センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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34話 オメガ無矛盾。


 34話 オメガ無矛盾。

「閃くんは、絶死を積んで、何をした? ……んー……わからないな。まさか、本当に、田中ザンクにたくした? いや、それはないよねぇ? だって、それは、さすがに悪手だって、誰でも理解できることだから。閃くんだって、分かるはずだ。それが分からないほど、彼女はバカじゃない」


 蝉原が、何か、ブツブツ言っているが、
 そんなことは、本当にどうでもよかった。

 耳にも脳にも残らない。
 今のザンクにとって、大事なものは、この喪失感だけ。
 『何もかも失った』という痛みだけが、今のザンクが『もっている全て』という矛盾。

 つきつめてみれば、それは、きっと、オメガ無矛盾。
 意味のない言葉遊びで、世界を翻弄したところで、
 なんの意味もないことは――ザンク自身が、誰よりも理解している。


 ――深い喪失感の中に沈んでいる途中で、
 ザンクは気づく。

「……っ?」

 肉体が、ドクドクと、強く脈をうっている。
 血色がよくなってきている。
 先ほどまで、手足が冷えて、どこにも力が入らなかったのに、
 だんだんと、じんわり、全身が暖かくなっていく。

「……??」

 理解できずに、体の変化を感じていると、
 ほんの数秒ほどで、

「かはっ」

 酸素がたりなくなったのか、
 体が勝手に呼吸をはじめた。

 全身のミトコンドリアがはしゃぎだす。
 莫大な量のATPが合成されていく。

「……か、体……が……」

 溌剌(はつらつ)としていく。
 元気が100倍になっていく。

 そんな様子を見て、蝉原は、

「……は、はは……」

 呆れたように一度笑ってから、

「……何をしたのかと思ったら……恒例の『みかづき〇まい(自分はひんしになるが、後続のポケ〇ンは状態異常含め全回復)』か……」

 小バカにした表情で、虚空を見つめながら、

「信じられない悪手だね……『閃くん』という特大の可能性を、わざわざ自分から棄てて、田中ザンクのようなカスを回復させるだけとは……メガレ〇クウザを棄てて、コラ〇タを回復させたようなもの。悪手の中の悪手」

「……」

 ザンクは呆けていた。
 蝉原の言葉など、まったく意識に残らない。
 右から左どころか、そもそも、耳に入ってすらいない。

 ザンクの肉体は、どんどん、どんどん、回復している。
 そんな肉体の回復にともない、頭の中がどんどんスッキリとしてくる。
 脳の速度も回復して、
 頭の中が、大量の思考で埋め尽くされる。
 無限に近い選択肢が鮮明になって、
 未来の色が少し見えた。
 勘違いかもしれないが、
 勘違いではないかもしれない。

 言葉遊びの器の中に注がれた水の色が、
 群青色から橙色にかわっていく。

 ――その結果、導き出された答えは、

「……あ、あの女……バカか……」

 蝉原と同じだった。

「なに考えてんねん……どう考えても、残るべきは、俺やなくて、お前やろ……この状況で、俺なんかに、なにが出来んねん……マジで、アホちゃうか、ほんま……」

 と、ザンクが頭を抱えていると、

 そこで、
 『蝉原』が、

「……ん? なんだ?」

 自身の肉体も活性化していることに気づいた。

 力があふれてくる。
 心が沸き上がってくる。

 信じられないことに、
 ザンクだけではなく、
 蝉原も回復の恩恵を受けていた。


「……まさか……閃くんの『みかづき〇まい』は、敵である俺にも作用するのかな?」



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