センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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35話 パーフェクトな獲物。


 35話 パーフェクトな獲物。

「なぜ、スルスを殺さなかったと思う? お前に生きる原動力を与えようとしたからだ。お前を生かすのも、また、スルスに自殺をさせないため。お前らは、互いが互いを醜く生き残らせるための鎖だった……なのに……勝手に死ぬとは何事か」

 そう言いながら、
 クリミアは、セーナの顔を、往復ビンタしていく。
 顔が腫れて真っ赤になって、頸椎が歪んで首がおかしくなって、
 それでも、セーナは、クリミアに対する殺意をゆるめない。

 死のオーラをまといつつも、ズタズタにされていく娘を見て、
 スルスは、無力感にうちのめされていた。

「ああ……セーナ……ぁあ……」

 今、いためつけられていることも苦しい。
 だが、それよりも、セーナが絶死を積んでいることが何よりも苦しい。

 絶死を積んでしまった以上、
 セーナの死は確定してしまった。

 セーナを守るために、そのために、必死に頑張ってきた全てが無駄になってしまった。
 その絶望から、体に力が入らない。
 すべてが終わってしまった。

 その無力感と虚無感が伝わってきたのか、
 クリミアは、

「……あーあ……もう、この遊びは本当に終わりだな……スルスが折れたら、なんの意味もない」

 しんどそうに溜息をついてから、

「また、次のおもちゃを探さないとな……」

 深いため息を、もう一度ついてから、
 クリミアは、強い怒りのこもった目でセーナを睨み、

「簡単に絶死を積みやがって……この根性なしがぁ……絶死の効果だけで楽に死ねるなどと思うなよ。まだ時間は残っているはずだ。残りの時間、全部を使って、徹底的に――」

 と、まだまだ彼女を痛めつけようとするクリミア。

 ――そのタイミングで、





「存在値470……パーフェクト。実にちょうどいい。これ以上ない獲物」





 突如、クリミアの背後に現れた青年。
 反射的に、オーラと魔力を練り上げながら、『彼』をにらみつけるクリミア。

「……何者だ? どうやって、この屋敷に入った?」

 クリミアの屋敷は、当然のように、無数の迎撃システムが施されている。
 上級国民は例外なく大金をもっているので、対策を施していないと、毎秒、輩に狙われてしまう。

 上級国民に捕まってしまえば、何をされるか分かったものではないが、それでも、切羽詰まった貧民は、後先考えずに行動してしまうもの。
 その鬱陶しさに対処するために、移動を阻害する結界や、高火力の地雷や、警備モンスターの自動召喚など、愚かな泥棒を撃退する手段は、庭にも屋敷内にも張り巡らせている。

 その全てを突破してきた泥棒――となれば、当然警戒心が湧くが、
 しかし、クリミアは、存在値470という、世界屈指の超人。
 自分が負けることはないだろう、とタカをくくっているクリミアに、

 ――侵入者の『彼』は、

「今の俺に使えるデバッグコマンドでもどうにか出来そうなヤツの中で、一番質の高い獲物がお前だ、ズンダ・クリミア。……本来のデバッグコマンドなら、相手の存在値とか気にする必要はないんだけどねぇ……この不便さから、さっさと解放されたいよ」

 ため息交じりに、わけの分からないことを口にする。




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