センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

61話 政治に向いている者などいない。


 61話 政治に向いている者などいない。

「――ああああああああああっ!」

 『彼』は、絶死を積んで底上げした魔力とオーラの全てを両手にぶち込んで、

「異次元砲ぉおおおおおおおおおおっ!!」

 最初で最後、人生最大の一撃。
 この一撃を放って死ぬと覚悟した一手。

 その火力は当然膨大。
 同程度の存在値の敵なら蒸発確定。
 ――けれど、

「――異次元砲」

 ラベンチャは、右手に魔力とオーラを綺麗に溜めてから、タイミングを見計らって解き放った。

 ラベンチャの異次元砲と『彼』の異次元砲は、互いの間でぶつかり合い、数秒ほど、押し引きを繰り返したが、最後には、パチュンと、世界に溶けるような音を残してどちらも消失した。

 相殺されたエネルギーの余韻だけが世界に残る。
 すべての力を出しつくして真っ白になった『彼』と、
 まだまだ余裕を残しているラベンチャ。

 勝敗は火を見るより明らか。

 ガクリと、膝から崩れ落ちた『彼』に、
 ラベンチャは、

「くくく……さすがに手がしびれたよ。よかったじゃないか。最後の最後に、私の手を痺れさせることが出来て。冥途の土産としては、これ以上ないだろう?」

 ラベンチャに人生をめちゃくちゃにされた『彼』は、
 最愛の家族を心に想いながら、

「母さん……フワリ……ごめん……俺……なにも……できな――」

 最後まで言い切ることなく、
 そのまま完全なる生命の停止を迎えた。

 その様を見たラベンチャは、
 満面の笑顔で、

「どうだい、ウィーンくん。素晴らしい芸術だと思わないか? できれば、もう少し熟成させたかったが、青い果実も、それはそれで味がある」

「俺に芸術は分かりません。教養がないもんで」

「いかんな、ウィーンくん。君も、最高位冒険者。いずれ、上級議員になる者。教養ぐらいは身に着けておかんと」

「俺は、議員になる気はありませんよ。政治は向いていない」

「政治に向いている者など、この世におらんよ。選ばれたヤツが好き勝手なことをするだけの簡単なお仕事――それが政治家だ」

 などと、真理を語り合う二人。

 そんな二人の元に、

「……」



 ――紙野が降臨する。
 それは必然。
 絶対にゆるぎない、世界に刻まれた最低条件。



 どこからともなく、音もなく、とつぜん現れた紙野に気づいた二人は、
 即座に、臨戦態勢をとった。

 ウィーンが、

「お前……確か、昼間に、カザミと一緒にいた……」

 『ジェイズの荷物持ちだ』と気づいたウィーンは、
 警戒心を少しだけ緩めて、

「そんなところで何をしている? というか、どうやって現れた?」

 普通に疑問を投げかけるが、
 紙野は、ウィーンの言葉をシカトして、

「……これ、使えるな……」

 真っ白になった死体を見下ろしながら、
 ボソっと、

「なかなかの潜在能力……絶死のアリア・ギアスでも引き出しきれない複雑な深み……こいつ、もしかして、プライマルメモリの因子か……ただの因子ではなく、主役級を張っていた可能性がある……」

 などと言いながら、
 真っ白になった『彼』の『中心』を引き上げていく。

「使わせてもらうぞ。対価は……そうだな……」

 そこで、紙野は、ラベンチャに視線を向けて、

「……あいつを凄惨に殺してやるよ。とことん地獄を見せてやる。それと、プラス、そのツボの中で死んでいる二人も回収してやる。それでどうだ?」


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