センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

最終話 神の想像。


 最終話 神の想像。

(……おお、解析するのはやいねぇ。さすが、クロート。賢い男だ。そういうところも、腹が立つなぁ。俺もクロートみたいな感じで生まれてきていればなぁ……ハッキリ言って、俺、ひどすぎるんだよなぁ。バカで、ブサイクで、面倒くさがりの陰キャで……まあ、でも、この酷すぎる状態の方が楽でいいのも事実なんだよなぁ……クロートになりたいかって言えば、なりたくはないんだよなぁ……)

 『ゴリゴリのエリートサラリーマンとしてバリバリ働く』よりも、
 『何も考えなくて済むニート』の方が性にあっている。
 ――と、超苺は自分を評価する。

 これほど、自己評価と社会的評価が乖離している者も珍しい。

「どうやら、田中トウシは、かつて、センエースが、田中トウシに対して仕掛けたデスゲームになぞらえて、センエースを磨こうとしていたっぽいな……どうする、超苺?」

 チラっと目線を送られて、
 超苺は、

(え? どうするって……なにが?)

 基本、何も考えていないので、
 話を振られた時、いつも、頭の中では疑問符が漂っている。
 しかし、『どういうこと?』と聞くのもタルいので、
 いつも、

「………………ぬるま湯だな」

 と、『わかってますよ』風の表情で、
 それっぽいことだけを口にしておく。
 そうやって、テキトーなごまかしで、
 のらりくらりと、どうにかこうにか、
 その場、その場をしのいできた人生。

 普通、そういう『ナメた態度』で人生をやっていると、
 周囲の人間に、その薄っぺらさを見抜かれて、
 小バカにされるのが常なのだが、
 しかし、超苺の場合に限り、それは否ぁあああっ!

「同意見だぜ、超苺。……田中トウシは根っこが凡庸だから、口でイキっているのが精いっぱいで、本物の悪にはなりきれない。……センエースを覚醒させるついでで、『デスゲームで弄ばれたことの復讐をする』などと息巻いていたっぽいが、結局のところ、それも中途半端。絶対的に悪意が足りない。絶望が、苦悩が、辛酸が。命をオモチャにする覚悟がまるで足りていない」

 基本、男の話を聞いていない超苺は、
 今、クロートが言ったことの大半が、
 右から左へと流れていっている、が、

「……」

 とりあえず、理解している風に、黙って、うなずいておく。

 過大評価されてしまう運命と、
 テキトーな対応ばかりしてしまう性格、
 その二つで、超苺の人生は構成されている。

「真・神帝陛下が、パーフェクトな究極超神化8に届くためには、『磨き抜かれたセンエースを倒す』という経験値が絶対に必須。田中トウシのやり方では、センエースは開き切らない」

 クロートは、そうつぶやいてから、

「……とはいえ、私たちが適任かと言えば……それも、少し違う気がするな……私では、
『センエースの相手』は役者が不足しているし……超苺は、芯の部分が優しすぎる……」

(俺、別に優しくはないと思うけど、俺じゃあ、その大役はこなせないってのは事実だな)

「……こうなったら、ここらで、プライマルメモリに手を伸ばしてみるか? 一応、真・神帝陛下から、『権限』は借りているわけだし……ていうか、ちょっとやってみたかったし」

(プライマルメモリ? なんで、今、そんな話を……いや、待てよ……ああ、そういえば、出かける前に、なんか、そういう話もしていた気がする……理解する気がなかったから、まったく覚えてないけど……)

 理解はできていないが、
 しかし、超苺は、またもや、テキトーにうなずく。

 完全に、テキトーな生返事なのだが、
 『超苺の同意を得た』という強い大義名分を得たクロートは、
 ニヤリと微笑み、

「じゃあ、使うか……主役級の運命力なら、センエースの当て馬として申し分ない。問題は誰を使うか……『正義感』が強い者は、この任務に向いていない……倫理観が欠落している、やべぇ主役……となると……」

 そこで、数秒の間をとってから、
 クロートは、超苺の目を見つめながら、

「……『紙野創蔵(かみのそうぞう)』とか……どうだ?」

 言われて、超苺は、なんのことか分からない。
 一応、超苺も、『プライマルメモリの主役』についてのデータには目を通しているのだが、理解する気がなかったから、完全に頭からは抜け落ちている。

(紙野……そういえば、書いてあった気がするなぁ……どんな奴って書いてあったっけ……覚えてないなぁ……メジャーな『セイバーリッチ』と『オメガ』と『究極超天使』のことぐらいは、さすがに、ちょっとだけ覚えているけど……マイナーなプライマルメモリは、さすがに記憶が薄いなぁ……まあ、でも、『クロートが、それでいい』と判断したなら、たぶん、間違っていないだろう。仮に間違っていても、クロートが責任をとればいい。俺は知らん)

 心の中で、そうつぶやいてから、
 超苺は、黙ってうなずいた。

「よし……じゃあ、呼び出すか……どうやって紙野をコントロールするか……その辺は、私に任せてもらっていいか? お前に頼ってばかりだと、さすがに体裁が悪いからな。いいかげん、私にも、まともな仕事をさせてくれ」

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