センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

4話 すべてが変わる。


 4話 すべてが変わる。

「ははは、なんか、露骨だなぁ。結局、かわいい女の子キャラが人気なんだよね。イーサンテなんて、主役なのに、男だから、二十六位……改めて考えるとひどいな」

 イーサンテ・スアニージは、その夢の力を持つ天才主人公キャラなのだが、さえないメガネ男子ということで、人気は非常に薄い。

「九十九神シナリオの主役だと、たぶん、男でも、結果は違うんだろうけどさ」

 五つあるシナリオのひとつ、『九十九神の巻』
 ログホラやオバロのような、ゲーム現実化モノで、『チクタクダンスで創った自分の世界に、プレイヤーがキャラの一人として取り込まれる』というシナリオ。

「九十九神シナリオは主役が栄えるからなぁ。それに引き換え、天才発明家シナリオは、主役の出番がほとんどない。あはは、イーサンテかわいそぉ」

 ブツブツと絶え間なく独り言をつぶやく。
 いつもの毎日。変わらない光景。
 友達も恋人もいない、孤独な人生。
 だが、寂しくない。

 心から愛している世界があるから、紙野は独りでも生きていける。

「――おっ」

 と、そこで手が止まる。

「このアイテムを設定すれば、総データ量が一億tbを超えるんじゃない? おぉ! ふふふっふふー」

 ついニヤけてしまう。

 総データ量は、その世界にどれだけ手を加えたかの目安でしかなく、特定の数値を超えたからといって、特に何もないのだが、今まで頑張って創ってきた世界につけられた点数のような気がしないでもないので、なんとなく嬉しくなってしまう。

「よし、これで、一億だ。ばばーん」

 エンターを押す。
      ――そして、全てが変わる――





 ★


 ――目が覚めた時、
 紙野は、真っ白な空間で寝転んでいた。

 バっと起き上がり、あたりを確認する。
 体育館くらいのサイズの、真っ白な空間。

「え? なんだ? え? 夢?」

 困惑している紙野を、さらに混乱させてくる者がいた。
 それは、隣で眠っている女の子。

「……へ? ……トコ?」

 隣で、すやすやと眠っていた者の容姿は、
 紙野が作成したキャラクター『トコ・ドラッグ』と瓜二つ。
 違う点を探す方が難しい――と言うか、違う点などなかった。

 見た目が似ている――というだけではない。
 妙な話だが、紙野は、彼女に対して、
 『彼女は、間違いなくトコ・ドラッグである』という強い理解と納得を抱いた。

 理由は不明。
 なぜだかさっぱり分からないが、
 とにもかくにも、紙野は、彼女に対する強烈な庇護欲を抱く。

 これは、一般的な女性に対する感情とは全く異なる――『娘』に対する愛情。
 トコ・ドラッグは、非常に愛らしい姿をした美少女なのだが、
 彼女に対して『情欲』『肉体的欲求』などは皆無。

 目に入れても痛くない大事な大事な自分の娘を、
 何が何でも守りたいという強烈な父性が、
 紙野の奥底から、ふつふつと沸いて出てくる。

 ――だから、少しだけ冷静になれた。
 もし、トコがいなかったら、もっと、無様に困惑していただろうが、
 『トコを守りたい』という爆発的感情が、
 トコの存在によって加速した紙野の混乱を、強制的に沈下させる。

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