センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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9879話 愛をください。


 9879話 愛をください。

「ミルス王国の件で、カバノン国家主席は、確かに、マイナスの評価を受けましたが……しかし、結局のところは大事に至らなかったということで、逆に、『高評価』をつける者もいますよ」

「……」

 それも事実だった。
 『大問題が起きても、ちゃんと処理できる能力』は、
 国の中枢である政治家に求められる最大級の力の一つ。

 ――そして、それは、ホアノスにはない力だった。

「ホアノス議員。あなたは、非常に優秀な方ですが、しかし、弱点として、国民の支持が薄いと言う点があげられます」

「……」

「どうやら、『あなたの黒いウワサ』を吹聴している者がいるようでして。このままでは、次の選挙で、あなたがトップにたつことはありえないでしょう」

 ちなみに、裏で吹聴しているのは、ショデヒである。
 交渉において、下準備を整えるのは必須事項の一つ。

 蛇の狡猾さとは、こういうところで、最大限発揮されるもの。
 ショデヒは、自身の『黒さ』を全力でとがらせながら、

「ホアノス議員。あなたの『実力』は十分……しかし、国民には、それを理解するだけの頭がない。愚かな風評被害の犠牲になって、その辣腕(らつわん)を振るう機会を失いとうのは、あまりにしのびない」

「……」

「あなたはトップにたつべき。そのためのサポートを、この私に、お任せください。全力で後押しさせていただきます。ですので……トップに立たれたあかつきには、我々聖龍王国にも、おこぼれをいただければと思っております」

 そこで、ホアノスは、数秒だけ、間をとってから、

「まるで乞食のようじゃないか」

 と、ここで、一手、食い込んできた。
 精緻な一手。
 別に、ショデヒを侮蔑したかったわけではない。
 ここで、ショデヒがどう出るかを見ておきたかった。
 顔色がどう変化するか。
 どの程度、この交渉を成功させようとしているのか。

 交渉を有利に進めるときの手法の一つ。
 ――相手を軽く怒らせてみる。

 その結果、ショデヒは、

「ははは、確かに、そうですね」

 と、快活に笑ってみせた。

(わずかも感情を見せずに笑って見せたか……その平常心は、『際立った胆力』からくるものか……それとも……まさか、余裕からくるものか?)

 この辺に関して、正確に読み取ることは不可能。
 ただ、『そのどちらかである』という情報を得ることはできた。

 だから、ホアノスは、

「いいだろう。確かに、私が、上に立つ方が、この国は発展していく。国のため、民のためを思えば、私が、国家主席という重荷を背負うべきか」

 などと、おためごかし全開。

 もとから提案を受ける気だった。
 ランク20の魔カードには、それだけの魅力があるし、
 自分を利用しようとする聖龍王国を逆に利用してやろうとも思っていたから。

 ここまで、渋ったのは、交渉を、より有利に進めるため。
 もっと言えば『次の条件』をショデヒに飲ませるため。

「ただ、それだけの重責を背負うとなると、心の安らぎも必要となる。ショデヒよ。私に愛を与えてほしい」

「……それは、つまり、どういうことでしょうか?」


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