この世界なら僕は変われるかもしれない。

かぐや

第5話

 「カリヤさん!ケガは大丈夫なんですか?」

 健斗はベットから起き上がり、カリヤの元へ駆け寄った。
 
 「まぁな、思ったより傷が深かったが、あと一週間もすれば治るそうだ」

 「そうなんですか、よかったぁ」

 健斗はホッと胸をなで下ろす。

 「それより、そっちももう大丈夫そうだな!」

 「色々とありがとうございます」

 健斗はカリヤに頭を下げた。

 「…礼を言うなら、こいつに言いな。ずっと看病してくれてたんだぜ!」

 そう言ってカリヤは女の子の頭を撫でた。

 「もぅ、お兄ちゃん!子供扱いするのはやめてって言ってるでしょ!」

 女の子は頰を膨らませながら訴えている。

 「…えっと、その子は…」

 「あぁ、紹介が遅れたな!こいつは俺の妹のニーナだ!世話好きで、騒がしいやつだがよろしく頼むよ」

 「騒がしいってなによ!」

 「なんだ?ホントのことだろ?」

 カリヤとニーナはギャーギャーと言い合っている。とても仲の良さそうな兄妹だ。

 (兄妹か…。なんか少し羨ましいな)

 「ニーナ…ちゃん、だっけ?看病してくれてありがとう」

 ニーナは二ヒヒと笑いながら

 「全然大丈夫だよ!それよりも、ずっと苦しそうに唸ってたから心配したんだよ!」

 「…え、僕が?」

 「うん…。ずっと『もうやめて…』って言ってたよ」

 「…そっか」

 (嫌な記憶を忘れようとしていたけど、やっぱり無理なんだ)

 あの思い出したくもない日々の記憶はそう簡単に消えていくものではないと健斗は改めて感じた。

 「それよりもケント!外に出よう、俺の町を案内するぜ!」

 「…町を…ですか?」

 「おう!」

 (そうだ、僕はこの世界を知らない。色々と知らなければならないのかもしれない。それに、色々と聞きたいことだってー)

 「じゃあ、お願いします」

 「決まりだな!じゃ、行くか!」

 「はい」

  そうして、健斗とカリヤは家を出た。





カリヤの紹介してくれた町は、とても和やかな雰囲気を持っていた。健斗の住んでいた東京とは違い、現代的な建物はなく、かと言って昔のような木造建築の建物でもない。色とりどりな建物が多く、まるでRPGのゲームの世界のようだった。

 「…なんかいいですね、ここ」

 行き交う人々を見ると、カリヤのような旅人みたいな服装をしているもの、鎧を身につけているもの、魔法使いのような服装をしているものと様々だった。また、アイテムらしきものを売っている店や、武器を売っている店、防具を売ってる店などたくさんあった。健斗にとって、とても心踊る場所であったが、どこか懐かしい感じでもあった。

 「そうだろ?俺はこの町が好きなんだ…」

 「分かります。僕はこの町は初めてですけど、なんだか落ち着きます」

 「ははっ!よく分かってるじゃん!」

 カリヤはニコッと笑った。

 その後、二人は町を散歩し、カリヤは酒場らしき店の前で止まった。

 「ここでゆっくり話さないか?そっちもだろうが、俺も健斗についていろいろ聞きたいしな!」

 カリヤは健斗に問いかけた。

 「はい、ぜひ」

二人はその店へ入ったー

 


 案内された席に向かい合わせで座り、注文したドリンクが来ると、早速カリヤは健斗に質問した。

 「…確かケントはニホンから来たって言ってたな、それってどこなんだ?聞いたことがなくてな」

 「………。」 

 健斗は黙った。自分が、おそらく違う世界からここに来たなんて言ったら、信じてもらえるのだろうか。怪しまれたりするのではないかと、健斗は不安になっていた。

 「…やめだ!」

 「…え?」

 「聞くのはやめるよ、話したくないようだしな!」

 「…カリヤさん」

 「いいさ、誰にでも話したくないことの一つや二つあるもんさ。だからもうそのことは聞かなー」

 「実はっ!」

 健斗はカリヤの言葉の最後を遮り、話し出した。カリヤさんになら話してもいいと、そう思った。

 「…実は、僕は違う世界から来たみたいなんです…。僕は元の世界で辛いことがあって、自殺したんです。そしたら、謎の光に包まれて、気づいたらカリヤさんが助けてくれた森にいました…。」

 「………。」

 「…………。」

 沈黙が続いた。が、カリヤが口を開いた。

 「…そうか、色々と大変だったみたいだな。」

 「…し、信じてくれるんですか?」

 健斗は驚いた。こんな冗談じみた話、普通は信じてくれないだろう。

 「そうだな、正直とても信じがたい話だが、ケントのその目は、嘘をついてるように見えない。」

 カリヤは健斗の目を見て言った。

 「…カリヤさん、ありがとうございます」

 「いいさ、じゃあ、この世界のことは何も知らないんだな?」

 「…はい」

 「そうか、じゃあこの国のこと、そしてこの世界のことを教えるよ!」

 そうして、カリヤは話し出したーー

コメント

  • 本の女神

    面白いです!続きが楽しみです。

    良かったら私の小説も読んでみてください。今のところ一つしかありませんが(笑)

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