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55話 『すべての神』の中でも、特におそろしい神、ヤクザを司る邪神。


 55話 『すべての神』の中でも、特におそろしい神、ヤクザを司る邪神。

「……え、誰? てか、ここどこ?」

「俺は神様だよ。君をここに召喚した神様」

「……神様っすか。ほー……ザンクさんの目には、中高生のヤンキーにしか見えんのやけど?」

「異世界モノの神様は、多種多様だろ? そっち系の物語を見た事ないかい? 妙にお気楽な神様、抜けているバカな神様、子供の神様、巨乳の神様、見た目も性格も千差万別。ヤンキーっぽい神様がいたっておかしくはない。ちなみに、俺は『すべての神』の中でも、特におそろしい神、ヤクザを司る邪神だよ。よろしく、どうぞ」

「……はは……ヤクザにも神様がおるんや。まあ、何にでも神様はおるって話らしいけどなぁ。あ、それに、映画とかでみるヤクザの事務所には、ほぼ確実に神棚が飾ってあったなぁ。ヤクザ連中って、みんな、あんたに祈りを奉げたりしとるわけや。はは、ヤクザが、ヤンキーを奉るとは、これいかに。あ、でも――」

 と、マシンガントークをはじめた1002号の発言を、

「うっ」

 蝉原は、その、目の奥がまったく笑っていない『張り付いたような笑顔』のまま、
 指をパチンと鳴らして、封殺する。

 突如、口が開けなくなったことに困惑している1002号に、
 蝉原は、

「いま言った通り、俺は、最高ランクの邪神でねぇ。神ってのは、日本での伝承通り、数だけは、山ほどいるんだけど、『有能な神』の数は、そこまで多くない。俺ほどのランクにいるのは、他に2~3柱ぐらい。だから、俺は、けっこう忙しい。というわけで、君のおしゃべりに付き合う気はない。ご理解OK?」

 そこで、また指をパチンとならした。
 すると、1002は、

「……あ、しゃべれる。すごいな。指パチン一つで何でも出来んねんなぁ」

「何でもは出来ないよ。俺に出来る事だけ」

 などと、軽いテンプレを返してから、

「さて……調整はこんなものかな」

 おしゃべりをしながらも、
 蝉原は、1002号のチューニングを行っていた。

 1001号のカケラを馴染ませていく。
 その中で、『改竄した1001号の記憶』も埋め込んでいく。

 すると、

「……え、今のザンクさんって、二人目なん? これって、もしかして、『私が死んでも、変わりがいるもの』的な? 『次のザンクさんはきっとうまくやるでしょう』的な?」

「まあ、ちょっと違うけどね。前の君は不慮の事故で死んでしまった。かなり特殊な死に方をしたから、普通の蘇生魔法で甦ることは困難だった。というわけで、体を新しく構成しなおして、抽出した魂を注ぎ込んだ。だから、君が君であることに変わりはない」

「……ほんま、ヤクザ神様は何でもできんねんなぁ。あんた、なんで、ヤクザの神様なんかやってんの? それだけの力があるなら、普通に、『太陽の神』とか『最高神』とか、そういう、なんか、仰々しいもんになれんのとちゃう?」

「太陽の神は他にいる」

「あ、おんねや。ほな、あかんな。キャラ被りはおもろないから」




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