センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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35話 受け入れ拒否。


 35話 受け入れ拒否。

 蝉原は、自身の肉体も活性化していることに気づいた。
 力があふれてくる。
 心が沸き上がってくる。

「……まさか……閃くんの『みかづき〇まい』は、敵である俺にも作用するのかな?」

 冗談っぽく口にしたものの、
 しかし、どうやら、それが事実であるらしい、
 と気づいた蝉原は、

「……はははっ!」

 と、おかしそうに笑って、

「本当に、俺にも作用しているじゃないか。いや、それどころか……パワーアップしている。8のカケラが補強されている」

 そんな、事実を口にしながら、
 蝉原は、ザンクに視線を送り、

「どういう事故でこうなったのか知らんが……どうやら、閃くんは、俺を倒すどころか、色々とプレゼントをしてしまったようだ。もしかして、事故ではなく、故意だったのかな? 実は俺に恋をしていて、どうしても、贈り物をしたくて仕方がなかったとか? はは。貢ぎ体質の女には見えなかったが……まあ、『献身さ』という点においては、そこらの女よりもはるかに上であることは事実かな」

 などと、あえてファントムトークで場を散らかす蝉原。
 別に、ファントムトーカーというわけでもないのだが、

 しかし、興が乗ると、ついつい使いたくなってしまう中毒性が、ファントムトークにはあった。
 あとから振り返ると恥ずかしくなる『残念トーク』だが、
 鉄火場では、意外と、心の起爆剤になったりするから面白い。

「ただでさえ、君では、手も足もでない強大な俺が、完全に万全の状態になってしまった……もはや、君に可能性は残っていないよ、田中ザンク」

 ――などと、そんなことを言う蝉原。
 そんな蝉原の視線の先で、
 ザンクは、


「……」

 まっすぐに、蝉原を見ていた。

(パワーアップさせた? 絶死を使ってまで? 蝉原を? ……ありえへん。そんな事故を引き起こすほど、テラスはバカ女やない。いや、バカ女はバカ女やけど……そういう方向性のバカ女ではない)

 テラスと出会ってから、まだ、ほとんど『時間』は経っていない。
 しかし、ザンクは、テラスのことを、誰よりも理解しているという自負があった。
 もちろん、そのプライドは、ただの錯覚・思い込みなのだが、
 しかし、今、この場における『彼女に対する推察』に間違いはない。

(テラスは言うとった。『これまでの全部をかける』と……『俺にたくす』と……俺は、何をたくされた? テラスは何をしたかった? 考えろ……『頭がエエこと』だけが『自慢や』というのなら、不明瞭な答えに、するどいメスを入れろ――)

 頭が焼き切れるほど、
 必死になって考えてみた。

 もちろん、『うーん、うーん』と悩むだけではなく、
 自身に使える解析系の魔法を、並列処理で総動員させながら、
 多角的に、あらゆる視点で、現状の不明瞭を切り刻もうと必死になる。

 ――その結果、



(……っ!)



 ザンクは、届く。
 ザンクは間違いなく天才だった。
 トウシがいる限り、天才性で頂点はとれないが、
 しかし、そんなことはどうでもいい――と、今のザンクは本気で思える。

 人より多少賢くて、本当によかった。
 おかげで、彼女を見つけることが出来た。

(――くはは! ヤッバいな、あのバカ女! 信じられへん! コスモゾーンから『受け入れ拒否』されとるやないかい!)

 つい、笑ってしまった。
 『強い安堵』により零れた笑み。

(死の規定ルートから外れたテラスの魂は、一時的な避難場所として、蝉原の中を選んだ……この選択は、はたして、ただの行き当たりばったりか? それとも……)

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