君、何か気になるところある?」
「アマツカから受け取った、アドレスの履歴が残っていますね…」
歩は驚いて言った。
「なんだってっ?!」
「開こうと試みましたが……エラーですね…」
焦った感じで歩が言った。
「葵君、先々進むなよぉ…、心の準備ってのがあるんだから…」
葵は言った。
「ご安心を…最初から開くとは思ってませんよ…アマツカがそんなミスをするとも思えませんし、念のため試しただけです」
歩は言った。
「じゃあ…この紙切れは?…」
「時間が書いてあります…その時刻に開けるようになるのでしょう…」
「11時ってわけか…」
「とにかく、手懸かりを…何故九条さんを先に狙ったのか?…」
「そうだな小さな事でもいい…」
すると葵は五月に言った。
「ストーカーさん…その首にぶら下げているカメラで、部屋を一通り写して下さい…」
「だ・か・らっ!ストーカーじゃないっ!…。
でも、いいわ…撮影してあげる…、やっと私に協力指せる気になったみたいだから…」
「無理矢理ついてきたのですから…そのくらいの役に立ってもらわないと…困ります…」
「いちいち…一言多いわねっ!」
そう文句を言いつつ、五月はデジカメで部屋を撮影し始めた。
PCを操作する葵は何かを見つけたようだ。
「うん?…これは…」
「どうした?葵君…」
「九条さんは…どうやらアマツカについて調べていたようです…これを…」
そう言うと葵はPCの画面を見るよう、歩を促した。
「これは?『A&M company』?なんだこれ?…」
葵は髪をクルクルさせながら言った。
「『島』へのチケットは、この『A&M company』から、ばらまかれたようです」
「どういう事?」
「これは九条さんがまとめた資料ですが…見て下さい、チケットの配分先です」
九条の資料には、九条の会社Officenineから、チケットがいくつかの企業や団体、協会などに、渡っていることが記されている。
その内容に歩は驚いた。
「これは!星城商事、それに警視庁…財界に東鷹医大っ!これは…」
「そうです…あのチケットはここから、ばらまかれたのです…」
「まさか、九条がアマツカに関与しているって事なのか?…」
「それはわかりませんが…利用された可能性は高いです…」
「でもどうして…」
「株主優待と偽って、九条の会社にチケットを送り、それを配分したって…ところですか…」
「しかし、それではピンポイントで俺を狙えないぞ…九条が何処に配るかはわからないんだ…」
「確かに…では、このOfficenineにアマツカの内通者がいたら?…」
歩は目を見開き表情を固めた。
葵は「ふう」と、ため息を一つついて言った。
「僕たちは、アマツカの事を考え直さないといけませんね…」
「どういう事だい?」
「アマツカが一人ではないのは、わかってました…チームか何かは…」
「じゃあなんなんだい?」
「組織ですか…しかも支援者のいる…。
これは、厄介です…」
「支援者……、そうか、アマツカのユーザーか…」
「はい…。アマツカはあの時、『富豪達』と、言っていました…、多分それが支援者でしょう…賭博に参加する事により、多額の資金を提供しています」
「やっぱ…普通じゃないよな…」
話の大きさに歩はどこか乗り切れていないようだ。
歩とは対照的に、葵は楽しそうに言った。
「ただの愉快犯では無いのは、わかってましたが…最終的な目的は…興味深いです」
「楽しんでる場合じゃないよ…どうやって2人を助けるの?」
「とりあえず…むこうに行くしかありませんね…。招待状も、貰った事ですから…」
そう言うと葵は、例の紙切れをヒラヒラさせている。
歩は頭を抱えて言った。
「やっぱりな…」
「おや?アマツカを追うと決めたのは歩さんですよ…」
「いや、そうじゃなく…。出来れば葵君には関わらないで欲しい…」
葵は呆れて言った。
「やれやれ…まだそんな甘い事を言ってるんですか?…。
アマツカは僕もターゲットにしていますよ…現にこの紙切れは僕の元に届けられたのですから…」
歩は葵がこの状況を、楽しんでいる事に危惧していた。
「上手くは言えないけど…葵君はアマツカに関わらないで欲しい…」
「またですか…僕は、アマツカとは違います…ご心配なく…」
歩はこれ以上言わなかった。
葵に関わらないで欲しいのは、歩の本音だが、葵に頼らないといけない現実もある…。
歩は葛藤し、思わず呟いた。
「ほんと…情けない大人だよ、俺は…」
そんな歩を見て葵は言った。
「そんな事を言わないで下さい…歩さん達がいたから…前回は勝てたのですよ…」
歩は葵に返す言葉が見つからなかった。
葵は言った。
「資料の事は、向こうに行ってから…本人に聞きましょう…」
歩は言った。
「そうだな…腹くくるか、葵君…」
「なんです?」
「皆を…助けよう…」
葵は髪をクルクルし口角を上げて言った。
「もちろんです…僕を誰だと思っているんですか?…」
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