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60話 ほとんど自虐のような自画自賛。


 60話 ほとんど自虐のような自画自賛。

(いやぁ……しかし、ほんまにギリギリやったな……はぁ……ああ、あかんわ。手足が震え出した……蝉原の前ではなんとか我慢したけど……ホっとしたら、体が言うことをきかんようになってもうた……)

 先ほど、蝉原と、『上っ面の対話をしていた時』のザンクの心情は、その言葉の薄っぺらさとは対照的に、バックバックのドッキドキだった。

 『バレやしないだろうか』とひやひやしながら、
 しかし、その『ギリギリの心情』を全力で隠しながら、
 ザンクは、必死になって、蝉原とのおしゃべりを続けていた。

 決して、冷や汗など流さないように、
 手足や唇が震えたりしないように、
 目線や顔色で悟られないように、

(……『何考えとるかわからん、おちゃめな自由人』……その仮面をかぶり続けてよかった……生まれてから今日まで、ずっと、その仮面をかぶって生きてきたからこそ、蝉原の目の前という鉄火場でも、同じ道化で在り続けることが出来た……っ。俺の人生には、確かな意味があった……)

 『何も理解できていない呑気な自由人』の演技は、
 これまでの人生で、ずっとやり続けてきたことだったから、
 どうにか、『人生で最も大事』な『ここ一番』でも、
 いつも通りに、完璧に、『ストライクフリーダムサイコパス』を演じることが出来た。

(……今まで、ずっと、薄っぺらなオルタナティブとしての人生を散財してきた……そのおかげで、『俺(1001号)の意識のバックアップを残すこと』も、『その復元』も、『テラスのカケラをコピーとすり替えたこと』も、全部が全部、どうにかバレずに済んだ……薄っぺらな道化で在り続けて……本当によかった……っ)

 これは、自虐ではない。
 一歩踏み込んで考えれば、
 『そっち方面の感情』と言えなくもないのだが、
 しかし、『正確なポジショニング』を求めた場合、
 やはり、自虐ではない。

 むしろ、誇り。
 ザンクは、自分の人生のすべてを肯定する。
 なぜなら、そのおかげで、ザンクは、
 『センテラスを奪い返すこと』が出来たから。

(……『コレ』は、きっと、トウシにも出来んかったこと……俺やったからできた唯一の偉業……)

 自分で自分に、そう言い聞かせる。
 心のどこかでは『トウシなら、もっとスマートに全てを処理できたのでは?』などと考えてしまうのだが、しかし、そんな意味のない劣等感とも決別する。
 大事なことはそんなことじゃない。
 ちょっと前までなら、決して抜け出せなかった思考の沼からも、
 ザンクは自由になることができている。

 すべてはテラスを完全に救い出すため。

(……まだ、道の途中……テラスを完全に救い出すためには、ここからが重要……それは分かっとるが……今、この瞬間だけは……自分を全力で称賛したい……)


 ――ついちょっと前、蝉原と対峙していた、あの瞬間、
 『今の自分では実力で蝉原に勝つのは不可能』と判断したザンクは、
 どうにか頭をひねって、今の自分に出来る最善を尽くそうとした。

 その結果、導き出した答えは、『とりあえず、テラスと自分の中心だけは、自分の手の中に確保しておく』という、かなり消極的なものだった。
 だが、それが、現状における最善手だったことは間違いない。
 今のザンクには、それが精一杯だった。

 そして、その『精一杯』を、ザンクはなんとか成功させた。
 蝉原に奪われた『テラスのカケラ』をコピーして、すり替えた。
 そして、事前に『自分がオリジナルではなく1001番目の素体』である事実に気づき、
 『蝉原が、1002番目に、【1001号の経験値】と【改竄した記憶】を注ぐであろう』ことを推測し、『自分の意識のバックアップ』を残し、1002号の肉体で復元させた。

 自分のバックアップ復元に関しては、そんなに大変ではなかったが、
 問題なのは、テラスのコピー。
 ただの偽物とすり替えてしまえば、すぐにバレてしまう。
 だから、完璧なコピーを作り出す必要があった。

 ――ザンクは、『ソコ』に、全身全霊をかけた。
 『中身のない必死のおしゃべり』で『大量の時間』をとことん徹底して稼ぎながら、
 とにかく、今の自分にできる全部を賭して、
 『完璧なコピー』をつくりあげた。

 『バレないだろうか』と、かなり不安だったが、
 蝉原の態度を見る限り、問題はないだろう。


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