センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

28話 すべての絶望を貪り喰らい尽くしてやるよ。


 28話 すべての絶望を貪り喰らい尽くしてやるよ。

「頼む……お願いだ……死にたくないんだ……」

 弱い部分を見せて同情をかっていく。

(ここまですれば、たいていの日本人は、情にほだされる……日本人は激アマな平和ボケバカ野郎だから)

 表情には出さないように、
 しかし、心の中では、しっかりと舌を出していく。

 『不良は優しいヤツが多い』などという、
 意味不明の『謎すぎる幻想』が、
 この世には、たまにはびこるが、

 ――『本物の不良』とは、このキムロのように、
 『絶対にブレずに、延々と、他者に迷惑をかけ続けるだけの悪魔』のことを言う。

 キムロは、もう、『自分は許される』と決めつけた上で、
 その先の妄想にふけっていた。

(……こいつの能力は規格外……こいつの下にいれば、いくらでも甘い汁が吸えそうだ……できれば、俺自身が親分になりたかったが……まあ、分不相応だったってことだろう。それに、正直、子分でいる方が気楽だしなぁ)

 自分にとって都合のいいことばかりを考える。
 自分がどんな過ちを犯したかは絶対に考えない。
 それが、本物の不良。

(中坊の頃は、『子分の中でも下っ端』だった……それが問題だった……子分のトップ――『若頭』の地位にまで上り詰めれば、親分と、そこまで変わらない旨味にはありつける。なんだったら、責任感が親分より薄い分、気楽で、俺に向いている……)

 悠長なことを考えているキムロに、
 紙野は、虫を見る目で、

「何度も言わすなよ」

 冷めた声で、そう言いながら、
 キムロの両眼球に、両の親指をぶち込む。

「ぎゃぁああああああああっ!」

 両目をつぶされて、悲鳴をあげるキムロに、
 紙野は、冷徹な顔で、

「子供を殺された親の怒りをナメるな。たまたま蘇生できたが、だからって、お前が、ウチの子の首をナイフで刻んで苦しめた事実は消えないんだよ」

「痛いぃいい! 痛いぃいいいい!」

 本来ならのたうちまわっているところだが、
 体が毒で動かないので、悲鳴をあげることしかできない。

「トコを苦しめたやつを許す気はない。あの子を守るために俺は生きている。あの子を消滅させないために、この世界の絶望が必要だというのなら……すべての絶望を貪り喰らい尽くしてやるよ」

 別格の覚悟を見せていく紙野。

 何も手に入れることが出来なかった男の唯一の宝物。
 ソレに対する執着心は桁違い。

 最初から『人間味』というものが薄い男だったが、
 父性が暴走してからというもの、
 さらに紙野の人間性は薄らいで、
 ついには、トコの死を目の当たりにしたことで、
 完全にタガが外れてしまった。

 もはや、紙野に、『人を殺す』ということを躊躇(ためら)うような感性は残っていない。

「たす……けて……お願い……本当に助けて……死にたくない……お願い……本当に……手下として……奴隷として……頑張るから……だから――」

 必死になって、本気の懇願をしているキムロに、

「俺も、お前にソレを言った。けど、お前は無視して、トコを殺した。100%自業自得。もう何を言っても無意味だから、自分の罪だけ数えてろ」

 最後にそう言い捨てると、
 紙野は、キムロの頭を、

「爆裂ランク10」

 火力に全振りした爆裂の魔法で、
 ボンッっと、簡単に吹き飛ばした。

 はじめての殺人。
 だが、感情はまったく揺らめかない。

「……我が子のためなら、親ってのは何でもできるんだな……『親』は怖いねぇ。下手したら、ヤクザより怖いかも」

 などと、どうでもいいことを口にしつつ、
 紙野は、己の右手首に目を向ける。
 絶望ウォッチの数値が『0,1%』に増加していた。

「……一人を絶望させて殺せば0,1%……ってわけではないだろうな。それだと、1000人を殺すだけで世界が復活することになる……俺のニコトピアは、そこまで安くない」

 これは、あくまでも感覚の話。
 そして、プライドの話でもある。

 どっちも大差ないが、とりあえず、この紙野の感覚は、あながち間違っておらず、
 『キムロ程度の人間を1000人殺したぐらい』で、『消滅した世界が復活する』などありえない。
 世界はそこまで軽くない。


「100%まで、まだ遠い……」


 絶望を回収できる目途が立ったことで、正確にゴールの遠さを理解する紙野。
 ゴールまでの距離が理解できると、
 『今』、大事なことは、このパーセンテージにとらわれることではない、
 という『効率厨的な作業脳』へとシフトする。

「より早く、より確実に、この数値を100%に近づけるには……やはり『力』がいる……この世界の全てを喰らい尽くせる力が……」

 紙野はバカではない。
 むしろ、論理的思考にはたけている。
 なので、


「その手始めとして……まずは、『アイテムの権利』から回収しようか」


 そう言いながら、
 キムロが保有していたチートアイテムを順番に回収していく。
 システム的には、『アリババ』と同じ。
 デバッグコマンドを使って、アリババのシステムの上位互換となる効果を強制的に反映させる。

 『なんでもあり』――に見えるが、紙野自身が言っていたとおり、現状では『ほぼ』なんでもありという状態に過ぎず、けっこう制限が多い。
 例えば、

「……携帯ドラゴンだけ奪えない……なんでだ……」


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