choice02~球体の楽園~

ノベルバユーザー329392

access



九条のオフィスを引続き調査をしているが、他に手掛かりはなかった。


歩が言った。
「それにしても九条はどうして、このアドレスにアクセスできた?俺たちのように、紙切れを?…」


葵が言った。
「おそらくこれでしょう…見て下さい…」


葵は歩にPCを見せた。


「これは…」


「メールが届いていますね…『親愛なる九条司へ…Aより』アドレスが添付してあります…。
送信元のメールアドレスは……、もう使えなくしてありますね…」


歩が言った。
「まぁ…開けちゃうよね…」


葵も同意した。
「僕も…開けますねぇ…」


歩が言った。
「じゃあ…そろそろ、撤収しますか…」


「そうですね…これ以上ここには手掛かりは無さそうです。」


葵は部屋の隅々をカメラに納めている五月に言った。
「そろそろ帰りますよ…」


「えっ?もう帰るの?…有名人の九条司のオフィスを撮るなんて、めったに出来ないのに…」


五月は残念そうだが、葵は気にすることなく言った。
「困った人ですね…あまり良い趣味では無いですよ…」


「ぐっ、わ、わかったよっ!で?次は?…」


葵はとぼけたように言った。
「次とはなんです?…もう解散ですよ…」


「撮った写真を見るんじゃ?…」


「あぁ…写真ですか…。写真を撮らせといたら、あなたがおとなしくしてくれると思いましてね…」


「あんた…まさか…」


「ええ…、おかげで邪魔なく、スムーズに調査ができましたよ…」


五月はまたもや激昂した。
「つ、月島 葵~っ!あんた私を、騙したのねっ!」


五月は怒り狂っている。


すかさず歩が五月を落ち着かせる。
「まぁまぁ…九条のオフィスの写真も撮れたんだから…めったに出来ないよ…」


歩の言葉に五月は少し落ち着きを取り戻した。
「まぁ…確かに…」


葵が言った。
「とにかく、出ましょう…会社の人達にも迷惑です…」


そうして3人は、オフィスの社員らに礼を言い、オフィスを出た。


オフィスを後にした3人は、オフィス街を歩いていた。


葵が五月に言った。
「あなたはもういいでしょう…そろそろ帰ったらどうです?」


「11時に何かあるんでしょう?帰るわけないじゃないっ!」


「あなたもわからない人だ…迷惑ですよ…」


「なに~っ!」


またまた歩が間に入る。
「まあまあ、二人とも…、とりあえず…五月ちゃんはもう帰ってよ…」


「歩さんまで…なにを?!…」


歩は五月に提案した。
「そのかわり、明日…君が知りたがっている事を、教えるから…。そうだなぁ…明日の正午に東鷹医大の喫茶店まで来てよ」


五月は少し悩んで言った。
「う~ん、わかりました。そのかわり絶対教えて下さいよ…」


「それでいいかい?葵君?」


葵は渋々答えた。
「仕方ないですね…わかりました」


五月は納得した。
「よっし!月島葵…明日は逃げんなよっ!」


そう言うと五月は「また明日」と言い、帰って行った。


葵は呟いた。
「僕は…逃げも隠れもした事はありませんけど…。
しかし、えらく素直に帰りましたねぇ…」


歩もホッとした表情で言った。
「素直に帰ってくれて良かったよ…」


「しかし、彼女は明日どのような反応を、するのでしょうか…」


「呆気にとられるかもね…待ち合わせ場所にきたら、俺達…昏睡状態だもん…」


「それを見て…火が着かなければいいのですが…」


歩が言った。
「とにかく、11時まで…まだ時間がある…」


葵は時計を見て言った。
「まだ5時過ぎですねぇ…一度家に戻って、持ってきたい物があるのですが…」


「そうだね…じゃあ昨日、晩飯食った店で待っとくわ…」


「わかりました…では、また後で…」


葵の帰り間際に歩が言った。
「葵君…別に来なくてもいいからな…」


葵は振り向いて、そして少しにやけて言った。
「まさか……」


……午後七時……


「なるほどな…取りに戻ったのはそれか」


歩は葵が持ってきたノートパソコンを見て、納得した。


「無線LAN付きですから、何処にいてもアクセスできます…」


「ここでやるのかい?」


「いえ、店に迷惑をかけるわけにいきません…お会計を済まして、別の場所へ…」


「何処でやるの?」


「東鷹医大に行きましょう…」


「なるほどな、皆で仲良く昏睡ね…」


「それもありますが…ストーカーさんを待ち惚けさすわけにも、いきませんから」


「確かに…。まぁさすがの彼女も、異常に気付くだろ…」


二人は適当に食事を済ませ、東鷹医大に向かった。


指定時間が迫るなか、二人は夜の病院に到着した…。


さすがに夜もあってか、病院は静かだ…。


二人は深夜の喫茶店へ行った。何故か喫茶店はまだ営業している。


歩が言った。
「ここ医師も来るから、遅くまで営業してんだよ…」


席についた二人はそれぞれ注文をした。
葵はいつものアイスカフェラテ、歩はホットコーヒーをそれぞれ頼んだ。


時間が迫るなか、歩の表情に緊張感があるのがわかる。


葵はPCで何かをタイピングをしている。


「葵君…何してるの?…」


「書き置きです…」


「書き置き?」


「ええ…もう終わりました…」


「まさか遺書とか言わないよね…」


歩は冗談混じりに葵に言うと、葵は口角を上げて言った。
「さぁ…、どうでしょうか…」


歩は不器用に思って言った。
「冗談やめてよ…」


「そろそろ時間です…僕の隣へ…」


時刻は22時57分…指定の時刻まで後3分。


歩が隣に座ったのを確認すると、葵はアドレスを打ち込んだ。


「11時になったら、enterキーを押します…」


時刻は迫ってくる…。


残り…10秒、9.8.7.6.5.4.3.2.1…


葵はenterキーを押した。


すると画面から『あの白い光』が発せられた…。


光からの闇…。


あの時と同じ……。


意識が朦朧とする…。


あれが始まった…、皆は無事だろうか?…。


意識が……なく……な……る………。







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