センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
50話 18秒のハック。
50話 18秒のハック。
「……その鏡に、俺が映ってから、もう、そこそこの時間が経ったけれど……俺か、君に、何か変わったことは起きたのかい? 俺の感覚的には、何も変わったように感じないんだけど……それは、俺の感覚器がバグっているからかな?」
それは、蝉原の煽りの一つでしかなかった。
本当に自分の感覚器がバグっているとは思っていない。
だが、
「よぉ分かったな。まさに、その通り。おどれのプロパティアイを18秒だけハックさせてもろた」
そんなザンクの説明を受けた蝉原は、
「ははははは!」
と、一度、大きな声で快活に笑ってから、
「ムリムリ。君ごときが、俺のプロパティアイに干渉なんて出来ないよ。アリが海を飲み干すより無理」
そのセリフに限って言えば、
煽っているわけでも、
小ばかにしているわけでもなかった。
蝉原の中の事実。
ザンクのような矮小な存在が、
『自分のような大きい存在に介入できるわけがない』という、絶対的にゆるぎない現実。
そんな、蝉原の中の事実を否定する材料を、
ザンクは持っている。
「ただのアリのままでは無理かもしれんけど、神種が芽吹いたら、海を飲み干すんも、無理でもないかもしれんやろ」
驚くほど、まっすぐな言葉だった。
『ただのハッタリではない』――と、即座に理解できる声音。
だから、
「……ほう……」
蝉原の目つきが変わる。
目つきが変わっただけではなく、
対応策にも変更が入った。
蝉原は、即座に、自分のログを探り出す。
――『コスモゾーンに潜って、情報を得るだけ』なら、
田中家の天才性がなくともできなくはない。
改竄や介入となると、異次元の頭脳が不可欠だが、
ただ眺めるだけなら蝉原でも余裕。
自身のログに目を通した蝉原は、
すぐさま、眉間にしわをよせて、
(……マジで、俺のプロパティアイに障(さわ)っていやがる……すげぇな……)
何をされたのか、細かいことは、イマイチよく分かっていない。
蝉原では、そのへんを正確に解析することは不可能。
だが、バカではないので、『障(さわ)られた』ということぐらいは分かる。
(どうやった? 無理だろ……? ガチで神種を自力で咲かせた? そんなもん出来るのか? わからねぇ。少なくとも、俺には絶対にできないこと。……てか、仮に、神種が芽吹いたとしても、開花したばかりの小神ごとに障(さわ)られるとか、ありえねぇ。数値差を考えろよ……)
世界やシステムに対する理解はあるつもり。
だからこそ、困惑が、次から次へと押し寄せてくる。
自分では理解できない世界。
そこにザンクがいるのだという理解。
(……マジで、アリが海を飲み干しやがった……ふざけやがって……)
頭の中に浮かんだ無数の疑念から、一度目をそむける蝉原。
理解できないウルトラCを相手に、いつまでも悩んでいるのは無意味。
一通り、みっともなく狼狽したものの、
しかし、いったん、飲み込んで、
(……なるほど……さすが、『1001号』のシンボルナンバーは格が違ったってことか。『1000号』までのザンクなら、絶対に不可能だった)
自分の中での疑念に、『仮』の納得を決め込んでいく。
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