この世界なら僕は変われるかもしれない。

かぐや

第7話

 「え、カリヤさん、サレイヤ国との同盟を破棄するって…なんでですか?」

 カリヤは深刻そうな顔で答えた。

 「実はな…。食料はいいんだが、資金の提供が前々からギリギリでな、同盟を続けられるほどの資金力がないんだ。」

 「……そうなんですか。」

 返す言葉が見つからない。


  「おいおい!この国はもうだめなんじゃねぇのか?」

 「そうかもしれねぇな!」

 健斗とカリヤがいる酒場の中で男二人が大声で話している。二人は顔が真っ赤だ。どうやら酔っ払っているみたいだ。

 「サレイヤ国との同盟を切っちゃったら誰がこの国を守れるんだ?」

 「そうだよなぁ、魔物が襲ってきたらお終いだよ!うちの国には護衛ギルドがねぇからなぁ…」

 「いっそ俺らが守るか!」

 「バカっ!俺らは魔法使えねぇじゃねぇか!」

 「そりゃそうか!」

 「「あっはっはっはっは ︎ ︎」」

 二人は愉快に笑っている。

 
「護衛ギルドか…」

 カリヤは、健斗が聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で言った。

 「なぁ、ケント…」
 
 「はい?」

 「お前、俺たちがガルフに襲われていた時に、使ってたあの力ってなんだ?」

 そう、健斗は光を放ち、ガルフの群れを、そして辺りを一掃した。あれほどの力をカリヤは見たことがなかった。

 「あれは…、僕にも正直わからないんです」

 健斗は困惑した表情でそう答えた。

 「僕自身驚いています。元いた世界では、こんなことありませんでした」

 (元いた世界では僕はーーー )

 健斗は辛かった過去を思い出していた。

 「…そうか、じゃあここに来て手に入れた力ってことなのか?」

 健斗から返事はない。

 「…おい、ケント?大丈夫か?顔色が悪いようだが…」
 
  「…え?あ、いや!大丈夫です!」

 健斗は苦笑いをして返した。

 「そうか?ならいいんだがー」

 バタンっ!

 店の扉を勢いよく開ける音が聞こえた。そこには一人の男が立っていた。

 「…っはぁ、っカリヤさん!大変です!」

 その男はそう言うと、カリヤに近づいてきた。息切れをしているところを見ると、どうやら急いで来たようだ。

 「一体どうしたんだ?」

 カリヤは男に問いかける。

 「急いで門のところに来てください!門の前にーー」

  男はカリヤの耳元で話の続きを言った。

 「…なんだとっ!おい!ケント、行くぞ!」

 「えっ?あ、カリヤさん?」

 カリヤは強引に健斗を引き連れ、男と一緒に店を出で門へ向かった。


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