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60話 絶死のアリア・ギアスは……


 60話 絶死のアリア・ギアスは……

 全てを理解した青年は、

「ウギャゲガァオオオオオンッ!!」

 人間とは思えない咆哮を上げた。
 全身のエネルギーが燃え上がる。

 気づけば、彼の全身を、真っ赤なオーラが包み込んでいる。
 そのままの勢いで、自分を拘束している鎖を筋力だけで引きちぎろうとした。

 それを見たウィーンは、

「絶死のアリア・ギアスか……ラベンチャ議員、少し下がってもらえます? 命を棄てた人間の『最後のクソ力』はバカに出来ない」

「ははは。問題ない、問題ない。この鎖は、私のお手製でね。存在値400以下の者なら拘束し続けることができる。――彼の存在値は200ちょっと。絶死を積んで上がる存在値なんてよくて100ぐらい。彼では、この鎖を千切ることすら――」

 と、そこまで言ったところで、
 バキィイイイッ!

 と、鎖が引きちぎられた。
 解き放たれた『彼』は、
 飢えた野獣も尻尾を巻いて逃げ出すような――怒涛の覇気でもって、
 ラベンチャに襲い掛かった。

 その特攻を、ラベンチャは、
 熟練のマタドールのように、ギリギリのところで、回避しながら、

「……驚いたねぇ。これまで、何度か、『最後の最後に絶死を積んで暴れるバカ』を見てきたけど……ここまで、爆発的に存在値を上げた者は初めて見た」

 そこで、ラベンチャは、セブンスアイを使い、
 『彼』の存在値を確認する。

「存在値430まで上がっている……くくく……どうやら、潜在能力だけは、それなりに高かったらしい。壊して遊ぶんじゃなく、育てて配下にした方が良かったなぁ……まあ、もう、あとの祭りだけれど」

 絶死を積んだことで、『彼』の底力は、かなりの高位にまで辿りついた。
 しかし、それでも、430が精々。

「私の存在値は480。50の差は大きいよ。単純に数値差もそうだが、君は、さっき430になったばかりで、『400台の強さ』に慣れていない。『そう言った諸々』を踏まえて考えると、私が君に負けることはありえない」

 そう言いながら、
 暴れ散らかしている『彼』の腹に、丁寧なカウンターをぶち込む。

「ぐぼへぇえっ!」

「――『絶死を積むことが出来た』という一点だけでも、君の心が、そこらの凡夫よりも上位にあるのは事実」

 軽やかな回避。
 質の高い『強さ』を感じさせるムーブ。

「絶死のアリア・ギアスは、感情の極致。本当の『最後の最後』にだけ発揮できる火事場の馬鹿力。絶死は、いつでも、だれでも、簡単に扱える、便利なパワーアップ技法というわけではない。心の底から、『死んでもいいから最後に力を!』と叫ばなければ届かない……だが、なかなか、人は、心底から『死んでもいい』とは思えない。絶死を積める者というのは、それだけで希少種」

「ギッ、ギャガガアァツ!」

 『彼』は、必死になって、どうにか、ラベンチャを殺そうともがいているが、
 もはや、ラベンチャにとって、『彼』は、『けっこう速い獣』に過ぎない。

 はやくも『彼』の速度に慣れてしまったラベンチャは、
 ヒョイっと、スウェーで、軽々と、『彼』のブン回しを回避しながら、

「君は類まれな才能を持っている。心も体も。だが、その全てを、絶死で開花させて……それでも届かない場所にいるのが私だ。私の才能は格が違う。もちろん、勇者や魔王と比べれば一段階劣るが……しかし、劣るのは『一段階だけ』だ。それだけの別格な才能を持って生まれてきた。だから、何をしても許される」

 腹を殴られた衝撃で生じた怯みにつけこまれる。
 二発、三発と、的確な拳を叩き込まれて、
 『彼』のHPはどんどん削られる。

 戦意だけはマックスなので、心が折れることはないが、
 誰の目にも最終的な勝敗は明らか。

「私は『神の祝福』を受けている。神は私に言っている。『何をしてもよい』と。『何をしても許そう』と。神はきっと女神で、そして、私を愛している……素敵なことだと思わないかね?」

 などと、トチ狂ったことをほざくラベンチャに、
 『彼』は、

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 絶死を積んで底上げした魔力とオーラの全てを両手にぶち込んで、

「異次元砲ぉおおおおおおおおおおっ!!」


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